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千尋のページ“辛夷”
この日記のタイトル”辛夷(こぶし)”の由来は、当院の庭に毎年可憐な花をつけて雀が戯れる辛夷の木があるためです。白い花が咲いた時はきれいです。(右に立っている木が辛夷です。)また、秋の紅葉した”どうだんつつじ”は見ごたえがあります。
*以下、下線のあるところ(リンク)をクリックしますと、そちらを詳しく見ることが出来ます。ご利用下さい。
2024.11.16 札幌交響楽団 旭川公演(旭川市民文化会館 開館50周年記念)
指揮:円光寺雅彦
・ワーグナー楽劇「ニュルンベルグのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
・ブラームス「ハンガリー舞曲」第5番、第6番
・チャイコフスキー幻想序曲「ロメオとジュリエット」
・ベートーヴェン交響曲第6番ヘ長調「田園」
大ホールは満員。旭川にこれほどクラッシックの愛好家がいるのかは疑問だが・・・。
恐らく、ベートーヴェンの交響曲「田園」などのポピュラーなメニューだったからだろうと思う。久しぶりにフルのオーケストラを生で聴き、後ろの席だったが臨場感があり良い気分転換となった。
2024.11.5 最近読んだ本
・平野啓一郎「本心」(文春文庫 2023年)
一番impressiveだったシーンは終盤、主人公の朔也がアバターの母と対面した時、母の手を取ろうとすると実際に体温を感じる場面だ。詳細はネタバレするので書かない。この本は2040年を想定しており、彼の仕事(リアル・アバター)は今は現実にはほぼ無いものです。章ごとに幾つかのテーマがあり、夫々が重い。まず「VF(virtual figure)」。次に「自由死」、「人工授精」、「share house」などだ。母が自由死を決断した理由は何だったのか?それは最後まで不明瞭ではあるが、この本の主たるテーマ「愛する人の他者性」の解釈に必須の事柄ではないと思う。読後、人生の色んな事を深く考えさせられるのは著者の力量と言えよう。
2024.10.18 劇団民藝公演“文学の夕べ 朗読劇2話”(旭川市民劇場10月例会。旭川市公会堂にて)
「山桜」(藤沢周平著):語り―篠田三郎
やはり藤沢周平は良い。僕が子供の頃、団塊の世代以上の人なら分かると思うが、「赤胴鈴之助」というTV番組があった。北辰一刀流の道場に通う少年の明るい物語だ(それにあの吉永小百合が出ていたそうだ)。秋晴れの中、友人らと楽しく道場に通う少年達。そこには残酷な場面や暗いミステリアスな話は無く、彼らを暖かい目で見る大人達がいる。藤沢周平の著作にはそういう晴れやかな良い雰囲気がある。この「山桜」の主人公、下級武士の娘野江が夫と死別後の嫁ぎ先になじめない。そこに嫁ぐ前、話のあった武士とたまたま遭遇することから始まる物語。篠田三郎の語りは流石プロ、淀みなく咬むこともなかった。
「夜の辛夷」(山本周五郎著):語り―樫山文枝
ある女郎の所に通う素性不確かな男の話。残念ながら山本周五郎の本は殆ど読んだことがなかったが、予想通り時代物の男女の話である。申し訳ないが、Storyとして格別感動することもなかった。世間にはこういう事もあるであろう、と思っただけである。とにかく今回は女優樫山文枝を見たくて来た。なぜなら遥か昔、NHKの朝の連続ドラマ「おはなはん」の主人公だったから。83才になられたが、ここまで長く女優を勤められているのは立派という他ない。
2024.9.30 最近読んだ本
・遠藤周作短編集(山根道甲編 岩波文庫2024年)
10年以上前、名著とされ賞も取っている有名な「沈黙」は読みましたが、彼の短編集は初めてです。予想に反し読み易い文体で“とっつき易く”スムースに読めました。内容は予想通り、彼がキリスト者たる、その関連の話が殆どです。彼がクリスチャンになったのは、幼少時、母親がなった序でに、お仕着せられる様に洗礼まで至ったとのことです。それを彼は服に例え、クリスチャンという服が 長い間“だぶだぶ”であったのです。
2024.9.9最近読んだ本
平野啓一郎「ある男」(文春文庫 2021年)
著者の平野はこの小説で何を言いたかったのだろう。Storyは「戸籍が変わる」という稀な事態を取り扱っている。再婚した相手(A男)の実人生は、(A男は実はB男で)妻の聞いていたもの(妻はA男として思っていたので)とはかけ離れたものであった。しかし妻のA男との再婚生活は幸福なものではあった。この“戸籍すり替え事件”の真相を追う弁護士も家庭では妻とギクシャクした関係にあり、本筋とは違うが、むしろこちらの方が何故か読者に訴えるものがある。
2024.8.20最近読んだ本
ナタリア・ギンズブルグ著「ある家族の会話」(須賀敦子訳。白水Uブックス。白水社 1997年)
斯様な趣向の小説は未だ読んだことはありません。会話の文言が多く、全く稀有なPlotの小説です。勿論ある程度の脚色はあるでしょうが、作者の家族各人の性向や会話の内容等を回顧し、逐一詳しく述べています。更に、家族各人の友人やこの家族と交流のある別の家族の各人についても、同様に会話の内容等、実に細やかに描出しています。
作者は1916年生れの女性。舞台は北イタリア。時代は第一次世界大戦終了後で、徐々にファシズムが台頭しつつあった。彼女の家族や友人達の一部が反ファシズム運動に加わって、激動の時を迎える。父親は大学教授、母親は専業主婦。父親は一貫して、何に対しても誰に対しても頑固だが、自分に正直とも言える。しかし父親も母親もどこにでもいる家族愛を持った人間で、子や友人、知人に対し苦言や愚痴を弄するが嫌悪感を齎すことはない。全体の記述は淡々としているが、作者の明るく真面目な性格を反映した文言が縷々綴られ、好感が持てる。繰り返すが小説全体が会話が重要な要素で、当然俗っぽい会話もあるであろう中、訳者須賀敦子の苦労が偲ばれ名訳と評価したい。
2024.4.4 旭川市民劇場4月例会“あぶくの流儀”(プリエール。旭川市公会堂)
作:竹田新。出演:速水映人、阿知波悟美、他2名。大衆演劇一座が詐欺被害に会う物語。一青年がある日、一座に入って来て極めて真面目に劇団に尽くすのだが・・・。最後のどんでん返しの結末には驚いた。主役の二人が「敵を欺くにはまず味方から」の格言通り、
2024.3.24 最近読んだ本
・川上未映子「黄色い家」(中央公論新社)
この著者は最近めっきり人気が出て、イベントに引っ張り出されている。筋立て、内容は面白いが、ヤクザ言葉というか闇言葉が多用され、少々辟易させられる。しかし著者の才能であろう、読み始めると止まらなくなる文体である。主人公の若い女性が、本人の自覚がないまま、いつとは無しに周囲の者により騙されていく態様に読者も引き込まれていく。それにしても第2の主人公、黄美子のcharacterが最後までよく分からない。
2024.2.25 ピアノ黒崎拓海&ギター山田唯雄・Duoリサイタル(旭川市 木楽輪)
JKメルツ作曲:オペラ「リゴレット」に基づくディベルティスマン
F.シューベルト/リスト作曲:糸を紡ぐグラートフェン
F.シューベルト/リスト作曲:ます
F.シューベルト/メルツ作曲:涙の讃歌
S.ラフマニノフ作曲:コレルリの主題による変奏曲ニ短調作品42 他
ピアノとギターという珍しいDuo。ギター好きの僕にとっては、彼のギターの音色は心地良かった。しかし難点を言えばポピュラーな旋律ではなく、ピアノ&ギターのDuo用のクラシック曲なので、僕にとっては恥ずかしながら少々冗長ではあった。
2024.2.19 劇“宵闇、街に登る”(劇団JACROW 旭川市民劇場2月例会 旭川市公会堂)
小学校卒にも拘わらず首相まで登り詰めた田中角栄。佐藤栄作が総理の時、田中角栄が中曽根康弘や竹下登らの中で如何に立ち振舞い、首相の座を取ったかを描く。しかし、分かっている事実を更に深く掘り下げ、人間関係の機微や個人の葛藤等を描き出して欲しかった。
2024.2.18 最近読んだ本
「街道をゆく №14 南伊予・西土佐の道」(司馬遼太郎著 朝日文庫)
「街道をゆく」シリーズ全43巻、読破にあと数巻になった。毎回読む度に、彼の博識には驚かされる。その記憶の良さと面倒臭い事を厭わない姿勢にはいつも感服せざるを得ず、脱帽である。
2023.12.22 最近読んだ本
・坂本龍一「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」(新潮社)
「普通人の何倍も、3倍も生きた」と近しい人々が話しています。この本を読むと確かに自分らとは違いますね。毎年毎年、多くのworld wide のeventを開催。関係する人達と首尾よく(言語も違うのに。パリだったり北京だったり)連絡取りながら、作曲したり演奏したり出来るなと感服します。自分にこれ程のエネルギーは無い。
・平野啓一郎「マチネの終わりに」(文春文庫)
最近読んだ本では出色。この題名の意味が最後で分かった。この作家は以前から僕としては注目していた人だが、初めて読んだ。殺人事件等が起きるミステリーもそれなりに面白いが、この本の様に大人の恋を扱い、それに絡まる人間関係の機微を題材とするものも味があって中々です。
・平野啓一郎「透明な迷宮」(新潮文庫)
2023.12.12 日本抗加齢医学会専門医に合格して
医師となり専門として眼科を選びましたが、全身的なことには元々興味がありました。実は数年前、白内障Opeを止めて診療上のストレスがかなり減り、精神的に余裕が出来、何かしようと模索中でした。眼科に飽きてきたのかもしれません(笑)が日本抗加齢医学会に入会しました。
抗加齢医学(Anti-Aging medicine)は言うまでもなく内容が広範で全科に関連します。テキストを見て、学ぶべきことが予想以上に多岐に渡ることに驚かされました。遺伝子から始まり細胞老化、酸化ストレス、糖化ストレス、免疫、代謝、各種ホルモン、皮膚老化、メタボリックシンドローム、食事と栄養、サプリメント、更年期障害含む男性&女性医療などです。
本年6月東京で第23回日本抗加齢医学会総会と専門医試験があり、先日、合格通知を頂きました。この専門医は医師と歯科医だけで、それ以外の方は指導士という呼称になります。僕は眼科専門医は筆記試験を免除された年代でしたが、今回は広い講堂に全国から老若男女(青壮年期の先生が大多数)が集まり、40数年前の医師国家試験を思い出しました。
昨年、落ちるのは分かっていましたが腕試しで受け、案の定42点と不合格でした。以来、診療前朝1時間を試験勉強に当てました。過去問を解くに、参考書を見ても一度では覚えきれず、何度同じページを開いたことか。「これも年のせいか」と不本意ながら納得せざるを得ません。当院のスタッフにこの専門医になる旨を広言はしていましたが、今回不合格なら専門医取得は諦めるつもりでした。合格ラインは70点らしいですが不安でした。現在、受かって「良かった」というか嬉々としております。公表されている限りでは、北海道全体では(歯科医を含め)75名程、旭川市には旭川医大の先生を主に数名しかいらっしゃらない様です。
この度、抗加齢医学を学ぼうと思った動機について考えてみます。今後、年を経るに従い、好きなことはする(映画、スキー、ゴルフ、読書、グルメ、お酒等)にしても、体力、気力そして知力は今後右肩下がりになることでしょう。更に診療の傍ら学会発表や論文を書くエネルギーはもうありません。人間は「易きに流れる弱い生き物」と僕は思っており、自主性に任せると楽な方向に行きます。専門医資格保持のためには強制的に単位取得を余儀なくさせられます。と書けば体裁は良いですが、正直言ってselfishな理由かもしれません。つまり自分のボケ防止と健康長寿、そしてPPKで逝くことを願ってでしょうか。まあ理由が何であれ、興味あることを勉強するのは良いことでしょう。
今後、抗加齢医学に関してより広く深い知識を得たいと思っております。既によくご存知の先生も多いかと思いますが、Agingや様々の疾患に関わって悪さをしている事の一つが酸化ストレス、つまり体のサビ化(細胞のサビ化)です。人間、呼吸をして酸素を取り入れている限り、体の酸化は避けられませんが、それに抗した抗酸化反応とのバランスが崩れた状態が酸化ストレスです。今後は酸化ストレスが可及的進まない様気をつけて過ごしたいと思います。
先日、早速今回の肩書きを入れた名刺を新調したのは言うまでもありません。実はこれが第一の目的だったかもしれません(笑)。最後に皆さんの健康長寿を願って筆を擱きます(旭医便り。令和5年12月号)
2023.11.26 最近読んだ本
「街道をゆく №29 秋田県散歩・飛騨紀行」(司馬遼太郎著「街道をゆく」シリーズ 朝日文庫)
いつもながら司馬遼の該博なことに驚愕する。目的地に行く前に勿論下調べをしているのは言うまでもない。彼や最近亡くなった大江健三郎は小中学生時代など図書館の本を全部読んだそうだ。読書量が半端でない。更によく記憶していることにも刮目する。今回はまず秋田県散歩。景勝地とされた象潟に纏わる俳人芭蕉や西施
2023.10.30 劇“へたくそな字たち”(劇団「TOKYOハンバーグ」。旭川市民劇場10月例会 旭川市公会堂)
様々な人が来ている夜間中学を舞台にした劇。子供の頃、学校に行けなくて読み書きが出来ない高齢の蕎麦屋の主人、日本で生活を始めることになった外国人、その他何らかの事情ある人達が学びに来ている。一人、不登校だが強がっている若い女性がいて、問題発言を繰り返し、当然それに反発するクラスメート。そういうクラスなので、簡単に“和気藹々”という事になるほど世の中甘くない。しかし、皆夫々何とか生きている。
それに反して、自分はクリニックでの診療を繰り返す日々で、生身の人間同士がぶつかり合う様な場面に遭遇することがめったにない。日々、演劇や読書等を通した色んな機会に、世の中の知らないことや気づかないことを教えられ、自分の「世間知らず」に追い打ちをかけられるのだ。
2023.10.1 最近見た映画
・「時雨の記」(主演:吉永小百合)
・「男はつらいよ。柴又慕情」(主演:渥美 清)
・「PLAN75」(主演:倍賞千恵子)
2023.9.26 最近読んだ本
松本清張“彩霧”(光文社文庫プレミアム)
2023.9.16 最近読んだ本 「アルケミスト 夢を旅した男」パウロ・コエーリョ著(角川文庫 1988年)
ブラジルの作家で1988年に出版しブラジル国内で大ベストセラーになった。童話風物語で小中学生向き。羊飼いの少年が夢に見たピラミッド付近にあるという宝物を探し当てる為、太陽や風などと会話、特に心で会話しながら旅をする。錬金術師が後半大きな役目をする。人が夢を見て、その夢に向かって進むことの大切さを説く。人は人生で何を見つけたいのか。人は多くの人と関わり合い苦労しながら生きていく。人の幸福とは何なのか。彼は最良の伴侶を旅の途中で見つけ、彼女も待っている。
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第31番変イ長調
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第23番「熱情」ヘ短調
ショパン 12の練習曲
*アンコール:トロイメライ他
2023.8.27 N響演奏会(NHK旭川放送局開局90年記念旭川市民文化会館 大ホール)
指揮:アンドリス・ポーガ ピアノ:松田華音
チャイコフスキー ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23
チャイコフスキー 交響曲第6番 ロ短調 作品74「悲愴」
2023.8.26 「論語と算盤」(渋沢 栄一著。現代語訳:守屋 淳 ちくま新書)を読んで
書かれている事に僕はほぼ全面的に納得し、彼が中々の人物であったことを再確認しました。彼が論語に傾倒していたことも改めて知らされました。経済活動というか商売、事業は、まず人の為にするものであって、その報酬、対価として収入、利益を得ます。そして私心を捨て、人としての道を外さず、道徳に乗っ取り良心に恥じない態度で取り組むことです。繰り返しますが、まず儲ける為に商売をする訳ではありません。結果として利益が出ます。しかし日本人は昔から、まず儲けることを考えて事業を始めようとする。儲けるかどうかは結果でしかありません。人の道を外して儲けても、決して内心は穏やかでなく良心の呵責を持って生きなければなりません。良心に恥じない態度で事業を進めれば、誰からもなんの後ろ指を指されることもなく悠々と過ごせます。
江戸時代、“士農工商”と言われていた様に、明治時代に入っても日本では商売は一段低いものと見られていました。しかし、渋沢は1867年のパリ万博に招待された徳川昭武を名代とする随行団の一員として約1年欧州を見聞し、経済の重要性に目を開かれました。以来彼は私心を捨て日本の経済事業発展に並々ならぬ努力をしたのです。彼が次の様に言ったのは負け惜しみでなく真実でしょう。「私が(私欲に走り)一身一家の富を積もうと考えたら三井や岩崎にも負けなかった。」
2023.7.19 “罠”(旭川市民劇場7月例会。旭川市公会堂)
作:ロバート・トマ。翻訳:小田島恒志、小田島則子。出演:石母田史郎、加藤忍、清水明彦、他3名。
この展開は残念ながら最後まで見破れなかった。「罠」という題なのでアッと言う最終局面が待っているだろうとは思っていましたが・・・。それには演技力がものをいうが、特に新妻役の加藤忍には騙された。
2023.6.18 “帰ってきたマイ・ブラザー”(札幌市カナモト・ホール)
作:マギー。演出:小林顕作。出演:水谷豊、段田安則、高橋克実、堤真一、寺脇康文他2名。
言わずと知れたおじさんグループのコミカルな演劇。会場は満席。内容は水谷豊を筆頭に軽いノリで進められていたが、僕としてはもっとシリアスな脚本でも良かったのではと思います。
2023.5.21 “珠玉の小品とともに巡る欧州探訪~ウイーンから”宮崎陽江(ヴァイオリン)&岡理香子(ピアノ)(旭川市 島田音楽堂)
1 クライスラー小品集:美しきロスマリン / 愛の喜び / 愛の悲しみ / 中国の太鼓
2 サラサーテ“ツイゴイネルワイゼン”
3 モーツァルト “ロンドKV373 ハ長調”
4 シューベルト クライスラー編曲 ロザムンデより
5 モンティ チャルダッシュ 他
2023.4.24 最近読んだ本
・松本清張 初期ミステリー傑作集「なぜ「星図」が開いていたか」(新潮文庫)
・司馬遼太郎「街道をゆく№18 越前の諸道」(朝日文庫)
・アガサ・クリスティー「そして誰もいなくなった」(ハヤカワ文庫)
2023.4.4 最近見た映画
・“CUBE2”
・“The power of the dog”
・“ノルヴィック”(2023年ノルウェー)
・“TOSCANA”
・“タクシードライバー(原題: Taxi Driver)”:1976年公開のアメリカ映画。監督はマーティン・スコセッシ。脚本はポール・シュレイダー。主演はロバート・デ・ニーロ。
・“今を生きる”:ロビン・ウイリアムスが独特の教師として主演した青春映画。
・“ダーティファイター”:主演クリント・イーストウッド。
・“西部戦線異状なし”
・“Everything everywhere all at once”:今年(2023年)のアカデミー賞作品賞だが、がっかり。筋もよく分からないし、ドタバタやっているだけの感じ。
2023.3.2 最近読んだ本
・内館牧子「老害の人」(講談社)
・佐伯啓思「死と生」(新潮新書):我々は死から逃れられない。僕は「死とは無になってしまうこと」と思っており、恐怖を感じるのは僕だけではないでしょう。悟った様なある偉いお坊さんでさえ、死ぬ間際「死にたくない」と言って逝ったそうです。小説家林芙美子も「千年も万年も生きたいわ」と言って死んだ。死とはどういうものかを知りたくて本書を読んでみた。本書の後半は、仏教から見た死について多くのページを割いている。しかし残念だが読後、自分の中で特に心境に変わったものはなかった。
2023.2.27 最近読んだ本
・荒井裕樹「凛として灯る」(現代書館):1974年4月20日東京国立博物館。「モナ・リザ展」初日。一人の小柄な若い女性(25才)が絵画モナ・リザにスプレーを噴射した。本書は彼女に纏わるノンフィクションStoryである。事件を起こすに至る背景は読んでみないと分からない。
2023.2.26 最近見た映画
“エルヴィス ”(原題: Elvis ):(2022年USA):監督―バズ・ラーマン。主演はオースティン・バトラー。個人として世界一の売り上げを上げたあのシンガー、エルヴィス・プレスリーの物語。
“ちひろさん”(2023年日本 Netflix):監督・脚本―今泉力哉。主演―有村架純。やはり清純派の彼女なので、元風俗嬢という設定は少々無理があったのでは・・・。好演はしていたけれど。
2023.2.21 旭川市民劇場“劇団扉座「最後の伝令・菊谷栄物語」”(旭川市公会堂)
作・演出:横内謙介。昭和初期、あの有名な喜劇役者エノケン(榎本健一)と共に活躍したレヴュー作家菊谷栄。(*レヴューとは大衆娯楽演芸のこと)。召集され故郷での送別会での一夜を、東京での舞台模様や男女関係の話も織り交ぜながら描いている。始めはコメディタッチの劇かと思われたが、それはほんの一部で真面目なものだった。軍国主義一辺倒の時代、憲兵の不条理な監視を受けながらも何とか立ち回る兵士、劇団員と毅然として振舞う菊谷栄の協力者達は好感が持てる。菊谷は人望もあり将来を嘱望されたが二次大戦で戦死した。この様な勿体無い人々が沢山戦争で死んでいった。
2023.2.19 ブルース・リウ ピアノリサイタル(札幌コンサートホール“Kitara”)
一昨年(2021年)の第18回ショパン国際ピアノ・コンクールの優勝者。“モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」による変奏曲”は最高。難曲でめったに聞けないらしい。次いでピアノ・ソナタ 第12番 「葬送」も良かった。勿論何れもショパン作曲。言うまでも無く会場は満席。
2023.1.2 最近見た映画
“ホットロック” :主演ロバート・レッドフォード (1971年)
“U-571” :監督ジョナサン・モストウ。出演マシュー・マコノヒー、ビル・パクストン、ハーヴェイ・カイテル、ジョン・ボン・ジョヴィなど。(2000年アメリカ)
“ザ・ターミナル”
“エデンの東”
“ビュウティフル マインド”:主演ラッセル・クロウ。統合失調症の数学者ジョン・ナッシュ教授がノーベル賞受賞した実話を基にしている。
“ランド” :監督&主演ロビンライト。
“シャルウイダンス?” :リチャード・ギア。ジェニファー・ロペス(2005年アメリカ)
“フラッグ・デイ”
“最高の人生の見つけ方”:主演吉永小百合。他に天海祐希、むろつよし。
2022.12.18 最近読んだ本
・葉室 麟「暁天の星」(PHP文芸文庫)
・大庭みな子「現代語訳“枕草子”」(岩波現代文庫)
・蓮池 薫「拉致と決断」(新潮社)
2022.12.12 旭川市民劇場12月例会 前進座“松本清張朗読劇”(旭川市公会堂)
1)「青春の彷徨」
2)「ある「小倉日記」伝」
出演者:柳生啓介、浜名実貴、中嶋宏太郎
2022.11.6「北斎展:世界が絶賛した浮世絵師―師とその弟子たち」(道立旭川美術館。開館40周年記念)
2022.10.12 旭川市民劇場10月例会 青年劇場“きみはいくさに征ったけれど“(旭川市公会堂)
作:大西弘記。演出:関根信一。
2022.10.12 最近読んだ本
司馬遼太郎「街道をゆく No.34 大徳寺散歩、中津・宇佐の道」(朝日文庫)
司馬遼太郎「街道をゆく No.42 三浦半島記」(朝日文庫)
西條奈加「心淋し川」(集英社)
永井みみ「ミシンと金魚」(集英社)
邱永漢「死ぬまで現役」(PHP文庫)
村上春樹「女のいない男たち」(文春文庫)
松本清張「戦い続けた男の素顔 宮部みゆきー松本清張傑作選」(新潮文庫)
松本清張「球形の荒野 上・下」(文春文庫)
2022.6.28 最近読んだ本
「天を測る」(今野敏 講談社)
日頃確信していることが二つある。一つは歴史上有名な人が必ずしもその評判通りとは限らないこと。もう一つは、ほぼ無名の人が実は歴史的上重要な人物である人がいるという事だ。この本でいうと、福沢諭吉と勝海舟が前者、後者に当て嵌まるのがこの本の主人公小野友五郎だ。彼は幼い頃から和算等の塾通いを始め、計算や天文測量に秀で咸臨丸の航海長として2度渡米している。目的は幕末、国防に必要な軍艦の調達や造船のためであったが、言語が違う国での仕事は並みの者では出来なかった。昨今の物見遊山や半分観光目的の留学ではなかった。咸臨丸で同行した福沢諭吉や勝海舟などは殆ど遊び半分だった様で、そういう事は一般には知られていない。人間、この小野友五郎の様な「知る人ぞ知る」人物になることだ。僕はもう遅いが・・・。
2022.6.6 最近読んだ本
1 カティ・マートン「メルケル 世界一の宰相」(倉田幸信、森嶋マリ訳 文藝春秋)
昨年、16年間ドイツ首相を務めたアンゲラ・メルケルが辞めた。普通辞める頃には国民支持率が下がるものだが、この人は驚異的に高率であった。僕は、この人物の殆ど汚点を残さない政務に興味を引かれ、女性ライターによるこの評伝を読んでみた。著者もいう様に、幼児より35年近く自由のない監視社会である東ドイツで育ったという出自がドイツ首相として成功した大きな要因だろう。また、首相になっても賃貸マンションに住み、一般市民同様にスーパーに買い物に行くという生活姿勢をする気性も関係あるだろう。特筆すべきは、当然一部国民に強い反発を受けることが予測出来た100万人近い難民を受け入れたことだ。これにより世界中にドイツという国のモラルを示せたことだ。これは、かつて「ユダヤ人に対するジェノサイド」という負のイメージがドイツに付き纏っていたことも関連するであろう。しかし原発撤廃を唱えたが、今後どうなるであろう。そう上手くは行かないだろう。もう一つ危惧されるのはロシアから天然ガスパイプラインを引いてしまったことだ。ウクライナ侵攻で経済制裁を受けているロシアがどう出るか分かったものではない・・・。
2 内田康夫「化生の海」(光文社文庫)
3 呉座勇一「陰謀の中世史」(角川新書)
2022.4.28 最近見た映画
・“CODA”(監督シアン・ヘダー 2021年USA・仏・カナダ)
主演エミリア・ジョーンズ。2022年度アカデミー賞・ゴールデングローブ賞受賞。
・“007 NO TIME TO DIE”(監督キャリー・ジョージ・フクナガ 2020年イギリス・アメリカ)
主演ダニエル・クレイグ。
・“最後の決闘裁判”(監督リドリー・スコット 2021年英・USA)
主演ジョディ・カマー。他にマット・デイモン、アダム・ドライバー、ベン・アフレック
・“スターリン葬送狂騒曲”(監督アーマンド・イヌアッチ 2017年仏、英、ベルギー、カナダ)
・“ロスト・バケーション”(監督 ジャウム・コレット 2016年USA)
主演ブレイク・ライヴリー
・“黄昏”(監督ウイリアム・ワイラー 1952年USA)
主演ローレンス・オリヴィエ。他にジェニファー・ジョーンズ
・“素晴らしき哉、人生!”(監督フランク・キャプラ 1947年USA)
主演ジェームズ・ステュアート。他にドナ・リード
・“北北西に進路をとれ”(監督ヒッチコック 1959年USA)
主演ケーリー・グラント
・“ROPE”(監督ヒッチコック 1948年USA)
主演ジェームズ・スチュワート
・“バリーリンドン“(監督スタンリー・キューブリック 1975年英・USA合作)
主演ライアン・オニール
2022.4.10 最近読んだ本
1 小池真理子「月夜の森の梟」(朝日新聞出版)
2 内田康夫「隠岐伝説殺人事件」(角川文庫)
かつて隠岐に軍の毒ガス製造施設があった等全くのfictionだが、面白かった。
3 モリス・シュワルツ「モリ―先生の最終講義 死ぬこと・生きること」(松田銑訳 飛鳥新社)
4 アガサ・クリスティー「ねずみとり」(鳴海四郎訳・ハヤカワ文庫)
5 横山秀夫「ノースライト」(新潮文庫)
2022.1.8 最近読んだ本
司馬遼太郎「街道をゆく №38 オホーツク街道」(朝日文庫)
以前にも書いたけれど司馬遼の文章は読み易い。これは僕にとってという事です。人それぞれ、本を手に取った時、興味深くても「読みにくい」、とか「波長が合わない(文が頭に入ってこない)」ことがある。そういう時は無理に読む必要は無いと思っています。
「街道をゆく」シリーズ全43巻、全巻読破にあと残り10巻になった。先が見えてきた。
今回の「オホーツク街道」。地元なので興味を持って読んだ。オホーツクには多数の独自の遺跡が発見されており、ここにアイヌとは別の文化があった。オホーツク人とされている。しかし、そのオホーツク人がどういう民族なのか未だ分かっていません。ウイルタ族(旧称オロッコ)、ニブヒ族(旧称ギリヤーク)、アレウト族(極北からアリューシャン列島に住む)等の説がある。当然、オホーツク人とアイヌ族は接触していたであろう。司馬遼の博識に改めて驚愕させられる。
2022.1.1「新春随想」“オールディーズ(Oldies)は欠かせない”
新年明けましておめでとうございます。年男という事で原稿を依頼されました。「そんな年か。(人生)残り少なくなったな。」と感じています。「越し方を振り返り・・・」と書き始めると長くなるので止めます。
さて、ジャンルに関わらずMusicが嫌い人は殆どいないと思います。僕の日常にオールディーズは欠かせません。オールディーズは言うまでもなく‘50年代と’60年代の欧米の歌謡曲です。子供の頃の僕の家庭は、残念ながらクラシック音楽が流れる家ではありませんでした。中学生の時、ビートルズを聴いたのが始まりで、それから欧米のポピュラ―ミュージックに嵌りました。しかし現代の欧米や日本の曲には余り馴染めません。学生運動の嵐が吹き荒れた大学時代はノンポリでしたので、御多分に漏れずフォークソングに嵌っていました。現在、private timeにはBGMとしてオールディーズを聴いてrelaxし、エネルギー源としています。流石に診療時のBGMとして使う勇気はありません(実は使いたいですが・・・)。
以下、favoriteなシンガー(グループ含む)と代表曲を列挙します。御笑覧下さい。最もfavoriteな曲は、カスケーズの「悲しき雨音」で、次いでパティ・ペイジの「モッキンバード・ヒル」。他にはプラターズ(「オンリーユー」)、ビージーズ(「マサチューセッツ」、「ホリデイ」)、レイ・チャールズ「愛さずにはいられない」、レターメン(「ミスター・ロンリー」)、スティーヴィー・ワンダー(「心の愛」)等々・・・。因みにカラオケの十八番はポール・アンカの「ダイアナ」です。本年の皆様のご幸運とご健康をお祈りし擱筆します。(北眼医報 令和4年1月号)
2022.1.1 新春随想“コロナ禍に思う”
“世の中、一寸先は闇”とか“来年のことを言うと鬼が笑う”とはよく言ったものです。2年前まで、“Lock down”とか“Stay
home”、“Social distance”という様な事態は我々は全く想定していませんでした。漸くコロナ感染の第5波が終息しましたが、新年はどうなっているでしょう。第5波の終息はワクチン効果が第一の原因でしょうが、抗体が減ってきたのか欧米等ではまた増加してきています。
コロナ禍で世の中が変わりました。最も大きい変化はリモート交流の増加でしょう。学会、講演会は言うに及ばず、Media番組でのコメンテーターもリモートで出演しています。しかしリモートの何と味気ないことか。画面を視聴して情報を得ることは出来ますが、それだけの事です。学会で旧知の友と旧交を温めるとか、美味しい料理を堪能したり、その土地のMeuseum訪問等が出来ず、大仰にいえば人生の楽しみや潤いがなくなりました。交通費や宿泊費の出費はゼロですが、その分、関連業界は赤字となり、経済は低迷し自殺者も増加しました。
感染症の怖さも、否応なく知ることとなりました。飛沫感染が主とされるCOVID-19の伝染力の強さには驚きで、インフルエンザの比ではなく、あっという間にあちこちにクラスターが発生します。致死率が低いのが不幸中の幸いです。“喉元過ぎれば熱さ忘れる“のが人の常とは言え、今後は流石にマスクや手洗いの重要性には当分留意することでしょう。東日本大震災での原発事故も電源喪失という想定外の事が原因でした。今後は“起きうることは起きる”と腹を括れということでしょう。私も麻酔薬等でのアナフィラキシー・ショックはお陰様で(極めて低い確率とはいえ)今の所経験しておりませんが、それは一応luckyな事なのでしょう(恐い・・・)。これまで週1回程行っていた居酒屋詣でも“Stay home”で足は遠のきました。しかし宅呑みは量がいかず、体から徐々にアルコールが抜けていく感じです。健康には良いですが、何やらメリハリが無く惰性で日々の診療が過ぎていきます。
何やら締まりのない結びになりました。皆様の本年のご幸運、ご健康を祈念し筆を擱きます。(北海道医報2022年1月号)
2021.11.6 クリニック正面の見事に紅葉したドウダンツツジ(灯台躑躅、満天星)
2021.10.29 最近読んだ本
・立花 隆「知の旅は終わらない」(文春新書)
僕の中では、司馬遼が歴史小説の泰斗、立花隆はジャーナリズム文学の泰斗だ。驚きなのは学士入学後(24歳で東大文学部仏文科を卒業、27歳で哲学科に再入学している)、数か国語の著作を原語で読んでいることだ。例えばプラトン(ギリシャ語)、トマス・アクイナス(ラテン語)、ベルクソン(フランス語)、ヴイトゲンシュタイン(ドイツ語)、旧約聖書(ヘブライ語)、等々。そして、ただ座しているだけでなく行動的でもあった。しかし惜しいかな、心残りであっただろうが令和3年4月30日80歳で死去した。彼は50代後半より周知の様に死に関し興味を持ち、「証言・臨死体験」、「がん・生と死の謎に挑む」、「死はこわくない」等を上市している。その中で死に関して達観した発言をしているが、実際そうであったかもしれず、そうでなかったかもしれない。冥福を祈りたい。
・ジェフリー・アーチャー「レンブラントをとり返せ」(新潮文庫)
・スティーブン・R・コヴィー「7つの習慣」(キングベアー出版)
・伊岡 瞬「不審者」(集英社文庫)
タイトルから陰湿な後半部があるのかと思っていましたが、そうでなくて一安心しました。しかし筋として意外性たっぷりでした。
2012.10.27 プレオム劇“脚光を浴びない女”(第323回旭川市民劇場10月例会。旭川市公会堂)
脚本:中島淳彦。演出:福島三郎。
出演:小林美江、矢野陽子、宮地雅子、大西多摩恵、馬場奈津美など総勢10名の女優陣。男は出て来ません。団地の立ち退きをメインのテーマとして、各人の抱える家庭を浮き彫りにして様々な事が起きる。とにかく面白かった!こんなに笑ったのは久々だ。是非、多くの人に見てもらいたい。女優陣皆それぞれ持ち味を出して良いが、一番活躍する小林にはご苦労さんと言いたい。脚本を書いた中島淳彦を賞賛したいが、残念なことに一昨年(2019年)12月に58才で他界している。*プレオム劇とはプレーンオムレツの様にシンプルで誤魔化しの効かない料理の如く、親しみを持ってもらえる芝居を目指している演劇ユニット。
2021.10.18 最近見た映画
“ノッティングヒルの恋人”(1999年イギリス。ジュリア・ロバーツ&ヒュー・グラント共演)
“デジャブ”(2006年USA デンゼル・ワシントン主演)
“アルジャーノンに花束を”(1968年USA)
“暗くなるまで待って”(1967年USA オードリー・ヘプバーン主演)
“エントラップメント(1999年USA。ショーン・コネリーとキャサリン・ゼタ・ジョーンズの共演)
どんでん返しのストーリーが面白い。ハラハラドキドキも最高でお薦め。キャサリン・ゼタ・ジョーンズは一見男性遍歴多そうに見えるが、実際は真面目で浮いた話しがないとのこと。男優マーク・ダグラス夫人で一男一女の母親。
2021.8.29 最近読んだ本
アガサ・クリスティー「ABC殺人事件」(ハヤカワ文庫)
アガサ・クリスティー「火曜クラブ」(ハヤカワ文庫)
アガサ・クリスティー「予告殺人」(ハヤカワ文庫)
アガサ・クリスティー「愛の探偵たち」(ハヤカワ文庫)
西村秀一「新型コロナの大誤解」(幻冬舎)
森村誠一「老いる意味」(中公新書ラクレ)
藤野千夜「じい散歩」(双葉社)
青山美智子「お探しものは図書室まで」(ポプラ社)
蛭子能収「死にたくない」(角川新書)
内田康夫「琵琶湖周航殺人事件」(講談社文庫)
内田康夫「秋田殺人事件」(講談社文庫)
伊岡瞬「悪寒」(集英社文庫)
帚木蓬生「老活の楽しみ」(朝日新書)
羽生善治「挑戦する勇気」(朝日新聞出版)
篠田桃紅「これでおしまい」
2021.8.27 最近見た映画
“ダイヤルMを回せ”(監督:A.ヒッチコック。出演:グレース・ケリー、レイ・ミランド 1954年アメリカ)
“断崖”(監督:A.ヒッチコック。出演:ジョーン・フォンティン、ケーリー・グラント 1941年アメリカ)
“間違えられた男”(監督:A.ヒッチコック。出演:ヘンリー・フォンダ、ヴェラ・マイルズ 1956年アメリカ)。
“見知らぬ乗客”。(監督:A.ヒッチコック。出演:ファーリー・グレンジャー、ロバート・ウオーカー 1951年アメリカ)
“それでも夜は明ける(12years
a slave)”(監督:スティーヴ・マックウイーン。主演:キウエテル・イジョフォー 2013年イギリス)
“四銃士”(監督:リチャード・レスター。主演:マイケル・ヨーク 1974年のイギリス&アメリカ)
“ナイト・サバイバー”。(出演:チャド・マイケル・マーレー。ブルース・ウイルス 2020年アメリカ)
“オーロラの彼方へ“(出演:デニス・クエイド、ジム・カヴィーゼル他 2000年アメリカ)
“ナイチンゲール”(主演:アイスリング・フランシオン。サム・クラフリン他 2018年オーストラリア)
“招かれざる客”(出演:スペンサー・トレーシー、シドニー・ポアチエ、キャサリン・ヘップバーン 1967年アメリカ)
“エンド・オブ・ホワイトハウス”(主演:ジェラルド・バトラー、アーロン・エッカート、モーガン・フリーマン 2013年アメリカ)
“プライベート・ライアン”(主演:トム・ハンクス、エドワード・バーーンズ、マット・ディモン 1998年アメリカ)。
“ダブル・ジョバティー”(出演:トミー・リー・ジョーンズ、アシュレイ・ジャッド 1999年アメリカ&カナダ)
“パラサイト 半地下の家族”(監督はポン・ジュノ。出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン 2019年韓国)
“殺人狂時代”(監督・脚本・主演:C.チャップリン 1947年アメリカ)
“街の灯”(監督・脚本・主演:C.チャップリン 1931年アメリカ)
“ライムライト”(監督・脚本・主演:C.チャップリン 1952年アメリカ )。
“日々是好日”(監督:大森立嗣 出演:黒木瞳・樹木希林・多部未華子 2018年)
“半落ち”(監督:佐々部清。出演:寺尾聰、原田美枝子 2004年)
2021.7.8 最近読んだ本
“陰謀の日本近現代史”(保坂正康著 朝日新書 2021年)
あの二次大戦は、日本の軍部官僚の狂気によるもの以外の何物でもなかった事を詳しく記しています。当時の日本、石油輸入の80%はアメリカに頼った状況であり、なおかつアメリカとの戦力の比は1対40だった。更にアメリカの日本大使館への暗号電報は初めから盗聴、解読されていたのです。知らぬは日本側だけ。全く馬鹿げた戦争をしたものである。兵士達は無駄に死んだ。犬死にです。昭和19年には、そういう問題ある官僚トップの陸相兼首相の東条英機が軍の参謀総長を兼ねることになった。その狂気を咎めたり、諭したり、あるいは批判する人物はいなかったのか?そこが僕の知りたい点だ。
2021.5.16 最近見た映画
1)“英国王のスピーチ”(監督トム・フーパー 2010年 英国・USA・豪作品)
主演:コリン・ファース。現在の英国のエリザベス女王の父、ジョージ6世は吃音でした。言うまでもなく国王にとってスピーチすることは大切な事業の一つです。国民向けのラジオでは必ず言語聴覚士の先生が付き添っていたとのことです。その裏話がこの映画です。兄が継ぐはずであった国王の座が事情で巡って来てしまい大いに戸惑う。困惑する。しかし妻や周囲の人達が暖かい目で見ていた様だ。特に妻の献身ぶりがよく描かれています。現在、吃音の明確な原因は不明ですが、環境ではなく生来の遺伝的な面が強いという説が有力です。吃音の程度が実際より誇張されて描写されている様ですが、それは万人向けにfictionとして作る映画ですから多めに見ましょう。
2021.5.1 歌川広重・二つの東海道五拾三次展(道立旭川美術館。2021.4.17~6.27)
“二つの”とは、1833年から1834年に発行された保永堂版と1847年から1851年に掛けての丸清版の事で全て笠間日動美術館蔵です。浮世絵の実物を見る楽しさを再確認しじっくり堪能しました。江戸時代の風俗、生活ぶりが介間見える。険しい山越え。道中での追いはぎの不安(女性だけの旅人も描かれている)。また静岡近辺には川が多く政治上、あまり橋を架けないので人力で川を渡る様子が頻繁に描かれています。
2021.4.28 文部科学大臣(学校保健および学校安全)表彰を受けて
昨年10月、学校医としての貢献で文部科学大臣表彰(学校保健及び学校安全表彰)を受けました。1991年以来、自分なりに学校健診をして参りましたが、正直な所、予想外のことで驚いています。確かその2か月位前、旭川市医師会の事務局長さんから、この件で旭川市医師会としての推薦が決まったとのお電話を受けました。長年学校医をしているので「そういうこともあるのか」位に受け止めておりました。ある日、薬局関係の方から突然「先生、おめでとうございます」と言われ、何のことか初めは分からなかった次第です。その後、旭川市の教育委員会より正式に受賞の知らせがありました。例年、全国学校保健大会で文科大臣より直接授与されるとのことですが、今回はコロナ禍のため市の教育長より戴きました。自分は今まで全国的な賞とは無縁でしたので、当医師会の推薦が無ければ頂けなかったと思われ感謝申し上げます。ありがとうございました。
私が旭川市の学校医になりましたのは1991年に旭川赤十字病院に赴任した時からで30年になります。その前職の名寄市立病院在職中は養護学校の健診を担当させて頂いておりました。学校健診はご承知の様にscreeningですので十分なことは出来ません。以前は、花粉症によるアレルギー性結膜炎等の結膜炎や逆まつげ(睫毛内反)、眼瞼炎、斜視などが多かったのですが、近年それらは減少している様に見受けられます。最近の子供達は外見上きれいな眼をしている様に思います。しかし、特に中学生ですがコンタクトレンズ装用者の増加が顕著です。時代の流れとして、パソコンやスマホ等のデバイスよる近業の増加はやむを得ないでしょう。更に今回のコロナ禍でICT教育が一層促進され、自治体から学校へ無償でデバイスが配布される様なニュースも聞いております。その為今後、世界中で若年者の近視の一層の増加が予想されている所です。またサッカー等スポーツの隆盛でコンタクトレンズ装用者の更なる低年齢化も危惧されています。
小学校低学年は可愛く自分の孫を見ている感じです。中学生ともなれば体も大きくなり頼もしくなりますが、表面上は快活であっても家庭や友人関係等の悩みや葛藤があるだろうと思いつつ診ております。今回の受賞を励みとして、今後は体力と気力の続く間、ボケ防止の意味でも、微力ですが健診も含め精進して参りたいと思っております。(旭川市医師会“旭医便り”令和3年4月発行155号に掲載)
2021.3.30 最近読んだ本
“剣岳―線の記”(高橋大輔著 朝日新聞出版)
自分は特に山登りをする訳でもないので、この本を読んだ動機は専ら歴史的な興味からです。1907年(明治40年)未踏峰とされていた剣岳の山頂で、柴崎芳太郎率いる日本陸軍測量隊が仏具(錫杖頭と鉄剣)を発見した。誰かが既に剣岳山頂に到達していたのだ。著者高橋は苦労の末、最初の登頂者は興福寺僧侶松室法橋と特定し、平安時代後期の1142年頃と推定した。高橋はこの発見は決して偶然ではなく、なるべくしてなったこととした。後者は日本鎮護のため剣岳開山は国家事業であったし、前者は明治期、国家事業として地形図完成のため、空白であった剣岳に日本陸軍の測量隊が命を賭していたのです。
2021.2.23 劇団文化座公演“しゃぼん玉”(旭川市民劇場2月例会 旭川文化会館)
原作:乃南アサ。出演:佐々木愛(老女スマ)、藤原章寛(青年)、青木和宣(シゲ爺)、他。
この青年を演じる藤原章寛は、滑舌も良く演技も好感が持てた。更なる活躍が期待出来そうだ。また取り巻く役者連も演技が達者で安心して
2021.2.22 最近読んだ本
“家族じまい”(桜木紫乃著 集英社)
著者桜木は確かに上手い書き手になった。5編の短編から成っているが、主に娘の視点から見た親を描いている。それはそれで良いと思うが息子(義理の息子を含む)の影が薄い。各編とも日本中どこにもある家族だが、さすがその内容には唸らせるものがある。①たまたま知り合った老々介護の夫婦、実はその夫・・・。②漸く二世帯同居となったが、実は父は・・・。③全く没交渉の親子、④55歳の息子を娶わせたが・・・、等。しかし惜しいかな、各編とも尻切れトンボ。各家族はその後どうなるのか。ぜひ続編を書いてほしい。
2021.2.4 最近読んだ本
1)“奇跡の日々”(駒屋三楼著 幻冬舎)
2)“社長って何だ”(丹羽宇一郎著 講談社現代文庫)
2021.1.31 北海道農民管弦楽団 旭川公演(代表 牧野時夫 旭川市民文化会館)
指揮 牧野時夫(この管弦楽団の代表)。
①
ハチャトウリアン“組曲 仮面舞踏会”
②
プロコフィエフ“ヴァイオリン協奏曲 第2番ト短調 Op.63”
(ヴァイオリン独奏 赤間さゆら)
この曲は難曲と言われているそうです。しかし赤間さんは、緊張していただろうけれど気負いも見られず、ベテランの様に淡々とした中々の演奏でした。赤間さんは旭川出身で東京芸大卒業。現在、札響に所属しており今後の活躍を期待しています。
③
チャイコフスキー“交響曲 第5番ホ短調 Op.64”
この曲は僕が最も好きなクラシックの一つです。あの主題が第1楽章から繰り返し演奏され、その見事な繰り返しにはいつも感嘆せずにはいられません。流石、チャイコフスキー。演奏も農閑期だけの活動とは信じられず、お世辞抜きでしっかりしたものでした。牧野氏の指揮にも躍動感があり、全体の音の纏まりも良かったです。
2021.1.11 最近読んだ本
“カラマーゾフの兄弟”(フヨードル・ドストエフスキー著 光文社文庫・第1巻~第4巻)
確かに大長編ですが、亀山郁夫訳は評判通り読み易く、全編、普通の推理小説を読む気分で楽しく読めました。しかし主人公と言える三男アリョーシャが属する修道院の長老(ゾシマ長老)の談話と説教の第6編は冗長で退屈でした。全体として父親フヨードルの影が薄く、登場する場面も比較的少ない感がある。しかしこの小説は父親を描く事よりも、父親フヨードル殺人事件前後における息子達の各人各様の生き様と、そこに彼らの女性関係や地域の子供や家族との交流を絡ませて描くことに重点があると思われます。実は読む前、もっと哲学的な、あるいは高尚な論調があるかと思っていました。しかしそうでなく、次々と事件めいたことが起きて一編の映画を見る様でした。特に面白かったのは、ミーチャが父殺し?の後、旅籠でバカ騒ぎをする(第8編)箇所だ。前述したアリョーシャについては、その性格が模範的な人間として描かれていますが、その他の人達は一癖二癖ある人物として登場している。そして、これだけの長編で各巻毎に息を吐かせない見せ場があり飽きさせないのは流石、史上随一の作家と言われるドストエフスキーの才能だろう。残念なのは、犯人とされる長男ミーチャの裁判後の行く末が書かれずに終わっていることである。
2021.1.1 コロナ禍の中、新年を迎えて
昨年暮れ、中国で始まった新型コロナウイルス感染症(Covid-19)が、ここまでpandemicになり、そして年を越しても日本でも終息しない事態になるとは思いませんでした。ペストやスペイン風邪の様に致死率の高いもので無いのが不幸中の幸いです。風邪ウイルスに過ぎないとされる一ウイルスの感染症が、医療だけでなく社会経済にも斯様にsevereな事態を引き起こすことも想定外でした。医療だけでなく、緊急事態宣言やstay homeにより飲食店やホテル等の営業や解雇等による個人への悪影響は目を被うばかりです。当然自殺者の増加もこのコロナ禍の一つでしょう。斯様に、ヒトの身体の頭から爪先まで全て関連している様に、社会を形作るもの全てが、実は絡みあって関連し合っている証左です。ある一つの事への悪影響がドミノ倒しの様に連鎖し、思いも寄らない事を惹起してしまう。昨年は殆どの学会、講演会等人の集まるイベントがキャンセルとなり、皆、思う様に旅行にも行けませんでした。最近はより感染し易いと言われる変異種が出て来た様です。とにかく一日も早い終息を願うばかりです。
2020.6.24
“心の旅路“(マーヴィン・ロイ監督。主演グリア・ガースン。ロナルド・コールマン 1942年USA)。
筋立てで無理な所があるが全体としては良いと思う。元夫の記憶が戻らず、そのもどかしさは半端ではない。やはり予想通りhappy endにはなったが、現実には元の妻を思い出せないままの不幸な結末もあるだろう。むしろ現実はその方が多いかもしれない。
2020.4.15 最近読んだ本
“梅と水仙”(植松三十里著 PHP研究所 2020年)
しばらくぶりに心を動かされた本に出会った。彼女の苦労を考えると涙せずにはいられない。明治4年、わずか6才で留学生として渡米した(渡米させられた、が正しい)津田梅(後に梅子)。未だ右左も覚束ない子供、寄宿先夫妻の人格がどうあろうと、彼女の不安や苦労は如何ばかりであったか想像に難くない。斯様な留学をさせた親の顔が見たいと世間がいうのは当然だ。11年後帰国するが当然日本語は忘れている。しかし欧米に追い付けと走る日本で、そのアメリカナイズされた素養や振舞いを十分生かす仕事が舞い込むのは当然のことだ。親としては、この留学が失敗だったと世間に思われることを最も忌避していただろう。梅子は、当時としては稀有な経験をしている自分に負けない、打ち勝つことこそが自分の人生であると見定めていた。それが女子教育だったのだろう。
2020.4.5 新型コロナウイルス
昨年12月以来、中国で発生した新型コロナウイルスが日本や韓国を始め、世界中に広まり異常事態となっています。幸い致死率はインフルエンザ位でしょうか、エボラ出血熱程の悪性の病気ではない様です。インフルエンザは大体のことが分かっておりパニックになることはありませんが、我々、不明な事や得体の知れない物が怖いのは当然です。それで一層過剰に反応します。本文が発行される頃も事態はそう変わっていないでしょう。懸念されるのは東京オリンピックですね。このウイルスの発生源は中国、武漢市の市場と言われています。MERSは中東発症でしたがSARSも中国からでした。エボラウイルスはコウモリ等の野生動物からと明らかになっていますが、新型コロナは未だ不明です。この様なパンデミックな異常事態は石油ショックやリーマンショック以来です。「不要不急の外出は自粛を」という事ですが、先日運動不足解消のためスキーに行ってきました。ハウスには行かず車内で腹ごしらえ。スキー
2020.4.6 最近読んだ本
“満願”(米澤穂信 新潮文庫)
2020.2.22 最近読んだ本
“インソムニア”(辻寛之著 光文社2019年)
アフリカに派遣されたPKO。女性2名含む7名の小部隊が遭遇した事件とある村の奇妙な風習を絡めたサスペンス。ただの本とは言わず、あえて作品と言おう。帰国後、隊員達は次々に自殺する。その村で何があったのか?何を見たのか、何を経験したのか?以前ベトナム帰還兵の自殺が大きな話題になった。戦争では人殺しが付き物で、やはり人に大きな精神的影響を与えるのだ。この小隊のリーダーは「真実は重要だ。しかし真実を伝えることが人を幸福にするとは限らない」という言葉を残して世を去った。*インソムニア(insomnia)=不眠(症)。
2020.2.21 道北眼科医会について
道北眼科医会(以下、本会)については旭医だより125号(平成23年4月号)に以前、松井正明先生が書かれており、今回それと重複する所があるかと思いますがお許し下さい。
本会は昭和50年(1975年)の旭川医大眼科開学時に当時の初代教授保坂明郎先生が市内や道北地方の眼科医に声を掛けて始められました。というのは、当時はまだ道北地方には眼科医療機関が少なく、旭川市内では市立、日赤、厚生病院の3総合病院の他は開業医も数軒しかなく、旭川医大眼科も教授、助教授含めて数名の為、眼科医の連携と親睦を深める目的で作られました。始め数年間は深川、滝川も入っておりましたが、今は上川と宗谷管内のみです。現在の会員は旭川医大眼科も含め、市中病院(上記の市内3総合病院と高砂台病院、森山病院)の勤務医、そして市内16軒の個人クリニックです。他に名寄市に井上玲先生(なよろ眼科)がいらっしゃいますが、名寄市立や稚内市立病院眼科は旭川医大の出張医で、実質的に本会はほぼ旭川眼科医会と言えます。
会長は初代が五十嵐保先生(五十嵐良先生の父)、その後池田裕先生(池田弘先生の父)、奈良尚久先生、そして五十嵐良先生と続き、昨年まで私が6年間勤めました。現在は坂上晃一先生(あさひ眼科)がされています。ここ数年、旭川医大眼科の先生方でアラフォー以上になられた方が増えたせいか、市内で眼科クリニックの開設が続いています。しかし下記の様に閉院も相次いでいます。稲積文子先生(稲積眼科)、五十嵐良先生(五十嵐眼科)、奈良諭一先生(末広眼科)、池田弘先生(池田眼科)、山下やよい先生(緑新眼科)です。
本会の活動は、年1回夏に生涯教育講座を(本会は北海道眼科医会の道北ブロックでもあり)北海道眼科医会と共催しております。この生涯教育講座は昭和58年から始め、全国の著明な専門医2名に最新の情報を講演して頂くもので、今年で36回目となります。また旭医大の若手研究陣の発表や新人入局者の歓迎会等も含めた総会を6月頃開催しております。また、皆様にご協力頂いておりますオンコールも我々の重要な仕事で、各眼科医療機関に割り振っております。毎日の夜10時以後と年末年始、GWは旭医大眼科にご協力頂いており、この場を借りて厚く感謝申し上げる次第です。
眼科における検査機器、レーザーや眼内レンズを含む手術、薬物の発展には眼を見張るものがあります。以前では手を付けられてなかった疾患、治療不能とされていた疾患も改善することがある様になりました。しかし、開業医一人で出来ることは限られ、高齢者の増加と相まって大学や総合病院へ紹介したり、あるいは逆紹介される症例も多く、今や大学・市中病院・開業医の連携が一層大切な時代になりました。今後も本会は、旭川及び道北地区の眼科医療の発展、充実の為に、医大・市中病院・開業医間連携の潤滑剤として機能していくものと考えられます。宜しくお願い申し上げます。(旭川市医師会機関紙 “旭医だより”151号に掲載)
2020.2.9 最近見た映画
1)“風と共に去りぬ”(監督ビクター・フレミング 1939年アメリカ)
主演ヴィヴィアン・リー。クラーク・ゲイブル。この女性主人公の(良い表現をすれば)何度叩かれても立ち上がろうとする気質は尊敬する。しかし僕の嫁さんにしたいとは思わない。
2)“オズの魔法使”(監督ビクター・フレミング 1939年アメリカ)
主演ジュディ・ガーランド。楽しい子供向け映画。主題歌“Over the rainbow”はmusical映画主題歌の第1位とのこと。
3)“シェーン”(監督ジョージ・スティーブンス 1953年アメリカ)
主演アラン・ラッド。西部劇映画として知らない人はいまい。ヴィクター・ヤングのテーマ曲も有名。西部開拓時代、土地絡みの紛争は多数あったろう。そこに得体の知れない流れ者が来る。それがどういう人物か。町は常にナーバスになっていただろう。補足だが「Shane,come back!」と叫ぶジョーイ少年役の俳優ブランドン・デ・ワイルドは若くして(30才)逝った。
20202.8 最近読んだ本
“カラマーゾフの兄弟”Ⅰ(著者ドストエフスキー 亀山郁夫訳 光文社文庫)
2020.2.5 地域タウン紙“せせらぎタウン”に掲載
日常、専門的な事を説明されても分かりづらい事があります。僕など、例えば建築や音楽の長調、短調などの話は門外漢で聞いてもチンプンカンプンの事が少なくないです。眼科では特に“屈折”や“調節”の事が皆さんは理解しづらい様です。白内障手術では白内障という水晶体の濁りを取りさえすれば、遠くも近くも良く見える様になると思っている方が少なくありません。術後も近視や乱視、老眼といった“屈折”や“調節”の問題が残る事を術前に説明するのですが反応は今一つです。また、眼精疲労の一番の原因は老眼です。遠視の人は老眼が強く眼精疲労になり易い。その対策として、遠近両用メガネの必要性を説明しますが理解しにくい様です。目はピントを合わせる為に
最後に、高齢化社会を迎え、寝たきりなどで来院出来ない方の為に、当院は“往診”することを始めました。十分な事は出来ないかもしれませんがご相談下さい。(令和元年9月)
2020.1.27 最近見た映画
“フェラーリとフォード”(監督ジェームズ・マンゴールド 2019年アメリカ)
主演:マット・デイモン。クリスチャン・ベール。ルマン24時間レースはご承知の方も多いと思いますが、世界3大カーレースの一つ。24時間休みなしで周回、可及的如何に速く走れるかを競うものです。車のエンジンやブレーキ等の耐久性が問われます。しかし、僕はこの映画の言わんとする事はカーレース描写はあくまで添え物で、人間対人間の闘いを描こうとしていると思います。つまりフォード幹部とカー作りグループ、又、そのカー作りグループ内のエンジン等の作り手とドライバーの闘い、フォード社幹部内の闘いです。
2019.11.10 最近見た映画
1)“遠い太鼓”(監督ラオール・ウオルシュ。アメリカ。1951年)
主演ゲイリー・クーパー。フロリダ半島の湿地帯で惨忍さを漂わせるインディアン、セミノール族と戦う部隊を描いている。ゲイリー・クーパーはそのリーダー役。救出した捕虜の中には女性もおり、ワニが出没する沼や湿地帯をセミノール族と戦いつつ逃げ延びようとするが苦難が続く。ゲイリー・クーパーとセミノール族リーダーの水中での決闘は見もの。フロリダにもインディアンが居て、これは史実に基づいている。
2)“リオ・グランデの砦”(監督ジョン・フォード。アメリカ 1950年)
主演ジョン・ウエイン
3)“黄色いリボン”(監督ジョン・フォード。 1949年 アメリカ)
主演ジョン・ウエイン。西部劇で定番のインディアンと対決する騎兵隊の話だが、殺戮等の陰惨な場面はありません。ジョン・ウエイン隊長の部下二人ときかん気な司令官令嬢との恋の鞘当てを主軸に描いています。拉致された子供達の奪還とかインディアンの馬集団の放逐などの他コミックな場面も多く、リズミカルな主題歌と相まって楽しい映画となっています。この有名な主題歌はアイルランド民謡をアレンジしたものです。
4)“赤い河”(監督ハワード・ホークス 1948年アメリカ)
主演ジョン・ウエイン。他にモンゴメリー・クリフト、ジョアン・ドルー。2時間以上の大作だが、全く飽きさせない。ストーリーは意外やあのジョン・ウエインが少々悪いというか独裁的な性格のリーダー役だ。
2019.10.8 牛田智大ピアノリサイタル(旭川市大雪クリスタルホール)
まだ若干20歳、新進気鋭の人気あるピアニスト。演奏前の挨拶などは場馴れしている様で堂々としていた。ショパン、チャイコフスキー等の小品が多かったが、技巧的な難曲が多く、シニカルに言わせてもらえば“ピアノと格闘”という感じ。
2019.9.24 最近見た映画
“沈黙の戦場”(監督:クリスチャン・ミリッチ 2007年 クロアチア)
第二次大戦とボスニア紛争で同じ戦場となったボスニアの荒野。戦争がもたらす兵士達の極限の日々とそれによる狂気を描いています。以前から帰国後の兵士の自殺などPTSDが問題になっています。
2019.8.18 道立旭川美術館 特別展“ブリティッシュ・オートマタ:ポール・スプナーと英国現代からくり人形の世界”(2019.7.6~9.1)
日本にも昔からからくり人形はあったが、展示されている人形の多くは、世事をウイットやアイロニー(皮肉)で絡めたもの。見学者が自分で動かすことが出来るものも多い。
2019.8.17 最近読んだ本
流罪にどういう訳か興味があり読んでみました。この著者、中々の人です。もう圧巻で一気に読ませます。日本での流罪につき、勿論古文書を詳細に読み解いて記述しています。崇徳天皇、俊寛、真田昌幸、宇喜多秀家等々。いずれも単に悲話とは片づけられず、何とも可哀そうで言葉が無い。
2019.8.11~12 お盆休み恒例道内ぶらり旅“むかわ町~平取町~日高町~浦河町~様似町”
今年の主目的はむかわ町穂別博物館の恐竜と浦河のシンザン像です。
1日目(むかわ町・平取町・日高町):①義経神社&義経資料館(平取町):日本全国に真偽はともかく源義経伝説があります。江戸時代、蝦夷調査をした近藤重蔵が仏師に作らせた義経像が祀られています。資料館には義経一行が置いていったという武具や甲冑が置いてあり見ごたえがあります。②穂別博物館:恐竜だけでなく、アンモナイトやクジラ等の化石も本当に種々多数展示してあります。大昔、日高・十勝地方が海であったことを如実に実感させられます。
2日目(浦河町・様似町):①浦河町立郷土博物館&馬事資料館:浦河町開拓時代から昭和に至る生活物品が所狭しと展示されています。中には僕が子供時代によく遊んだ懐かしいものもありました。馬事資料館には、あの名馬シンザンの写真も!!②アポイ岳ジオパークビジターセンター:二つのプレート(北米プレートとユーラシアプレート)が衝突して出来た日高山脈。その時、たまたま地表に押し上げられた地中深部のマントル。それが固まった“かんらん岩”が展示されています。地学の良い勉強になります。③五冠馬シンザンの像:引退後繋養した谷川牧場の事務所横にあります。長生きもしたし、名馬中の名馬!馬とは言えレスペクトします。
2019.7.27 TV北海道30周年記念“東山魁夷 唐招提寺御影堂障壁画展”(道立近代美術館 札幌市)
戦後を代表する日本画家、東山魁夷が、1970年から、完成までに10年の歳月をかけた奈良・唐招提寺から依頼された襖絵等が披露されている。夜明け頃か、霧に覆われた静謐なる樹林群を描いた“山雲”や“黄山暁雲”。鑑真が命を懸けて渡航して来た海。その押し寄せる波を描いた“濤声”など、殆どが墨画でカラフルではないが引き付けて止まない。
2019.7.14 最近読んだ本
“セルツェ-心。遥かなる択捉を抱いて”(不破理江著 東洋書店新社 2018年)
北方四島の一つ択捉島への訪問団に加わった著者は、参加者の一人90才の男性(山本昭平氏)と知り合った。彼は少年時代、択捉で過ごした。侵攻して来たソ連軍関係者やその家族、若きソ連軍医との交流があり、それを聞き取り纏めた本です。従来小耳に挟んでいた様なソ連兵による暴力等はほぼ無かったのか全く描かれておらず、むしろ平和的な交流であったことに驚かされた。
2019.7.12 N響演奏会 モーツァルト作曲“バイオリン協奏曲第5番イ長調k.219トルコ風”(指揮ローレンス・レネス)(旭川市文化会館)
バイオリンは服部百音。客はほぼ8割が埋まっていた。僕にとっては馴染みのない曲だが、このバイオリニスト中々上手に思えたが、まだ若干20才!これからだろう。
2019.6.17 “もやしの唄”(劇団テアトル・エコー。旭川市民劇場6月例会 旭川市公会堂)
作:小川未玲。出演:根本泰彦、吉川亜紀子、他。昭和30年代、仕事に追われ、疲れ気味の真面目なもやし店の主人を取り巻く物語。ふらっと一人の若者が勤めることになるが、実はある大きな会社の跡取り。近所の女性も手伝いに来ている。経営が火の車で設備投資もままならない中小企業。自分のクリニックと照らし合わせてしまう。
当然だが日々、検査機器や医学は当方の事情に関わらず発展し続ける。それを追いかけて行かなければ無情に取り残される。自分もそろそろいい年だが、頑張って行こうと思う。
2019.5.1 最近読んだ本
“物語 オーストラリアの歴史―多文化ミドルパワーの実験”(竹田いさみ著 中公新書 2000年)
オーストラリアがかつての白豪主義をほぼ捨て、移民や難民の受け入れに積極的な国家に変貌したとは恥ずかしながら知らなかった。かと言って、米中ロの様な大国とは成りえず、そこで日本と同様な中規模国家として国際社会へ多面的に参画していくというのがこのミドルパワーの意味です。英連邦の時代から振り返り詳細に論じています。
2019.4.30 最近読んだ本
1)“街道をゆく №28耽羅紀行”(司馬遼太郎著 朝日文庫)
耽羅とは韓国南端の済州島の事で古代、耽羅という独立国でした。現在、国立の総合大学まであります。済州島と縁のある知識人数人とこの島を巡ります。ハルラ山の溶岩で出来た玄武岩の大地や海女、シャーマンの話しなどいつもの様に飽きさせません。
2)“予期せぬ瞬間―医療の不完全さは乗り越えられるか”(アトウール・ガワンデ著 古屋美登里・小田嶋由美子訳 みすず書房 2017年)
久々に感動というか、医療に関して琴線に触れる本を読みました。これはTVで話題になる研修医ドラマ“コード・ブルー”の種本です。一般の方には充分にご理解頂けないと思うが医療とは不確実なもの、不完全なものです。患者さんの容態を見て予後、つまり今後の経過をある程度推測は出来ても明確に当てることなどは無理です。医師の経験や医学知識に頼り、良い意味でも悪い意味でも予想外の経過になることは大いにある。結果良ければいいが不幸な結果になることもある。その医師側の実情を実に事細かに説明してくれています!
2019.4.9 ミュージカル“OG”(劇団NLT 作曲:まき りか。演出:本藤起久子 旭川市公会堂)
主演:旺なつき、阿知波悟美。アラ還暦の元気な二人、特に阿知波。両者、声も良く通り下ネタも織り交ぜた大人のミュージカルで観客にそのバイタリティーを振りまいていた。最後ネットで炎上することになったという展開は意外だった。そしてピアノの金森大にも大きな拍手を送ります。
2019.3.21 最近見た映画
1)“グリーンブック”(監督ピーター・ファレリー 2019年 アメリカ)
主演:マハーシャラ・アリ。ヴィゴ・モーテンセン。今年のアカデミー作品賞受賞!事実に基づく話です。僕の好きな黒人歌手ナット・キングコールが暴力に合ったというアメリカ南部(Deep
South)の黒人差別の酷さ。主人公たるピアニスト(アリ)は尊敬すべきプライドというか見識を持ちつつ、そこへ敢えて乗り込んで行った偉さ。だからこそ雇用した運転手(モーテンセン)からも結局はレスペクトを得たのだ。
2)“初恋”(監督S.ディキンソン 1951年イギリス)
主演ヴァレンテ・コルテーゼ。ご存じのオードリー・ヘップバーンが“ローマの休日”に抜擢される直前のイギリス時代最後の作品。脇役なので影が薄いが彼女の初々しさが良く出ていて、バレリーナとしても躍動しています。内容は設定が1930年代で、よくあるレジスタンスがらみの映画でどうという事もない。
3)“三人の妻への手紙”(A
Letter to Three Wives)(1949年 アメリカ)
筋は面白い。しかし、それよりも、この製作年の1949年(昭和24年)は、日本は敗戦後間もなくで貧乏。アップアップしていた時代。この時アメリカはこの映画に見られるモダンなハイソな生活をしていた、その違いに惨めな思いをさせられた日本人。その劣等感を起爆剤として、日本は奇跡の復興を遂げたのではないか。
2019.3.11 最近読んだ本
1)“面白いほど宇宙がわかる15の言葉”(渡部潤一著 小学館101新書 2012年)
天文学者の著者が旭川に講演に来られた時たまたま手にした1冊。残念ながら、最近は読んでいる時はうむうむと納得しながら頭に入れているつもりだが、読んだ直後振返ると忘れてしまっている。よっぽどでないと印象に残らない。こんなんで良いのか?(自己嫌悪に陥る。)それもあって、著者の渡部さんに悪いがこの欄、空白。章のタイトルだけは記しておきます。「天の川」、「彗星」、「流れ星」、「ブラックホール」など15章。
2)“嘘ばっかり(Tell Tale)”(ジェフリー・アーチャー著 戸田裕之訳 新潮文庫 2018年)
短編集ですが、この人の小説には殆ど殺人等の凄惨なシーンは出て来ない。筋で、つまり“どんでん返し”の様な意表突く筋で勝負している。それが好感持てる。特に印象に残ったのは「駐車場管理人」と「誰が市長を殺したか?」です。「無駄になった1時間」も面白い。
2019.3.10 最近見た映画
“海を飛ぶ夢”(監督:アレハンドロ・アメナーバル2004年・スペイン、フランス合作)
主演:ハビエル・バルデム。海に飛び込み首を骨折し完全な四肢麻痺になった青年の実話に基づいています。自殺願望が強いが麻痺で出来ない。それが叶う最後の時、彼は言う。「自分にも生きる権利はあった。でも事故以来寝たきりで楽しい事は全く無く、ただ義務として生きてきただけだった・・・。」何とも悲しい。
2019年3月 地域タウン紙“せせらぎ”平成31年3月号に掲載
“揺さぶられ症候群”
最近、子供へのいじめ、虐待による死亡事件が続いています。わずか5歳児が「もうおねがい ゆるして ゆるしてください! 」と手書き。何という悲痛な叫びでしょう。「お父さんに暴力を振るわれています。何とかならないでしょうか?」という小学4年女子の助けを乞う訴え。結局二人共死亡しました。何とも悲しい事件です。小さい子供が頼る所はまず親ですが、その親が犯人とは!僕は関連機関の人間でないので外野席からの勝手な推測ですが、取りあえず以下の様に思います。学校や児相、教育委員会、警察あるいは近隣住民にしても、加害者が親であれ何であれ、一人の人間である被害児童を心底、守ろう、守ってあげようという意思、気概が薄いのではないだろうか?と。
所で、揺さぶられ症候群(あるいは揺さぶられっ子症候群)というのをご存じでしょうか。乳幼児は頭部が大きいにも関わらず、首がまだちゃんと座っていないため、あまり揺さぶられると脳内出血や眼底出血を起こし、最悪の場合は(まれですが)死亡する事があります。これを揺さぶられ症候群と言います。ですから乳幼児に虐待の疑いがある時は、眼底検査をして出血が無いかどうかを調べることがあります。お父さん(あるいは、おじいちゃん)、赤ちゃんの「高い、高い」はほどほどに致しましょう。
2019.3.3 最近見た映画
“バルカン特急”(監督A.ヒッチコック。1938年イギリス)
主演:マーガレット・ロックウッド。昔の映画には興味がありよく見ます。若い女性がたまたま車内で懇意になった婦人が突然消えて捜すことになった。しかし周囲の人々に尋ねるが一向に埒が開かない。何故なら実は皆グルだから。これはよくある筋立てですね。しかし、最近、トランプ大統領を筆頭としてフェイクニュースという言葉が流行しています。今後本当に、一般人たる我々はマスコミの、あるいはスマホの記事やニュース等には惑わされない様にしましょう。この映画はコミカルな場面もあり楽しめた。
2019.2.28 公演“三婆”(作:有吉佐和子作。脚色:木幡欣治。劇団文化座、旭川市公会堂)
主演:佐々木愛(本妻)。阿部敦子(妾)。有賀ひろみ(妹)。夫の死により、関連の女性3人(本妻、妾、妹)が同居することになる。観劇前どんなことになるやらと心配していたが、なるほどという結末に。Happy
endと言うべきか。要は「人間なんて一人では寂しい。しかし二人以上集まるとそれなりに気を使わなければならない。中々厄介なもの。」という所か・・・。劇団文化座の十八番の演目らしいです。三婆(さんばば)の女優はそれなりに上手いが、重役役の佐藤哲也が中々良い味の演技をしている。
2019.2.9 最近見た映画
1)“アクアマン”(監督ジェームズ・ワン 2018年アメリカ)
主演:ジェイソン・モノア。とにかくCGによる壮絶な海中での戦闘シーンは凄い。今やこれほどまで出来る時代になったのだ。CGを駆使すればどんな場面でも作れそうだ。
2)“ファーストマン”(監督デイミアン・チャゼル
主演:ライアン・ゴズリング。人類が初めて月面に着陸したあの月からの生中継を見ていた人も多いことでしょう。月面に最初に足跡を残し「単に一人の一歩でなく人類の一歩」という名言を残した宇宙飛行士ニール・アームストロングの半生を描いたドラマです。まず娘を亡くしたことから始まる様に、宇宙映画であるけれども、一宇宙飛行士と家族との物語でもあります。過酷な訓練場面を見せられると、我々常人には出来ないと納得です。
2019.2.9 最近読んだ本
“ダンデライオン”(中田永一著 小学館 2018年)
ある青年がタイムスリップして、自分の過去である子供時代と行き来する話。なかなか読ませる筋書きです。その筋も独特ですが、最終章の殺人犯との闘いの描き方は出色です。
2018.12.24 最近見た映画
“ナチスが最も恐れた男”(監督エスペンサンド&ヨアヒム・ローニング 2008年 ノルウェー)
日本では劇場未公開。出演:アクセル・ヘニー他。第二次世界大戦中、ナチス占領下のノルウェーで反独レジスタンス運動のリーダーとして活躍した、実在の人物マックス・マヌスを描いた映画です。
2018.11.28 最近読んだ本
1)“香港―中国と向き合う自由都市”(倉田徹、チョウ・イクマン著 岩波新書)
香港と言うと我々日本人はまず何を思い浮かべるだろう。世界3大夜景の一つ、映画「慕情」の舞台、アヘン戦争、英国の植民地であったが1997年中国に返還された、という所だろう。更に中国本土とは違い、共産党政治の影響が少なく比較的「自由」な地の様な印象があります。しかしその「自由」を掘り下げると一筋縄では行かない面が多々ある様です。本書は、その香港の「自由」について詳述しています。
2)“美しきイタリア 22の物語”(池上英洋著 光文社新書 2017年)
イタリアの「何らかの事」で由緒ある22の都市を興味深く紹介しています。例えばエルバ島に纏わるナポレオン、噴火で埋もれたポンペイの博物学者、スポレートという街の修道士の禁じられた恋の話など、イタリアに実際に行きたくなってしまいます。何時になるかなあ・・・。ヨーロッパへ行くならイタリアと妻といつも話していますが。
3)“すぐ死ぬんだから”(内館牧子著 講談社)
まず、主人公78才女性の意気軒昂なことを取り上げたい。病院通いも無く健康だが、晴天の霹靂か、亡くなった夫が30数年間、別に家庭を持っていたことが判明する。人は自分が健康であろうが無かろうが、一生、家族も含めた周囲との人間関係に翻弄される。無人島にでも住まない限り、そういう状況からは終生逃れられない。それなら、自分の心赴くまま、好きな様に(勿論、周囲と協調しつつ)生きるのも選択肢の一つとなるだろう。
2018年11月地域タウン紙“せせらぎ”の平成30年11月号
“自分が納得するまで!”
9月6日未明に起きた地震による停電。皆様もご苦労されたかと思います。僕の所は断水も起き、翌朝電気は復旧しましたが電気の無いのが如何に不便か、改めて思い知らされました。今まで旭川は停電しても精々数時間で回復したので高を括っていました。ましてや道内一斉のブラックアウトとは。災害での避難所生活などは全くの他人事と思っており、停電が数日間続くなどは想像したくありません。
所で、最近またノーベル医学賞に日本人の本庶佑さんが受賞しました。以前から候補に挙がっていた“知る人ぞ知る”著名な先生の様ですね。その先生が会見で「教科書を信ずるな」とおっしゃっていました。これは、要は「何事も鵜呑みにするな。自分が納得するまで、得心するまで調べろ。確かめろ。」という事だと思います。僕も白内障の手術を沢山してきましたが手術は上手く出来ているのに、“視力が出ない、”「よく見えない」という場合が稀にあります。脳腫瘍(下垂体腫瘍)による半盲で見えなかった等という患者さんもいらっしゃいました。医療に限らず、日常生活でも上述の様な姿勢は大事でしょう。
2018.11.7 “蜜柑とゆううつ-茨木のり子異聞”(グループる・ばる。さよなら身終い公演。旭川市公会堂)
茨木のり子という女流詩人については、不勉強にてよく知りません。戦後、日本の女流詩人として、その先頭に立ってきた人らしい。この劇はよくある様式だが、3人の女性を彼女のGhostとして登場させ、彼女の人生を回顧しながらドラマは進行する。松金よね子が主人公で、その周りを木野花や岡本麗などベテラン陣が脇を固め、安心して見ていられた。作者の長田育恵は、要は茨木のり子が夫亡き後、いかにして自分の詩心をリセットし、かつ醸成させたかを描きたかったのだろう。岡本麗が時折り下ネタで息抜きさせ好演している。
2018.10.6 最近読んだ本
1)“こころ傷んでたえがたき日に”(上原隆著 幻冬舎 2018年)
市井の色々な人にインタビューして、彼ら各自が抱えている生き様を描く。村上春樹夫妻がジャズ喫茶を開いていた時のお客であった人の話しも出てくる。
2)“マリア・シャラポア自伝”(マリア・シャラポア著 金井真弓訳 文藝春秋社)
彼女が4歳の頃から、父と二人三脚で(表現が悪いが)テニス漬けの生活を送ってきたことがよく書かれています。6歳でアメリカに渡った。以来、各クラブや多くのコーチと交わり、当然色んな事があったがウインブルドン等のグランドスラムを5回獲得、18歳で世界ランキング1位となった。とにかく勝っても負けても練習、練習の日々だ!そしてこれほどの成績を挙げているのに「まだテニスを続けるのはどうして?」と聞かれ、彼女はこう言った―「皆を倒すため!」。これには脱帽です。最後に最近のドーピング疑惑についても書いている。長年続けているサプリメントの成分が該当したのだが、よく周知させないWADA(世界アンチ・ドーピング機構)も良くない。訳文が上手で読み易い。
2018.10.14 藤原真理チェロリサイタル(旭川市大雪クリスタルホール。ピアノ:倉戸テル)
久しぶりに生で聴くチェロの音色は良かった。彼女の演奏だから良かったのかも。ベートーヴェン作曲“ヘンデルの「見よ勇者は帰る」変奏曲”はよくスポーツ表彰式で聴く馴染みのもの。他に良かったのがシューマン作曲“民謡風小品”。五つの小品からなりそれぞれ雰囲気があった。単調な曲もあったが全7曲退屈せず、良い時間を過ごせた。この著名な人の割に観客が少なかったのは残念です。
2018.9.29
映画“わが母の記”(監督:原田眞人 2012年)
出演:別所広司、樹木希林、宮崎あおい、他。文化勲章受賞の小説家井上靖(旭川市出身)の自伝的小説の映画化。自分が母親から遠ざけられていた(と思っていた)子供時代。その母が老いて引き取ることになった。その母と息子のすれ違った想いが徐々に近づいて来る。最近、その母親役の樹木希林が亡くなった。彼女は本当に独特の個性を持つ余人に代え難い名女優だった。あの様な方はもう出ないのでないか。合掌。
2018.9.17“再び、この地を踏まず。異説・野口英世物語”(旭川市民劇場9月例会 旭川市公会堂)
作:マキノ・ノゾミ。主演:今井明彦。人間誰でもそうだが裏があるだろう。我々は有名な人物の表面上の事しか知らない。勿論、野口英世が斯様なまでに浪費家、遊び人だったのかは全て鵜呑みには出来ないが、それに近い人物ではあったのだろう。医学史上画期的な発見をした人物である事は否定しない。しかし、それはそれとして、やはり人間として他人に迷惑をかけず、人としての品位を保ちつつ生涯を全うしたいものだ。
2018.9.18 “銀河鉄道の父”(門井慶喜著 講談社)
この本は宮沢賢治の父というより宮沢家全体に焦点を当てている。どこの家庭でもそうだろうが色々あったのだ。そして、人となりはあくまで周囲の交際した人にしか解らず、その人の死後、世にいつまでも残るのは業績なのだ。
話は飛ぶが、上の“野口英世”の項に述べたことに通じることだが、宮沢賢治のあの“雨ニモマケズ、風ニモマケズ”の詩が僕は最高に好きだ。確かにあの詩の様な人間になりたいと僕は思っている。
2018.9.18 “羽州街道、佐渡の道。街道をゆく №10“(司馬遼太郎著 朝日文庫)
佐渡金山のことが知りたく読んで見た。佐渡奉行として川路聖摸や佐渡金銀山の礎を作り上げた大久保長安の名が出ています。また“辻藤左衛門の小比叡騒動”を詳述していますが、「良い人間が多数自害せざるを得なかった」という悲劇的な人間社会の不条理が見えて悲しい。
2018.8.11 お盆恒例道内ぶらり旅“余市町探訪”
今回は以前からの願望であったニッカの余市蒸留所を見に行った。予想通り、観光客も多く蒸留所に歴史が感じられた。創始者竹鶴政孝夫妻の自宅も見られ感慨深いものがあった。異国の地で夫と過ごしたリタ夫人には頭が下がる思いである。フゴッペ洞窟は続縄文時代の古代人が彫った岸壁彫刻です。余市のリンゴジュースの美味しかったこと!早速お土産とした。
2018.8.6 “On7 その顔、熱線に焼かれ”(作:古川健 演出:日澤雄介 旭川市民劇場8月例会 旭川市公会堂)
原爆で顔にケロイドが残った女子(原爆乙女と言われた)7名が治療のため1955年アメリカに渡る。彼女ら仲間内で苦悩や逡巡があったであろうことは予測がつく。しかし、見終わって感動と言うか心に残るものが無いのはなぜだろう。余りに各自の自己主張が多すぎたのではないか。
2018.7.16“渡部潤一先生の講演”(国立天文台副台長&教授。天文学者 旭川市 科学館サイパルにて)
専門の太陽系や数年前一躍有名になったはやぶさ1、今回のはやぶさ2についての話しです。驚いたのは出席者の多くが僕と同じ位の年配者が多かったことです!もっと子供達や若者が来ていると思っていました。
2018.7.8 最近読んだ本
1)“ファミリー・ライフ”(アキール・シャルマ作 小野正嗣訳 新潮社 2018年)
父母と子二人(小中学生の兄弟)のインド人4人家族が米国の同国人らがタウンを形成する街へ移住する。優秀だった兄が事故から脳を傷害しほぼ意識もない寝たきりになってしまう。家族が障碍者の兄を良く介護する話が広まる。弟は難関大学へ入る。弟の視点から語られる内容は、近隣との軋轢や妬み、羨望等の人間社会ではどうしても不可避の事柄だ。弟たる著者の自伝的長編。(フォリオ賞。国際IMPACダブリン文学賞受賞)
2)“悲しみの処方箋“(小山明子、鳥越俊太郎、永六輔、他多数。主婦の友社 2018年)
芸能人や知識人が伴侶や家族を亡くしたことや闘病経験を語っています。
2018.7.1 “眼の不思議発見” №53「緑内障の謎」
近くの公園の桜も咲き、当院の庭のチューリップや水仙も今年もきれいに開花しました。冬の寒さに耐え、地中でじっとしていた球根が毎春開花する事に、実際に自分が植えたということもあり感動している一人です。また最近、北辛夷の下枝が邪魔になったので、数本切ってそのま土に植えて見ましたが、家内はまず水に漬けて根を出さないとダメと言っております。どうなるやら観察中です。
ところで緑内障というと「怖いもの」、「いずれ失明してしまう病気」というイメージがあります。しかし緑内障は眼の硬さである眼圧(眼内圧)を点眼薬によって低下させることで、多くの方はある程度は悪化してもそれなりに視機能を保って、ADL(日常生活動作)に支障なく生涯を全うすることが出来ます。しかし、中には残念ながら点眼薬や手術によって眼圧が十分下がっているにも関わらず、視野狭窄が悪化しひどくなる患者さんが稀にいらっしゃいます。これが「緑内障の謎」で、眼圧とは関係なく視神経の血液循環というか血流が悪いのではないか等研究されている所です。
これから北海道は梅雨もなく最高に良い季節になります。眼科は高齢の方が多く、「体のあちこちが痛くなった」、「どこそこを手術した」、中には「癌が見つかった」等話す患者さんが沢山いらっしゃいます。僕も古希が目前です。人生は一度切り。無理しない範囲で何でもトライしてみましょう。(タウン紙“せせらぎタウン”平成30年6月号に掲載されました。)
2018.6.30 “ミケランジェロと理想の身体”展(国立西洋美術館 2018.6.19~9.24 東京)
彫刻家ミケランジェロ。彫刻での人体表現で彼に歴史上勝る人はいないでしょう。しかし今回展示の“若き洗礼者ヨハネ”像には、表現にミケランジェロの若さによる優しさが見えるのはぼくだけでしょうか。残念ながら、あの有名な“ダビデ像”はイタリアの国宝でしょうか、門外不出。展示されていません。
2018.6.30 “安楽病棟”(劇団青年座 第232回公演 原作 帚木蓬生 本多劇場)
一精神科医が彼の人生哲学に基づき、数人の重度認知症患者を故意に殺す。それを見つけた看護師が問い詰める―「先生は間違っている」と。あのドストエフスキーの“罪と罰”も類似で青年が老女を殺すことから始まる。多くの老練な俳優陣が出演するが、その認知症の演技は極めてお上手! 当院にも重度の認知症の方々が眼疾で受診します。患者たる彼ら彼女らが、どの程度自分や周囲の状況を理解しているのか・・・?
2018.6.20“ベルリン交響楽団 公演”(旭川市文化会館)
指揮:リオール・シャンバダール。ピアノ:エフゲニー・ミハイロフ
曲目①シューベルト“交響曲7番 未完成”②ベートーベン“ピアノ協奏曲第5番 皇帝”③ベートーベン“交響曲5番 運命”
(著名なベルリンフィルとは別のオーケストラです。)“未完成”は迫力が無くがっかりさせられた。しかし“運命”は良かったし、ピアノ協奏曲を弾いたミハイロフも良かった。知人(特にDr)が多数来ていた(旭川市にはオーケストラは中々来ないので・・)。隣席が懇意にしているDr夫妻でした。
2018.6.19“しあわせの雨傘 飾り壺”(作:ピーエール・バリエ&ジャン・グレディ 旭川市民劇場例会 旭川市公会堂)
主演:賀来千香子。他に井上純一、遠野凪子、永島敏行。大きな工場の社長夫人が、従業員のストライキを切っ掛けに社長になってしまう。最後はその夫人の大いなる、かつ尊敬に値する気構えに皆、圧倒される。主人である社長とその秘書は愛人関係にあり、かつまた夫人も過去に火遊びあり等を嫌味なくコメディタッチに織り交ぜ良い劇に仕上がっています。それにしても、余談だが賀来千香子の抜群のスタイルに瞠目し、また女優としての実力に再認識させられた。
2018.6.8 最近見た映画
1)“スターウオーズ 最後のジュダイ ”(ライアン・ジョンソン監督 2017年 アメリカ)
2)“The shape of water”(ギレルモ・デル・トロ監督 2017年 アメリカ)
主演:サリー・ホーキンス。唖の女性と水陸両生の動物(外見は河童よりもグロテスクというか気持ち悪い)との恋愛を描いています。非現実的でやや不思議な感じの残る映画ですが、まあ見て下さい。とにかく今年度のアカデミー賞作品賞、美術賞など最多の4冠取っています。
3)“羊と鋼の森”(橋本光二郎監督、宮下奈都原作、2018年)
主演:山崎賢人。他に鈴木亮平、上白石萌音 上白石萌歌。新人の調律師が四苦八苦しながら徐々に成長して行く姿を描いています。どんな職業でも(勿論Drも)、初めから上手には出来ません。先輩から教えてもらい、試行錯誤しながら、ユーザーや(Drであれば)患者さんに少々(?)迷惑をかけて成長して行きます。主演の山崎賢人はまだ素人っぽく、新人調律師の良い味を出しています。また、この映画は当院の所在地、旭川市でロケしています。
2018.6.7 最近読んだ本
1)“祝葬”(久坂部羊著 講談社)
著者はDr。以前もこの方の本を読んだが、その時は余りimpactのあるものでは無かった。しかし、今回の本は中々だ。早死にをする医師一族の話しがstoryの基本だが、それに色んな事件を絡ませ読ませる。今後期待できそう。
2)“椿山課長の七日間”(浅田次郎著 集英社文庫)
奇想天外の筋で全く娯楽に徹した小説です。死者が冥土への途中、その死因によっては一度別の人間になってこの世に戻ることが出来る。やり残した事、悔いている事、不本意な事の実情を見極めるという粗筋です。著者得意のお涙頂戴の部分も大いにあるけれど・・・。初めは勿論何の繋がりの無い登場人物達が、実は過去の人生で繋がっていたということが徐々に露わになるというのが、この小説の一番の読み処かもしれない。
2018.4.29 最近読んだ本
1)“物語 シンガポールの歴史”(岩崎育夫著 中公新書)
市の様なミニ国家シンガポールについて詳説しています。残念ながら特に経済、ビジネス関係についてで、市井の国民の生活ぶりにはあまり触れられていません。副題として「エリート開発主義国家の200年」とあるように、子供時代からエリートを厳格に選抜し、彼らを将来国を任せられる様手厚く育成する姿勢は驚嘆すべきものがあります。そして国をより上等のもの、あるいはプライドある国家を保つべく、社会のルールを厳格にしているのも、その流れの一環でしょう。例えばチューインガム禁止、ポイ捨てに罰則、高いお酒等など。結果的にアジアでは裕福な国の一つとなり高いGDPを保っています。
2018.4.11 最近読んだ本
1)“なぜ?シンガポールは成功し続けることができるのか”(峯山政宏著 彩図社 2018年)
資源のない小国シンガポール、面積は東京23区より若干大きい程度で560万の人口を抱えているが、今や日本を抜いてアジアで最も豊かな国(一人当りのGDP)となった。)(1965年にマレーシアから独立してまだ53年しか経っていない。独立はマレーシアから追放を受けた為で、シンガポールの本意では無かった。)その理由の第一はとにかく建国時のプランが凄い!!教育―中国語やマレー語を話す移民が大多数だったが英語を公用語とすることを徹底した。生徒を選抜してエリートを育て上げた。その受験競争の厳しさは日本の比ではない。物流&貿易―欧米とアジアとの橋渡しとしてハブの役に拘った。
建国の父と言われる初代首相リー・クァンユー。彼は、約50年前マレーシアに追放され仕方なく独立国家になった時、記者会見の場で国民の将来を想い嗚咽する様に泣いた。しかし、この不出世のリーダーはその生涯を懸けて、シンガポールを見事に豊かな国家に変えた。
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2)林檎の樹”(ゴールズワージー著 法村里絵訳 新潮文庫)
ゴールズワージーは1932年ノーベル文学賞を受賞した英国の作家。大学の卒業旅行として訪れた田舎町で出会った数歳下の可憐な女性との、ほんの短い恋を描いている。しかし自分では軽はずみとは思っていない行動が、sensitiveな彼女には大きな約束違反となり悲しい結末をもたらす。それを20数年後、妻とたまたま再訪した同地で知る。その様な結末をもたらさない為には、彼は当時どうすべきだったろうか。「自分のせいで、予想外の良くない事態が自分の知らない処で起きることがある」という事は知っておくべきだろう。
3)“ウールフ、黒い湖”(ヘラ・S・ハーセ著 國森由美子訳 作品社 2017年)
オランダの国民的女性作家で、訳本が出たのも本邦初とのこと。彼女は旧オランダ領東インドのバタヴィア(現インドネシアのジャカルタ)生まれで、20歳まで同地で過ごした。この本も当然著者自身の体験に基づいている。農園の支配人の息子(主人公)と現地人の少年ウールフとの友情、別離、そしてインドネシア独立への世情と相からませて描いている。1948年の発刊時、オランダで大ベストセラーとなり、各家庭に1冊あると言われている。子供にとって世間は狭く、友達や近所が自分の世界の全てで、後年、それに気づき一種の放心状態に陥ることがあるのは誰にもあることだろう・・・。
2018.4.10 茂山千五郎家“狂言”(旭川市民劇場4月例会 旭川市公会堂)
狂言というのを初めて見ました。以前から興味はありましたが、実際に目にして意外と分かり易く面白かったです。まず始めに茂山千五郎氏により狂言について説明があったので、演目にスムースに入って行けました。演目は“清水”と“濯ぎ川”。口上には独特の言い回しがありますが、明瞭に聞き取れました。時間的にも長くなく飽きさせません。
2018.3.18 棟方志功展―“わだば、ゴッホになる”―(道立近代美術館。3月25日まで)
「版画」を彼は「板画」と主張する程、「板」への思い入れがある。見れば分るが、彼の版画はそれまでの版画の常識を“変えている”というか“越えており”、外国の展覧会でグランプリを受賞しているのが十分理解出来る。驚いたのは、版画を絵巻物にして、その中に文章も描いていることだ。是非、実物をご覧頂きたい。
2018.3.17 辻井伸行デビュー10年記念リサイタル(大和証券特別協賛、日本ツアー。札幌Kitara大ホール)
彼にはピアノは体の一部なのだ。そうでなければ、あの様に手指を自在に動かせる訳がない。本人曰く初めクラシックかジャズに進むか迷ったそうだ。しかし、我々にはクラシックを選択してくれて良かったと思う。プログラム後半はガーシュインやカプースチンという作曲家のジャズ風クラシックだったが、技巧的な難曲をあの様によく演奏できるものだ。今更だが改めて感動させられた。
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2018.2.25 最近読んだ本
1)“街道をゆく №32 阿波紀行、紀ノ川流域”(司馬遼太郎著 朝日文庫)
前半の阿波紀行は、鳴門から吉野川沿いに遡って池田町近辺までの街道の印象を書いています。阿波堂浦の漁師が作った白色透明の釣糸テグス(天蚕子)の話しなど興味深い。訪れたことの無い讃岐山脈の山間の町の情景が浮かんでくる。後半は紀州紀ノ川流域。種子島に伝来した2梃の内、1梃は紀州の根来寺の者がもらった話は面白い。
2)“台湾とは何か”(野嶋剛著 ちくま新書)
台湾は、中国が台湾を(極端に言うと)一地方省と考えており、国際的には国家としては認められていない(国連に加盟していないという)微妙な位置にある。しかし、現実には台湾は自立し、国家としての道を歩んでいる。台湾という国はなく政治的には中華民国という。斯様に微妙な立ち位置を著者は詳しく説明しています。二次大戦後、進攻して来た蒋介石の心象はあまり良くないが、1895年から50年に渡って台湾を統治し、現在の文化の大きな源を作った日本への心象は良い。
2018.2.24 最近見た映画
“ダイハード4.0”(レン・ワイズマン監督 2007年)
ブルース・ウイルス主演。娘を救う為ならどこまでも。肉を切らせて骨を断つ!だね。本当に窮地に陥った時はそうするしかないかも。
2018.2.4 最近読んだ本
“夏の沈黙“(ルネ・ナイト著 古賀弥生訳 東京創元社 2015年)
テレビ局の今を時めくキャリアウーマンの自宅に、ある日突然本が届く。そこには20年前彼女に起きた忌まわしい、出来れば一生隠して置きたい、彼女しか知らないはずの過去が暴露されていた。その思い出したくない事件?事故?で一人の若者が死んでいる。その本を切っ掛けに、彼女の家族や本を送り付けてきた、亡くなった若者の両親が崩壊していく。
斯様に世の中、ある限られた情報だけを鵜呑みにして、周囲の人々が頭の中でstoryを作ってしまう。当事者は弁明する機会も与えられず、敵意を持たれ、家を追い出され、そして誰かの自殺を引き起こす。こういう事は決して少なくないだろう。
2018.1.18 最近見た映画
1)“ゼロの焦点”(監督:犬童一心 原作:松本清張 2009
年)
主演:広末涼子。中谷美紀、木村多江、西嶋秀俊、他。終戦直後、連合軍の軍人相手に“パイパン”と呼ばれ売春をしていた日本の女性二人。数十年後、その過去を知る男と偶然巡りあう。それは運命の悪戯か?周囲の人間をも巻き込み悲惨な末路を辿る。実に清張は社会の裏、暗部、恥部を絶妙に描きだす天才だ。残念だがこの点に関し、今の日本に匹敵する能力の作家は見当たらない。下山事件や帝銀事件を扱った作品も然り。
2)“オリエント急行殺人事件”(原作 アガサ・クリスティー 監督・主演ケネス・ブラナー 2017年アメリカ作品)
ジョニー・ディップも共演。筋はよく知られていますので書きません。殺人が如何に被害者の家族だけでなく、被害者周辺の人々の恨みを買うことになるか、この物語を見ると恐ろしい程ですね。普通の人々が残忍な方法で犯人に復讐する。それはさておき、この映画、雪の山岳風景など景色が最高に素晴らしい。
2017.12.6 最近読んだ本
“日本と台湾―なぜ、両国は運命共同体なのか“(加瀬英明著 祥伝社新書)
台湾という、僕あるいは多くの日本国民に取っては近くて遠い国が、現在国際的にどういう立場にあるのか、とか日本政府の対台湾外交の問題など詳しく書かれています。国際的には未だ台湾は「国」と呼ぶ事は出来ないそうです。著者は鋭く日本政府あるいはアメリカを糾弾しています。
2017.12.4 演劇“七人の墓友”(劇団俳優座。作:鈴木 聡 旭川市民劇場12月例会 市公会堂にて)
出演:清水直子、青山眉子、小笠原良知、他。これは今や日本中で考慮されているタイムリーな題材ですね。お墓詣りに行くかどうか分からない現代の子供達。お墓が単に家族のお荷物でしかなくなる日がいずれ来るでしょう。散骨が人気が出てきている昨今です。墓友になった妻を受け入れる家族、受け入れられない夫。しかし、この微妙な問題を上手く楽しく纏め上げた作家の鈴木聡さんには敬意を表します。
2017.11.20 最近読んだ本
1)“シャーロック・ホームズの事件簿“(アーサー・コナン・ドイル著 日暮雅通訳 光文社文庫)
特に“サセックスの吸血鬼”は題名に全くそぐわない、非常に人間的なお話です。是非読んで下さい。他に“白面の兵士”や“ヴェールの下宿人”などは疾病や外傷をテーマにしていて人の琴線に触れるものがある。
2)“ムシェ 小さな英雄の物語“(キルメン・ウリベ著 金子奈美訳 白水社)
1937年スペイン内戦下、バスク地方の疎開児童を受け入れたベルギーの文学青年ロベール・ムシュ一家。しかし、第二次大戦でナチに囚われ強制収容所行きに。悲しい半ノンフィクション小説だが、残った妻の胸中と共に胸に迫るものがある。この様な戦争下の悲劇的状況は、我々が知らないだけで無数にあったことだろう・・・・。
3)“嗤う名医”(久坂部羊著 集英社文庫)
医師である作家。この1作しか僕は読んでいませんが、残念ながら、これという感激、感動は持てなかった。
2017.10.25 “蟹工船”(旭川市民劇場10月例会。東京芸術座。旭川市公会堂にて)
原作:小林多喜二。脚色:大垣肇。恥ずかしながら原作を読んだことがありません。小林多喜二が特高警察に逮捕され虐待死という事しか知りません。劇は重労働を強いられ劣悪な環境下の蟹工船の漁夫達が、監督らの使用者に対し立ち上がるまでを描いています。しかし、舞台の何らかの環境のせいか言葉の端々が聞き取り辛かったのは僕だけだったのでしょうか。殆ど男ばかりの出演者達の熱演にも関わらず、見終わり、こういう事実があったという事は了解出来たけれど、余韻というか考えさせられる程の感動は無かった。
2017.10.3 最近読んだ本
1)“ラッフルズ・ホーの奇蹟”(コナン・ドイル著 北原直彦・西崎憲訳 創元推理文庫)
コナン・ドイルはシャーロック・ホームズしかないと世間で思われています。確かに人生論的というか哲学的な内容は余りなく娯楽的要素が大部分だが、その奇想天外な発想、アイデア、筋立てには脱帽です。
2)“こころ”(夏目漱石著 角川文庫)
恥ずかしながら、漱石のこの名作を初めて読みました。難しい言い回しも無く読み易いが、その内容は深い。
3)“影裏(えいり)”(沼田真佑著 文藝春秋)
第一作が芥川賞を取ったということで読んでみた。申し訳ないが、大した感想はありません。
4)“ひとりの記憶―海の向こうの戦争と、生きぬいた人たち”(橋口譲二著 文藝春秋)
先の大戦前後、男女問わず、日本に帰れず残った人の何と多い事か?アジア以外のロシア、カナダ、キュ―バなどにも居り、10人の人を紹介している。その辿った苦労の内容は千差万別だが、楽に暮らした人はいない。各人の取材当時の写真を掲載しており、その顔の深い皺や苦労が滲んだ風貌には他人に何も言わせない力がある・・・・。
2017.9.6 音楽劇“秋に咲く桜のような”(スタミナや&イッツフォーリーズ公演 作:堤泰之、演出:田上ひろし。旭川市公会堂)
過疎化に悩む町が舞台。何とかしたいと模索する町民達。イッツフォーリーズはミュージカルを専門とする劇団とのことで皆、声量があり歌唱力はばっちりでした。器楽演奏がちょっと頂けないのはご愛嬌だが、茂木沙月のリズム感ある小太鼓と勝部祐子のトランペットは良かった。見終わって疲れが飛び気分が明るくなった。人は人と繋がりを持ちつつ喜怒哀楽して生きていく、それが人生というものなのだろう。それを目の前で見せてくれた。
フィナーレでの全員演奏。これがまた楽しい!
2017.9.2 ゴッホ展(北海道立近代美術館、札幌)
ゴッホは日本では人気があるが諸外国ではどうなのだろう。ゴッホは生前はあまり知られていなかった様だ。しかし、その筆使いは独特で一筆が太くこってりしているのが特徴だろう。今回の展示の中では良かったのは“画家としての自画像”と“寝室“かな。
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以前から日本画が好きで見てきました。三代に渡る日本画家で、女性初の文化勲章を受けた母の松園は女性美を、松篁、淳之は花鳥画を探求しています。松園の“楊貴妃”、松篁が自分の幼子を描いた“春雨”は最高ですね。
2017・8・11(金) お盆恒例“道内ぶらり旅”(今回は道東探訪) 帯広→
今年は道東にしました。一番の目的は北方四島を見てみたい!ということ。帯広の入口、清水町の“十勝千年の森”で庭やチーズの手作り工房を見、セグウエイに乗ってみた。昨年の豪雨でコンクリート橋の半分が破壊されたまま残っていた。
2017・8・12(土)
十勝川温泉付近の十勝が丘展望台から十勝平野を一望した。丹頂鶴自然公園では丹頂鶴の夫婦や親子をじっくり見れた。厚岸では厚岸湾を見ながら、道の駅“コンキリエ”で生牡蠣を味わった。
はるばる根室にやって来た。長時間の運転で肩は凝るし頭痛も。ゆっくりホテルで休みたい。
2017・8・13(日)
納沙布(ノサップ)岬では残念ながら霧で全く島は見えず。北方館で多くの資料や写真を見せてもらった。次いで“春国岱(しゅんくにたい)”という大きな砂州を見学。遠くに(望遠鏡でだが)えぞ鹿の家族、子鹿もいた。
2017・8・14(月)
阿寒湖はマリモで有名だが、それを展示している阿寒エコミュージアムを見学。ここには幻の淡水魚イトウもいた。仕事柄、魚も白内障になるのを確認した。泥と水が地中からプクプク噴き出す硫黄臭の沼“ボッケ”も見た。やはり火山帯なのだ。
2017.7.15 最近読んだ本
1)“中国人とアメリカ人”(遠藤滋著 文春新書)
この著者の経歴はすごい。自分が知らないだけかもしれないが、こういうキャリアの人が日本人としてどれだけいるのか?
2)“素敵な日本人”(東野圭吾著 光文社)
どの短編も読ませてくれ、気分転換にぴったり。
3)“絶望している暇はない―「左手のピアニスト」の超前向き思考”(館野泉著 小学館)
以前私ら夫婦、この人のファンクラブに入っていて、実際に館野ご夫妻に会っております。今回、右手が効かなくなり左手のピアニストとして脚光を浴びています。ある意味、脱帽ですね。
4)“猟銃・闘牛”(井上靖著 新潮文庫)
この人の作品多くは読んでませんが、殺人とかそういうテーマでなく好感持てます。猟銃は不倫が題材だけれど闘牛は会社員のイベント興業のため苦心、努力する姿を描いている。
2017.7.13 演劇“みすてられた島”(中津留章仁作 青年劇場)旭川市民劇場7月例会 旭川市公会堂
テーマは堅いけれど、適度に(あるいは必要以上に?)男女関係の話が織り交ざっており、それなり楽しめました。しかし、劇だから仕方ないけれど、会話場面というか(政治絡みのテーマですから島民VIPによる)discussionが多く、話について行くのが少々大変でした。島長夫人の藤木久美子が笑いを呼ぶ役で好演。
2017.7.1 最近見た映画
“オリエント急行殺人事件”
皆さん、よく御存じのアガサ・クリスティの作品。しかし、作家というものはよくこういう意外な粗筋を思いつくものだ。いつも感心します。
2017.5.10 演劇“Be My Baby いとしのベイビー”(旭川市公会堂、原作:ケン・ラドウイッグ 訳:小田島恒志&小田島則子 演出:鵜山仁 出演:加藤健一、阿知波悟美など)
始めは、若夫婦が養子にした赤ちゃんに四苦八苦するコメディかと思っていたが、意外な展開で良い方向に裏切られ面白かった! 加藤健一と阿知波悟美が良い演技をしている。特に加藤はアドリブかと思わせる箇所も多く、それが大仰でなく好感が持てた。公会堂はほぼ満員で、マナーも良かった(2月の公演では携帯電話の会話がありひどかった様だ)。2013年初演で「日本の喜劇史に新たな名コンビが誕生」と絶賛されたそうだが頷ける。他の脇役4名の若手の演技がわざとらしいが、コメディだし舞台が英国という外国なので、これ位でないとメリハリが効かず許される範囲だろう。
2017.5.3 最近読んだ本
1)“アウシュビッツを志願した男 ポーランド軍大尉ヴィトルト・ピレツキは三度死ぬ”(小林公二著 講談社 2015年)
読んでナチスの収容所での凄惨さを改めて思い知らされた!若い母親の目の前でBabyの頭を壁に打ちつけて殺すなど。読むに耐えられない。ピレツキが仲間二人と収容所を脱走する場面は映画を見ている様だ。ピレツキはあくまでも祖国ポーランドの自由を望んでいたに過ぎないが、大戦後の1948年、スターリン体制下のポーランドにより死刑を執行された。しかし、1990年その死刑判決は無効とされ、彼の名誉は回復し、現在ポーランドの英雄として顕彰されている。
2)“富良野風話 日本人として“(倉本聰著 財界研究所刊 2015年)
今、昼の連続ドラマ“やすらぎの郷”で話題の倉本聰のエッセイです。2011年の三陸沖大地震の直後から書き起こしたものです。内容は日々の日本の世相を見て意見を述べています。政治や原発に関することが比較的多いですが、良識ある日本人ならほぼ納得できる意見が多いです。この人は過去、テレビの脚本作りで番組担当者と色々あったようですが、それはそれ。
2017.4.10 最近見た映画
1) “博士の愛した数式“(小泉堯史監督 2006年)
寺尾聰、深津絵里出演。
認知症なのだろうが、こういう先生も現実にいるだろう。深い心の傷があるようだ。
2) “ロックダウン”(アイバン・シルベストリニ監督 2016年) カタリーナ・ボウデン主演
途中、どうなるかと思った・・・・。しかし、あの崖から車を突き落したのは何故なのか?
3) “蒲田行進曲”(深作欣二監督 1982年)
松坂慶子、平田満、風間杜夫出演。平田満が良い演技をしている。松坂慶子は色んな役が出来るね。
4) “ジャックと天空の巨人”(ブライアン・シンガー監督 2013年)
ニコラス・ホルト、エレノア・トムリンソン出演。
2017.4.9 最近読んだ本
1) “なぜイギリス人は貯金500万円で幸せに暮らせるのか?”(井形慶子著講談社)
最近、自分のRetire後の過ごし方を時々考える様になりました。子供達の世話になる気はないので、「夫婦二人して、限られた財源の中でいかに快適に過ごしていくか?」ですね。でも、この本、余り参考にならなかった。
2) “月のしずく“(浅田次郎著 文春文庫)
短編集です。周知の通り、浅田次郎の文面は読みやすく、僕と同世代のため違和感なく内容に入っていける。特に“花や今宵”。 こういう事は、現実にはまず無いであろうが読後感が良い。
3) “十津川街道” (司馬遼太郎著 “街道をゆく№12” 朝日文庫)
奈良県十津川村の住民が、北海道の新十津川町に移住した経緯がよくわかります。十津川村は古来、天領で税が一切無い免租地であった事等、新発見が多数あります。大阪から南下し、まず五條市から書きだされているが、そこから十津川村まではかなり険しい道である。
4) “人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日” (トム・ミッチェル著 矢沢聖子訳 ハーパーコリンズ・ジャパン刊)
まずペンギンをペットとして飼うことがeccentricなことである。しかし切っ掛けが、重油にまみれていたのを助けたことに始まるので、不自然ではない。本来群れとして生きる動物なので、このペンギンにとって幸せだったのかどうか、知りようも無い。しかし、少なくとも周りの人たちに可愛がられ、不幸せだったとは思えない。題名でこのペンギンが著者の「人生を変えてくれた」とあり、著者がこのペンギンに感謝していることは間違いない。
2017.2.5 最近読んだ本
1)“すごいお母さん、EUの大統領と会う”(尾崎美恵著 文芸春秋)
このお母さん、すごい!!こんな積極性が僕にもあれば、今の人生、もっと違ったものになっていただろう。
2)“最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常”(二宮敦人著 新潮社)
確かに芸術家(の卵ではあるが)なので、作り上げたもの(絵画であれ音楽であれ)がどうかという事が最も大事なのである。普通の学校と違い、授業がどうかとか単位がどうかではない。従って、科や専攻によっては1年に数日の出席日数でも良い処があるそうだ。極端に言うといつ、どこにいるかも不明な学生もいるらしい・・・。
3) “コーヒーが冷めないうちに” (川口俊和著 サンマーク出版)
内容も読後感も良かった。まず、タイムトラベルが出来る喫茶店という設定が面白く、最終第4話の“親子”は秀逸。僕にとっては久々に(しばらく無かった)涙した作品。
2017.1.28 最近見た映画
1)“マイ・インターン”(ナンシー・マイヤーズ監督 2015年)
2)“ハドソン川の奇跡”(クリント・イーストウッド監督 2016年 アメリカ)
圧巻は、国家運輸安全委員会の公聴会。機長が人的要件に言及したのはまさに的を得ている。人間の関わること、殆ど皆その通りだろう。
2017.1.26 最近読んだ本
“クリスマス・キャロル”(チャールズ・ディケンズ著 村岡花子訳 新潮文庫)
有名な小説(中編)ですね。多くの人は子供時代に読んでいるかと思いますが、今回初めて読みました。幽霊が登場する童話という感じです。確かに、天から俯瞰すると、自分がどんな感じの人間であって、どんな人間模様の中で暮らしているのか、同時進行で見れるという事は興味深いですね。
2017.1.22 富良野GROUP 公演“走る”(倉本聰監督 富良野演劇工場)
2017.1.2 最近見た映画
1)“ベン・ハー”(フレッド・ニブロ監督 1925年 サイレンント)
主演ラモン・ノヴァロ。言わずと知れた名作ですが、これはチャールトン・ヘストン主演のremake版(1959年)ではなく昔のもの(しかし、実は昔1907年、明治40年に短編ですが最初のベンハーが撮られています)。戦車競争の場面はremake版に劣らず迫力があります。ただ、映画全体はサイレントなので地味で、ただ筋を展開している様で物足りない。筋は全くご承知の通り、というかremake版がこれと全く同じに作ったとのことです。
2)“狼たちの午後”(シドニー・ルメット監督 1975年)
あの“ゴッドファーザー”のアル・パチーノの出世作。彼の犯人役としての迫真の演技が評価された様だ。人間として最低限の節度を守ろうとしている銀行強盗の青年をよく演じている。最後、飛行機に乗らんとする車内のシーンは見逃せない。
2017.1.2 最近読んだ本
1)“倉本聰 ドラマ人生”(倉本聰 北海道新聞社 2013年)
倉本聰が東京から富良野来るまでの話やあの国民に感動与えたドラマ“北の国から”制作に纏わる秘話等を克明に、倉本の聞き書きで本にしたもの。倉本聰の性格がよく描出されています。多数の名作ドラマを世に送り出し、確かに脚本家としては一流と思う。あのドラマも倉本作品かと!と。しかし独特の個性、妥協しないというか、相手のことをあまり考えず自分の流儀で事を推し進める傾向は否定できず、それで敵を作ってしまったこともある様だ。しかし、それによる体験がまた彼の肥やしになってしまうのだ。
2)“誰も教えてくれない男の礼儀作法”(小笠原敬承斎著 光文社新書 2010年)
宴席等人が集う所ではそれなりの作法というものがある。根本は、礼儀作法を守りつつ、かつその場で他の人たちに迷惑を掛けない様、嫌悪感を与えぬ様、そして自分も含めて楽しく過ごせる様な気遣いが肝要ということだろう。だから宴会などでの振る舞い方は、意外と難しいものなのである。
3)“コンビニ人間”(村田沙耶香著 文芸春秋刊 2016年)
2016年第155回芥川賞受賞作。面白くて一気に読んだ。しかし、主人公の女性のcharacterは常軌を逸しているというか筋がずれており現実的でないと思う。ただ読んだというだけで、単なる娯楽作品ですね。
2016.11.30 立派な棕櫚(シュロ)と蘇鉄(ソテツ)を戴きました!
先日、患者さんのTご夫妻から、自宅で長年育てられていた南国の木、棕櫚(シュロ)と蘇鉄(ソテツ)を戴きました。嬉しいのですが、立派過ぎて枯らさない様気を付けて行きます。
2016.11.27 最近読んだ本
1)“家族という病2”(下重暁子著 幻冬舎新書)
世の中の最小生活単位。「たかが家族」ではなく、「やはり家族」だろう。生きて行く上で大切であり、頼るのは家族。しかし「親しき仲にも礼儀あり」で、甘えも良くない。
2)“世間とは何か”(阿部謹也著 講談社現代新書)
世間という語について、明治以降は社会という言葉が出来た。兼好法師、親鸞、井原西鶴、夏目漱石、永井荷風らの作品に描かれた世間を詳述している。
3)“母さん ごめん もう無理だ”(朝日新聞社会部著 幻冬舎)
裁判を傍聴して、犯罪者の動機等で生の言葉を露わにした。各事例千差万別。後悔先に立たず。犯行後に後悔してもダメ、遅い。
4)“御広敷用人 大奥記録(十) 情愛の奸”(上田秀人著 光文社)
本当に久しぶりに時代小説を読んだ。ただの娯楽読み物だがそれなりに面白かった。昔、東映の時代劇映画が全盛の頃を思い出す。ファンだった大川橋蔵や、片岡千恵蔵、市川歌右衛門、東千代之介、月形龍乃介、中村錦之助、大友柳太郎等々。あれから50年か・・・!隔世の感がある。
5)“白衣の嘘”(長岡弘樹著 角川書店)
この未だおそらくそれ程著名でない47才の作家は才能が有りそうだ。なかなかの小説、これはすべて短編であるが読ませる。タイトルから分る様に医療系の内容だが、医者ではない(社会学部卒)。
2016.10.22 最近読んだ本
“15のわけあり小説”(ジェフリー・アーチャー著 新潮文庫)
有名な英国の政治家でありベストセラー作家の様ですが恥ずかしながら初めて読みました。その内容の意外性というかどんでん返しに私は嬉々としております。特に「満室?」、「ブラインド・デート」とか、実話に基づく「メンバーズ・オンリー」や「女王陛下からの祝電」など。アーチャーは何かヒントがあれば、5分で粗筋が作れると話していて自信家の様だ。
2016.10.20.最近見た映画
1)“タクシードライバー”(マーティン・スコセッシ監督 1976年)
主演:ロバート・デニーロ 有名な映画である。このタクシードライバーの常軌を逸した正義感は肯定できない。当時13歳のジョディー・フォスターが娼婦役で出ているのは驚き。
2)“博士の異常な愛情”(スタンリー・キューブリック監督 1964年)
ピーター・セラーズが3役を演じている。冷戦時代の核についての大ブラック・コメディ。
3)“グッド・ウイル・ハンティング”(ガス・ヴァン・サント監督 1997年)
主演マット・デイモン、名優ロビン・ウィリアムス。脚本がマット・デイモンと親友を演じたベン・アフレックによるものというのも面白い。現実にはありえない様な話だが、劇中でも述べられているように、あのアインシュタインも実はスイス特許庁の一技術者に過ぎなかった。
2016.10.20 “生きそびれる?”
開業以来20年経ちました。勤務医には無い開業医の色んな事は、もう多くの先生方がこの欄で書きつくしていますので、触れないことにしました。となると、他に特に記す事もありませんが、先日、有名な解剖学者、養老孟司先生がちょっと気になる話をしておりましたので、ここに取り上げて見ます。
その題は “生きそびれる?”です。どういう事かと申しますと、養老先生の虫好きはもう皆さんご存知のことと思います。会合でも、虫の話をし出すと止まらないので禁止となっています。子供の頃から昆虫採集が趣味で、今でも標本作りの時間は至福の時で、没頭して寝食を忘れるそうです。つまり、寝食を忘れるほど没頭する時間は、本人は“おお、自分は生きているんだ!”ということを実体験している時です。しかし現実は人皆、日々、仕事に追われ、人間関係に気を遣いながら生きています。
明治時代の文豪、夏目漱石でさえも「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。兎角に人の世は住みにくい。」と言っています。そうして1日が終わり、1か月そして1年経ち2年経ちます。そして、振り返って、「ああ、もう○年経ったのだ。時が経つのは早いね」などとお茶を濁しています。その○年は“本当に生きた!”と言える時間だったのでしょうか?僕に限らず思い当たる先生も少なくないのでは。本当にそれでいいんですか? 自分の人生、全てを忘れ“自分は生きている!”という実感を持った時がどれ位ありましたか?“後悔先に立たず”の人生ではありませんか? と、そういうことを養老先生は“生きそびれている”と表現し、我々に警告を発しているのだと思います。
私も現在65才。残る私の人生も、いつ癌等の病気になるかも知れず、健康寿命として良い所20年あるかどうか。丁度、開業して現在までと同じ時間です。人生最後の時、「(子供、親、仕事、趣味、友人関係等全て含めて)ああ生きて良かった。自分の人生に悔いは無い。」と大いにsatisfiedしていたら良いですね。
という様な事を最近、よく考えます。しかし、何を言っても、何をするにしても、まずは健康でないと始まりませんが。(旭川医大眼科同門会誌 第26号、平成28年)
2016.10.9 神田一明個展(旭川市 ヒラマ画廊 2016.10.4~10)
風景画が主でしたが、港町が比較的多かったです。彫刻家である奥様の故郷が釧路であったせいでしょうか。絵はいずれも派手な色使いが無く、落ち着いた感じで好感を持てました。
2016.9.23 最近読んだ本
1)“孤高-国語学者大野晋の生涯”(川村二郎著 集英社文庫)
岩波文庫の「日本語の・・・」の著者として、その名は知っていました。その人柄についてよく描かれています。日本語に関する仕事上の事については一切妥協しない、頑固一徹の方だった様です。まあそれ位でないと、(僕の様に優柔不断では)何事も一流にはなれないでしよう。
2)“海の見える理髪店”(萩原浩著 集英社)
今年の直木賞受賞作家です。残念ながら申し訳ないけれど、僕としては読んで大して感想はありません。
2016.9.25“歌麿とその時代 美人画と役者絵”浮世絵展
(道立旭川美術館 8.26~10.16)
彩色華やかなというか、煌びやかな浮世絵には圧倒されます。殆どは美人画で、その対象は吉原の花魁等です。夕涼み中、とか雨降り等の絵は趣があり、当時の時代の雰囲気が出ていて少しホッとします。
2016.9.3(土)、4(日)“朋有り、遠方より来たる。亦た楽しからずや”
大学時代の友人達と2日間、旧交を温めました。ゴルフと夜は美味しいもので楽しい時を過ごしました。2人は九州から、他の4人は東京からでした。皆、若い時は日々、診療や研究など仕事オンリーで邁進してきたで訳ですが、六十を過ぎるともう、するべき診療や仕事をしたら、他の時間は「人生を楽しまなくっちゃ」ですね。
2016.8.13~15 お盆恒例“ぶらり旅”―“新ひだか町”訪問
今年も噴火湾沿いの街を訪れました。桜並木と競走馬の故郷として有名な新ひだか町で、平成18年、静内町と三石町が合併して出来ました。静内は、明治4年、洲本藩(今の淡路島)が政府の命により開拓を手掛けた町で、その厳しく苦しい生活は“北の零年”(吉永小百合主演)という映画で描かれています。その記念碑や足跡が残されており見てきました。暑い午後の昼下がりでしたので、牧場では少数の馬たちがのんびり草を食んでいました。そして、茶褐色で体温まる静内温泉に浸かった後、町の居酒屋で旨い酒を堪能しました。
2016.7.16 最近読んだ本
1)“沈みゆく大国 アメリカ<逃げ切れ!日本の医療>”(堤未果 集英社新書 2015年)
要は米国がTPP等を利用して、高齢化する日本の医療や介護等の分野を“食い物”として今後割り込んでくるので注意しよう、ということの様です。
調律師養成学校を出たばかりの若き調律師の純粋な心情を描いた秀作。本年度の本屋大賞受賞作です。会社の先輩や顧客との交わりで、試行錯誤を重ねながら成長していく姿勢が良いですね。ピアノを弾く双子姉妹の性格描写が秀逸です。
3)“本覺坊遺文“(井上靖著 講談社 1981年)
秀吉による千利休に対する賜死事件は、不可解なものがありしばしば取り上げられます。師千利休のお傍に仕えた本覺坊という者が綴った手記が残されており、それを基に井上靖がmodifyし作品に仕上げたものです。終章でやや真相に迫る文脈が出てきますが、しかしやはりなぜ利休は自刃しなければならなかったのか、不明な点は残ります。
2016.6.5 ブラザーズ・フォア ジャパンツアー2016(富良野演劇工場)
楽しみにしていたブラザーズ・フォア公演に行ってきました。最高でした。数々のアメリカンフォーク!“遥かなるアラモ”、“グリーンフィールズ”、“七つの水仙”、“500マイル”等々。帰りに、マーク・ピアソン(バンジョーの名手)夫人にお近づきになれ、かつグループのメンバー全員と一緒に写真を撮って頂けたのは忘れられない!
2016.5.15 最近読んだ本
1)“街道をゆく №8 熊野・古座街道、種子島みち、他”(司馬良太郎著 朝日文庫)
前半の熊野・古座街道は行ったことも無く、また、文学や日々のニュース的にも馴染みが無く、読んでいてもピント来ませんでした。山の中、渓谷というのは分かりますが・・。大分県である豊後、日田地方のことも記されていますが、やはり、後半の種子島が読み応えがありました。島の南北である北種子と南種子の折り合い、種子島と紀州や薩摩藩との関係などです。
2)“「なぜ?」がわかる激動の世界現代史 (下)民族と宗教の衝突”(水村光男著 講談社+α新書)
苦手な世界史(現代史、上&下)を読んでみました。1800年以降の現代史を取り上げています。しかし、やはり1800年以後と云えど世界中の事を取り上げていますので、新書版2冊では、政治体制がこう変わった等、単なる出来事の羅列に過ぎず、それほど得るものは無かったです。
3)“後世への最大遺物・デンマルク国の話”(内村鑑三著 岩波文庫)
あの内村鑑三が、明治27年33歳の時に行った講演です。主題は「人は、その生涯で何を残していけるか」ということです。我々の様な普通人にしてみれば、それは思想や文学でもなく、また事業やお金でもなく、生き様、生き方であるということです。これは卓見で、確かに我々は毎日、絶え間ない人間関係の中で生きており、他人に何を言って、どう反応したか、相手の心に残っている訳です。
4)コナン・ドイルの怪奇譚(ドイル傑作集2“北極星号の船長、他12篇“、ドイル傑作集4“陸の海賊、他11篇”。 創元推理文庫)
コナン・ドイルは一連のシャーロック・ホームズで有名ですが、実は怪奇小説の名手であることは、殆ど知られていません。文学的な主張や人生訓的なものはありませんが、ただ最高に読書の醍醐味が味わえます。怪奇的なものを読むと読後、映画を見終わった時の様に、しばらく現実との境が無くなります。幼児誘拐、無差別殺人の様な奇怪な事件を起こした犯人の自宅を調べると、よくホラー映画等のビデオが山のように出てくることがあります。人間の内面って、そんなに強いものではなく、周りの影響を受けやすいものですね。
2016.5.5 当院の庭の“北辛夷(キタコブシ)”が咲きました。
当ブログの名の由来である当院庭の北辛夷。毎年、白い可憐な花をつけ、元気をもらっています。
ついでですが、当院正面の庭に見えるチューリップや水仙は僕が一昨年、自分で植えたものです。当然なのでしょうが、ちゃんと毎年、越冬して咲いてくれ感激です。
2016.3.29 最近読んだ本
“父を見送る―家族・人生・台湾”(龍應台著 天野健太郎訳)
たまたまその文体に引き付けられ、手にした一冊。台湾のベストセラー女性作家とのことですが、初めて知りました。内容は殆ど家族、特に認知症の両親と二人の息子達のことです。過去に生き、娘の顔も忘れがちな両親や「いつまでも子供扱いする」と怒る息子達との会話、それに時折り挿まれる人生や世の中への比較的肯定的な批評、単なるエッセイですが、ついつい引き込まれ読み通しました。。
主演:マット・デイモン。アカデミー賞に数部門ノミネートされているそうだが、残念ながらそれほどの感動は無かった。もっとスリリングな点もあって欲しかったし、ヒューマニズムの描き方も中途半端でした。ただ、(火星に一人置き去りということは非現実的だが、)たった一人、無人島等などに置き去りにされたらどうだろうということは考えさせられた。一人で生きていくのに、体力、気力は勿論、広範な知識や色んな事が出来ないと駄目だろう。例えば、主人公は、芋など植物を育て、酸素を作製し、日曜大工的なことは勿論パソコンにも精通していなければならなかった。
2)“大いなる西部”(ウィリアム・ワイラー監督 1958年)
テーマ曲は雄大な西部を連想させ有名ですね。Storyについては、別に見て頂くとして可もなく不可もなしですね。主演が僕の大好きな男優グレゴリー・ペック。彼は“ローマの休日”でオ・ヘップバーンの相手役の新聞記者。万年青年然とした風貌は正に適役でした。他にチャールトン・ヘストンやチャック・コナーズも出ています。古い映画ですので、女優陣も含め皆もう鬼籍に入っています。
3)“雨月物語“(溝口健二監督 1953年)
主演は森雅之、京マチ子。物や器械等は時代が移るにつれて便利になりますが、人間の業とか、性や出世、家族等に関しての感情は変わらないものですね。つくづく、そう思います。
1)“未成年“(イアン・マキューアン著 村松潔訳 新潮社)
信仰として、生血の体内への侵入(輸血を含む)を頑なに拒否する宗派があり、以前にも日本でも難しい事態なりました。この本を読む限りでは、現在、(輸血に関して)社会的にコンセンサスとなっているのは以下の様です。「未成年の場合は本人や親の信仰に関わらず、生命の救済を第一に、輸血に替わる方法がなければそれを選択する。しかし、成人の時は本人の意思を尊重する。」ということの様です。白血病の少年は、一旦親から押し付けられた信仰から解放され、自由ある生き方に目覚めました。その後、命を与えてくれた主人公である女性裁判官との親交もありました。しかし最後に衝撃の結末です・・・。
2)“7つの習慣 最優先事項”(スティーブン・R・コヴィー、A・ロジャー、レベッカ・R・メリル共著 キングベア出版)
私の人生の指南書、座右の本である"7つの習慣―成功には原則があった―” (スティーブン・R・コヴィー著)の姉妹書です(2011.11.24を参照して下さい)。このコヴィー博士(2012年79才で死去)の本により、私は大変役に立ち頼りになる処世訓を得ています。写真は著者スティーブン・R・コヴィー。
3)“つまをめとらば“(青山文平著 文藝春秋刊)
本年1月の直木賞の受賞作です。私は時代小説は専ら司馬遼太郎ばかりでしたが、暫らくぶりに他の作家のものを読んで見ました。しかし、やはり今一つインパクトが無いというか、心を揺り動かせられる感がないです。掲載された6編の短編の中では、小藩の田舎の支配所勤めに一人で出された若者を描いた“ひと夏”は良い作品で考えさせられる所がありました。
2016.1.23“屋根”(富良野グループ公演、作、演出:倉本聰、富良野演劇工場)
欠かさず見ている倉本聰の演劇です。この公演のあと、全国公演に回ります。第二次大戦の前夜、富良野の山奥に住む平和な家族にも、その荒波が押し寄せて来ます。子供達の出兵、徴兵、自殺。戦後のアメリカナイズした、日本の消費を主とする社会。勿論、笑いや涙を誘う場面も大いにありますが、倉本聰の作品にはいつも日本社会へ、これで良いのかという訴え、批判が込められています。中途のファッション・ショーは万博メロデイとともに良い気分転換。出演:森上千絵、納谷真大ほか若者多数。
2016.1.17 今、腰痛で苦しんでいます!
数年前にもあったのですが、今回は1週間前、突然来ました。思い当たることは、その数日前に除雪で少々無理をしたのと、職業柄ほぼ毎日“前かがみ”姿勢を取っていることです。それに65才という積年の疲労の蓄積が加担しているのでしょう。整形外科受診し、骨(脊椎)に年齢相当の変化以外、病的所見はないということで一安心。今は、鎮痛剤、腰ベルトに冷湿布をし、あとは(椎間板ヘルニアが恐いので)無理しない様にして自然治癒を待っている所です。
2016.1.11 最近読んだ本
”人間・始皇帝”(鶴間和幸著 岩波新書)
秦の始皇帝は一般に良くないイメージ、つまり暴虐的なイメージがあります。確かに生き埋めにしたり残虐な事をした独裁権力者の面は否定できませんが、彼が史上突出してそうだったというのは当たっていません。それよりも、紀元前200年~250年という時代にしては先進的な、文化的な側面にもっと注目していいと思います。例えば、度量衡の策定、裁判制度、首都を結ぶ国道の整備、郡県制の施行、文書形式の統一などです。わずか15年の短命帝国でしたが、現代まで中国史上最も影響ある君主といえます。勿論、通読して血なまぐさい場面が非常に多いですが、どこの国にもあったことです。
始皇帝陵は未発掘で、その地下空間に安置されている始皇帝の棺の周囲には水銀の川があるそうです。ひょっとすると始皇帝がミイラにならずそのままの姿で眠っているかも・・・。
2016.1.10 最近見た映画
1)“東京暮色”(小津安二郎監督 1957年)
言うまでもなく原節子、笠智衆、有馬稲子出演。多感な若き娘が踏切事故で亡くなる最後など、見た後、暗い気持ちが引きずり、すっきりしない・・・。
2)“エデンの東”(エリア・カザン監督 1955年)
あの夭逝したジェ-ムス・ディーンのデビュー作で、スタインベック原作、テーマ音楽でも有名な映画。兄弟の確執や不良少年とされた弟が結局は父に受け入れられる過程がよく描かれている秀作。
3)“アメリカン・スパイナー”(クリント・イーストウッド監督 2015年)
イラク戦争時の実在したアメリカ最強の狙撃手。罪無い市民も狙撃の対象となった戦争。祖国に戻った彼の心の葛藤、心の傷はいかなるものだったか?
2016.12.13 最近読んだ本
1)“暇と退屈の倫理学”(國分功一郎著 太田出版)
暇とは、退屈とはどういったものか、日頃特別深く考えずに過ごしているこれらの事について、哲学的に追及した良書です。例えば、“暇”なので“気晴らし”の為、パーティに参加したとする。しかし、その最中“退屈”を感じることがないでしょうか。この様に暇と退屈とは違うものです。著者の結論を極論して無理やり一行で記すと、「人間は思考することを楽しむことによって、暇とか退屈などの観念のない動物の様な状態になれる」と。
わかりにくいですが、詳細は読んでみて下さい。こういうのを哲学というのでしょう。久しぶりに哲学の勉強をしました。
2)“わが家のヒミツ”(奥田英朗著 集英社)
6編の短編集。我々の日常生活を取り上げた話で、気合いを入れなくともすぐ読めます。だから読後、“何が書いてあったか”、とか感動の類いは期待しないこと。
2015.12.12 最近見た映画
1)“プラダを着た悪魔”(2006年 デイビッド・フランケル監督)
メリル・ストリ-プとアン・ハサウエイの競演。やはり、成熟した大人の女性役ならメリル・ストリ-プが一番だろう。ファッション雑誌の仕事に全精力を懸け、周囲の社員もビビッてしまう女性編集長の秘書になったアンナ。振り回されるが、結局は背伸びしない自分の生き方を選ぶことに。ニューヨークを舞台に、アパレル界の裏も見せてくれる。確かに、分野はどうあれ世界を相手にした仕事に精魂傾け、日々時間に追われる生活は、成功すればそれなりの自己満足は得られるだろう。しかし、犠牲にしているものはないか等、たまに自分の周りをじっくり見てみよう。自分というものも見失なわない様にしなければなるまい。
2)“炎のランナー”(ヒュー・ハドソン監督 1981年)
このテーマ音楽が良い。映画音楽史上のベスト10に入ると思う。内容はご存じのように英国有名大学の陸上選手2人がオリンピックで金メダルを取った実話に基づいている。アカデミー賞の作品賞、作曲賞含め4部門受賞。しかし、僕にとっては、それほど見ごたえのあるものでなく、筋も凡庸だった。
2015.11.22 “始皇帝と大兵馬俑”展
この連休を利用して見て来ました。秦等の中国古代の歴史はともかく、兵馬俑を見てきて本当に良かった。始皇帝の陵墓の周囲から発掘された夥しい数の兵馬俑と銅車馬。俑とは陶製の置物のことですが、かつて紀元前10世紀頃の西周王朝には小さな俑を死者と共に棺に納める慣わしがあったそうです。兵馬俑には将軍俑、歩兵俑、立射俑など10種類位あります。堂々とした人実物大の俑は貫禄十分、今にも動き出し、喋り出しそうでした。
2015.11.8 最近読んだ本
1)“鹿の王(上、下)”(上橋菜穂子著 角川書店)
ウイルス抗原、それによる免疫をモチーフに、独創的な部族間の対立を描いた著者渾身の一冊。擱筆までに10年。黒狼病ウイルスに免疫を持つ主人公と幼女児。そのキャリアーである犬を噛ませて感染させ、対立する部族の撲滅を画策する部族。ワクチンや抗ウイルス薬の開発に挑む医師団も一方の主役でもある。架空の飛
(ぴゅい)鹿 (か)という野山を縦横無尽に駆けることの出来る動物も活躍させ、逃走、恋、家族愛、誘拐等絡ませた波乱万丈の物語です。今年度の本屋大賞第1位作品。
2)“「なぜ?」がわかる激動の世界現代史 (上)革命と大戦”(水村光男著 講談社+α新書)
日本史関連の本は大分読んできたので、今回は不得手な世界史の本を手に取って見ました。
「原爆投下が戦争終結を早めたという、主にアメリカによって主張される議論があるが、賛成できるものではない。しかし、そこに至るまで戦争終結(敗戦)の決断が出来なかった、余りに遅きに失した判断、当時の日本の政治、軍事の最高指導者層の過失責任は極めて大きい」。若い命も含め、非常に多く人命が犬死にの様に藻屑と消えた。何とかならなかったのか?(僕が言うのも何だが)悔やんでも悔やみ切れない。
1)“フライト8714”(N.R.アマド監督)
航空機事故を題材にしたよくある映画。実際に2008年にスペインで起こった墜落事故から。
2)“駅”(降旗康男監督)
高倉健主演。他に倍賞千恵子、烏丸せつ子、宇崎竜童他など。
2015.9.30 最近読んだ本
“中国・閩(びん)の道 街道をゆく№25”(司馬遼太郎著 朝日文庫)
閩とは中国南部、台湾に面する福建省の事です。ここは海洋貿易で日本との縁が深く、港町である泉州市と関西の堺市とは室町時代から大いに交流がありました。(堺を泉州堺ともいうのはこの名残かもしれない。)あのマルコ・ポーロは泉州港は当時、世界最大の港であると記しています。孫悟空の原型と言われるお猿の武将像や元寇の失敗は船の問題であったとか、鉄で作る錨の話など興味深く読みました。
2015.9.4 患者さんは質問を!
先日、テレビの“ためしてガッテン”で白内障を取り上げていました。そのハイライトとして白内障進行防止の秘策があると、盛んに言っていました。これは目薬でしたが、この目薬は実は30年以上前からあるもので、一時、効果に疑問が出て医薬品から消えそうになりました。最近の研究で見直された訳です。誤解しないで頂きたいのは、この目薬を点けても進みます。白内障は加齢によるものですから手術しない限り改善はしません。その進行具合が遅くなるということです。誰も自分の体にメスが入るのを好みませんので、手術をしたく無い人には朗報でしょう。どんな手術も体を傷つけるという意味では必要悪です。出来ればしないで済むに越したことはありません。白内障は手術で殆どの人が視力を回復し、快適に過ごしていますが、中には経過の良くない人もいます。
医療はインフォームド・コンセントと言って、“手術等の際、それによってどんな事が起きるか患者さんは説明や情報を得て、了解し納得”の上、行われます。しかし、手術中や術後に起きる可能性のある事(合併症)は、細部まで言えば切りが無く、医師側も全て完璧に説明することは無理です。ぜひ、患者さん側は質問をして下さい。その方が医者側も言い足りない事を補足できます。
2015.8.28(金)N響、旭川公演(旭川市民文化会館)
指揮者はヨーン・ストルゴーズ(ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽段首席指揮者。フィンランド出身)。演目は3曲とも、ベートーベンでした。演奏順に①エグモント序曲、②ピアノ協奏曲第3番ハ短調作品37、③交響曲第5番ハ短調作品67「運命」。やはり、「運命」は良かった。とにかく、全曲通じて、弦の音が最高!バイオリン等の多数の弦の息がぴったり合い、一つの音となって纏まり迫力がある。世界に通じる弦の音だ。②のピアノニストはアリス・紗良・オット。1,500人入る会場も満員で、老若男女各年齢層がいた。N響だから満員になったのでしょうが、これだけ田舎の旭川にもクラシックファンがいるのは心強い。
2015.8.15~16 お盆恒例の“ぶらり旅”―苫小牧探訪
いつもお盆休みには、1~2泊で道内をぶらりと旅することにしています.昨年は伊達市(2014.8.15~17を参照)、一昨年は白老町(2013.8.14~15を参照)で今回は苫小牧市です。巡ったのは①苫小牧市科学センターの宇宙船“ミール”、②勇武津資料館、③ウトナイ湖(鳥獣保護センター)、④ノーザンスパークです。
① 宇宙船“ミール”:内部は意外と広いです。ただ、飛行士が眠る寝室は半畳もなく極めて狭い! 無重力なのでほぼ立った状態で紐で固定して寝ます。ミールはロシア語で平和のこと。展示されている“ミール”はロシアに残った予備機です。と言うのは、誤解されやすいのですが、現実に宇宙に行った“ミール”は帰還時に燃え尽きています。②勇武津資料館:江戸時代末期、蝦夷の警護と開拓のため、八王子近郊の武士(八王子千人同心)が勇武津(現在の勇払)と釧路白糠に移住した。慣れない気候風土に結局大半は帰郷した。乳飲み子を抱えたお梅は、乳を求め、さ迷い、若くして亡くなったという悲話(梅女物語)も残されています。③ウトナイ湖:日本で見られる鳥のかなりの種類が見られる。鳥獣保護センターでは、鳥の巣や死んだ動物の頭蓋骨等も展示され、レンジャーから色々な話を聞くことが出来ました。④ノーザンスパーク:引退した競争馬もいて、子供たちを乗せて歩いていました。家族連れが一杯。社台スタリオンでは、1時間遅れでディープインパクトに会えず!
2015.8.11 最近読んだ本
“我、弁明せず”(江上剛著 PHP研究所 2008年)
皆さん、池田成彬という方をご存じでしょうか。私は全く不案内ですが、財界や政治関連では“知る人ぞ知る”大人の様です。慶応3年(1867年)生まれ。明治から二次大戦前後まで活躍し、三井財閥の番頭と言われた方で、一時首相候補にもなった様です。あの時代にも関わらず、若い頃アメリカ留学しています。戦前からずっと“英米に対抗するな、戦争も財政上持たない”と繰り返し、軍部に狙われていました。結局、時世とか政治というのは、大きな声をあげ目立つ人によって左右され道を誤ってしまうのでしょうか・・・?
2015.7.16 最近読んだ本
1)“沈黙の人”(小池真理子著 文春文庫)
子供の頃、両親と睦まじく暮らしていた主人公(出版社に勤めるキャリアウーマン)だが、父母は離婚し、今はパーキンソン病を患う実父を時折り見舞う。彼は再婚したが、新しい家族とはうまくいっていない。話すことも書くこともままならず、車椅子生活で施設に入っている。父の再婚先の異母姉妹との交流や父亡き後の父の遺品を巡る諸事。高齢者の増加で老々介護を含め介護が社会問題となっている現在、私も人に迷惑を掛けない様PPK(ピンピンコロリ)で逝けたらと思っております。吉川英治文学賞受賞の著者渾身の作。
2)“古代史紀行”(宮脇俊三著 講談社文庫)
旧国鉄全線を完乗した旅行作家。歴史にも造詣が深く読ませる。歴史好きも楽しめます。
3)”人類哲学序説”(梅原猛著 岩波新書)
言うまでも無く著者梅原猛は、現代日本を代表する知識人の一人です。今後の日本の進むべき道を具体的に示唆しており、私は極めて賛意を表すものです。
4)“ハワイの歴史と文化―悲劇と誇りのモザイクの中で”(矢口祐人著 中公新書)
原住民であるネイティブ・ハワイ人の所に、各国より移民が、そして白人、特にアメリカ人がやってきて社会的に大きな勢力になり、問題が生じる。これはよくある図式です。移民政策はカメハメハ王らが国策としてとって事ではあるが・・・。しかし日本等からの移民は、事業がうまく行かず生活が困窮し身を持ち崩す人々も少なくなかった。また、パールハーバー以後、日系人は眼の仇にされたが、しかし、むしろ身命を掛けてアメリカ人として戦場に赴いたのです。
2015.6.13 最近読んだ本
“エリック・ホッファー自伝 構想された真実”(エリック・ホッファー著、中本義彦訳 作品社)
驚きです!この様な作家、思想家がいたという事は、僕の人生観、人生の価値観を変えました。つまり著者E・ホッファーは全く定職に付かず日雇い労働者として生きた人で、しかし読書や勉強が好きでもあったのです。放浪し、移動は貨物列車にただ乗り、行き当たりばったりの生活。それでも、日々、at randomに読書と勉強は続けたのです。65才時、仕事を引退し著作活動に専念。その生き様から全米でホッファー・ブームが起きた。1983年、81才で死去。アメリカ大統領自由勲章を受賞している。ぜひ、彼の人生を垣間見て下さい。一定の収入のある定職を持って、普通の家庭人として、しかし日々何やかやで生活に追われている様な我々。普通とは何? 考えさせられます。
2015.5.4 最近読んだ本
“サトラップの息子”(アンリ・トロワイア著 小笠原豊樹訳 草思社)
たまたま市立図書館で手に取った本です。フランスに亡命したロシア人で、フランス文学の中では屈指のベストセラー作家の様です。1920年代、ボルシェビキによる革命吹き荒れるロシア、フランスへ亡命した2家族のフランスでの日常が、作家本人と思われる少年の目からよく描かれています。ほぼ自伝の様です。
2015.5.1 ”本当に人間の体は良く出来ていると・・・”
本当に人間の体は良く出来ているとつくづく思います。例えば、単純に“歩く”とか“物を上手につかむ”いう行為をロボットで実現するのに科学者は苦心惨憺して来ました。アシモ君は“歩く”のはかなり上手になり、最近は“駆け足”も出来つつある様です。
例えば、斜視は視線がずれている状態ですので、見ている方向が違い、ものが二つに見える(複視)はずです。しかし実際には、ずれている眼からの情報は脳で瞬時にシャットダウンして複視になることはありません。これを“抑制”と言います。(但し、外傷や脳の病気で眼の筋肉が麻痺を起こし斜視になった場合はこの限りではありません。)
私は、子供の頃から“見える”ということに不思議さを感じていました。眼はどうして様々な色を感じ取り、細かい形をきれいに識別するのか? 眼底の網膜には二種類の視細胞がぎっしり詰まっています。1億個の光を感知する杆体細胞と色や点を感じ取る700万個の錐体細胞です。これら1個1個からの信号が視神経を伝わって脳へ送られ “見える”訳です。しかし眼球に異常が無くとも、脳に何か生じれば、例えば出血や血管閉塞が起きると部位によっては見えなくなります。半盲とか皮質盲です。
また角膜(黒目の表面)が透明なのは、人体で唯一、血管が無い組織で、極めて細いコラーゲン線維が規則正しく配列し、光はその中を乱れることなく通過出来るからなのです。(地域タウン紙“せせらぎタウン”平成27年5月号掲載 ”眼の不思議発見” №48)
2015.4.12 近況報告
平成8年に開業して早19年。旭川の眼科開業医の中でも年齢で上から数番目になりました。まだCAT(白内障)のopeをしていますが、最近は自分より年下の患者さんであることも少なくないです。国内外、ざわついた事件が多いですね。「IS(イスラム国)に対し国連は何をしている」等々、僕を含め憤懣やるかたない人が多いのでは。(北眼医報、平成27年4月号掲載)
2015.4.10 “副操縦士が旅客機を故意に・・・”に思う
副操縦士にはうつ病があった様で、多くの人を道連れにした無理心中の最悪型でしょう。機長との会話から、出発時は本人もまだ決行することは逡巡していた様です。つまり「〇時ころ到着かな?」という機長に対して、「そうだと良いんだけど・・・」と返答したとのこと。通常何かをする際もう一人の自分がブレーキを掛けますが、猛スピードで山に激突させた様ですので、もう抑制が効かなくなったのですね。それがまさに“病気”ということですね。
2015.3.25 最近読んだ本
1)“アインシュタインの世界 知の再発見双書59”(フランソワーズ・バリバール著 佐藤勝彦監修 創元社)
言うまでも無く20世紀を代表する、と言うより人類歴史上の知の巨人です。画期的な相対性理論で、従来の時空の概念を変え、時間は絶対的なものでないことを表わしました。現実に天文学的に実証されています。そして彼が導き出した簡潔なE=Mc2(E:エネルギー、M:質量、c:光速度)の式には感動すら覚えます。しかし、その後の量子論で彼は少々迷路に入った様です。人生後半は政治的な平和主義活動に入り、学問からは遠ざかって行きました。彼のprivateの話も出て来て、我々同様に私生活上での悩みや葛藤も記されています。
2)“第八の習慣―「効果」から「偉大」へ”(スティーブン・R・コヴィー著 キングベア出版)
私の座右の書で世界最高のビジネス書の1つと言われる“第七の習慣―成功には原則があった”(2011.12.24参照)の姉妹書です。“第七の習慣”の質を更に高め効果的にする方策等を記しています。しかし難解でよく理解できませんでした。再読しなければと思っています。
3)“私の父、私の母”(阿刀田高、渡辺淳一他。中央公論社 1994年)
著名な作家が自分の両親について書いたものです。三浦綾子さんも載っています。内容は三人三様で、もう亡くなった親もいるし、健在の親を書いたのもあります。反面教師となった親もいます。我々が物心付いた時はもう既に親として存在しています。父母それぞれに若かりし時があり、子の知らない人生を送って来ていますが、子としては中々ピント来ないものです。
2015.2.11 最近見た映画
1) “エクソダス 神と王”(リドリー・スコット監督 2014年)
主演クリスチャン・ベイル。かの有名な映画“十戒”のremake版です。今回も勿論戦車を走らせたり戦闘の場面なども凄いけれども、CGを駆使し見せる映画に仕立てています。特に海が迫ったり、ハエやイナゴの大群、ワニが漁師を襲う、戦車隊が崖から集団で崩れ落ちる場面など。難点を言わせてもらうと、年端の行かない少年が神の使いの様な役で出てきたりしたのと、モーゼ役の俳優にもっと大物を起用してほしかったです。あら筋としては“十戒”と同じ感じです。
2) “失われた週末”(ビリー・ワイルダー監督 1945年)
主演のレイ・ミランドについては、申し訳ないけれども存じ上げない俳優です。アカデミー賞作品賞、主演男優賞受賞作。アルコール中毒の小説家の話。私もお酒が嫌いでないので、少々身につまされます。今後少々お酒控えようかな
3)“キリマンジャロの雪”(ヘンリー・キング監督 1952年)
主演グレゴリー・ペック。他にエヴァ・ガードナー。スーザンヘイ・ワード等。原作者ヘミングウェイの体験に基づいたものの様で、狩りで重傷を負い、いつ来るか知れない救助を待つ間、過去に愛し合った3人の女性のことを思い出す。狩猟、アフリカなどが舞台で羨ましい面もあり、日々仕事で動き回る我々一般人には、ちょっと測れないスケールですね。
2015.1.12 最近読んだ本
1)“仙台藩最後のお姫さま-北の大地に馳せた夢”(伊達宗弘、伊達君子著 新人物往来社)
仙台伊達藩は江戸時代より、蝦夷、特に千島列島や函館の警備を担当していました。明治になって北海道開拓使が置かれると、その関係でその支藩等の関連諸藩がその支配を命じられ、亘理伊達藩が有珠一帯に入植することになりました。本藩伊達藩主の娘で亘理藩に嫁していた保子とその息子の藩主邦成の伊達開拓の苦難の実話です。武家が今までしたことの無い未開の地の開墾など大変なことだったでしょうが、士族たるプライドはおそらく最後まで持っていたでしょう。昨年、ぶらりと訪れた伊達市開拓記念館で手にした一冊で、そこでしか手に入らない本を読んでみるのも一期一会と言えるでしょう。
2)“ドン・キホーテ 前編(三)”(セルバンテス著 牛島信明訳 岩波文庫)
以前にも書いたけれど、皮肉でなく大人の漫画。面白い。何か教訓というか人生訓のようなものがあるわけではないが、実に様々な話が次から次と出て来ます。それが著者セルバンテスの才能なのでしょう。読んでいて飽きない。あの「ロメオとジュリエット」の様な悲恋物語に似た話が多い気がします。この物語の最後、ドン・キホーテはどうなるのだろう。非日常の遍歴の騎士の狂気から覚めるのだろうか?
3)“機長!”(井上博著 廣済堂新書 2015年)
ベテラン機長のエッセイ。パイロットになるに必要な資質は?と問われ以下の様に記しています。健康、強い精神力、そして不断の学習(弛まぬ努力)の三つを揚げていますが、これはどんな職業にも言えることでしょう。つまりは特別な能力は不要、この三つがあれば誰でもなれるという事を言っているわけです。パイロットに必要な資格、恐い経験談、YS-11等の各年代の旅客機の話など。
4)“神田鶴八鮨ばなし”(師岡幸夫著 草思社 2000年刊)
Retireした東京神田の鮨店主のエッセイ。この人は結構づけづけ物を言う人で、カウンターに座った客や親方達とも気まずくなった話しが出て来ます。また、江戸っ子のせいか“粋“や”いなせ”という事を力説しています。随所にその人となりを知る人生観が書かれています。逐一出しませんが、当然なるほどという処と賛成しかねる点があります。
2015.1.1 念頭に当って
平成27年、新しい年が明けました。新年明けましておめでとうございます。同じ時間の連続なのですが、不思議なもので気持ちが改まります。
人は一人では生きていけず、必ず誰かの世話になっています。例えば、衣食住。“衣”は裸で暮らす訳には行かず、誰かが作ってくれた服のお世話になっています。“食”も言うまでも無く毎日お世話になります。お米は農家の方が作ってくれています。その他の食べ物も勿論誰かが作ってくれているわけです。次に“住”ですが家も建てて頂けないと暮らせません。かように我々はほとんど全て他人の世話になっています。
人の生きる目的、理由は各自考え方があるでしょうが、“人の役に立つために生きる”のも正解の1つと思うのです。親のため、子のため、家族のため、妻のため、夫のため、地域の人達のため等々です。会社員の方は会社を通して人に役立つ物を提供しています。
眼科クリニックを開いている私やスタッフは、地域の方々のQOL,QOVの保持、改善のため、視覚、目に関して生じた諸々の事態、病変に対処することを通してお役に立つべく、今年も努力したいと思います。
2014.12.6 最近読んだ本
1)“濃尾参州記 街道をゆく №43”(司馬遼太郎著 朝日文庫)
お分かりと思いますが濃尾は美濃と尾張のことですが、参は三河(愛知県東部)の三です。織田信長や今川義元、家康らの、彼らの若き日のこの地域を巡る攻防が詳しく語られています。特に桶狭間の合戦の記述は興味深く読みました。しかし、司馬氏は1996年2月に急逝したため、この巻は未完に終わっており短いです。それにしても日本や中国、欧米各地を知己を伴い、そしてその土地の方々と親交を深めながら、歴史を交えた紀行文的読み物を纏め上げるというのは常人には真似出来ないこととつくづく思います。
2014.12.2 最近見た映画
1) 南極物語(蔵原惟繕監督、1983年)
高倉健主演。先日、高倉健追悼のためTV上映されました。ご承知の様に実話に基づいたもので、現実に置き去りにされた犬たちは可哀相であった。しかし映画としては感動的ではある。ロケで実際に死んだり怪我した犬はいないそうですが、犬も大変だったろう。この様に人間の都合で命が決まってしまうというのは動物にとっては不条理というものだろう。また天候のせいで、次に来る予定の隊が来られず、犬たちをしっかり綱に繋いでおいたのが却って禍となった。どんなに確定的な予定でも、あくまでも未定の将来のことであり、決定でなく既定事実でもないのだ。肝に銘じよう。
2) “インターステラー”(クリストファー・ノーラン監督、2014年)
マシュー・マコノヒー主演。近未来の話。将来、飢餓や環境問題等でもう地球に住めなくなることを想定して、どこか人類が住める可能性のある星の探索に出かける話。主人公の男はブラックホールに吸い込まれ、5次元の世界に入ってしまう。これが映画冒頭、10歳の娘が自分の部屋でポルターガイストあるいは幽霊が出ると盛んに主張する所と結びつく。5次元になると時間も“行き来”できるのか。詳細は述べない。後味としては少々寂しい映画(宇宙の寂しさや孤独を感じさせる)で、決してこの映画を見て、力づけられるとか未来に希望が見えるとかはない。あくまでも娯楽作品。
3)“キャプテン フィリップス” (ポール・グリーングラス監督 2013年)
主演:トム・ハンクス。実話に基づく映画です。監禁された船長は、最後は気も狂わんばかりの極限状態に陥る。もし自分だったらどうだったであろうと焦ってしまう。トム・ハンクスもロケは大変だった様です。海賊たちは普段は漁師だが、それだけでは生きていけない実態がある。生活がかかっている海賊漁師たちの恐いこと! 囚われ中、船長が海賊たちに、現代機器等を操るアメリカ海軍に立ち向かっても勝ち目が無いので降参する様話すが、「ここまで来たら戦うしかない」と自暴自棄になるテロリストは怖い。
4)“大統領の執事の涙”( リー・ダニエルズ監督、2013年)
主演フォレスト・ウィテカー。ホワイトハウスで長く歴代のアメリカ大統領の仕えた黒人執事の話。南部の農園での奴隷出身で、privateには長男が公民権運動にのめり込むなど、後々までこれは悩みの種となった。肌の色での差別、人種差別については日本にいては想像できないものがあるだろう。差別される身になれば本当に憤りを越えた苦悩があるだろう。ジェーン・フォンダやロビン・ウィリアムズも出ています。
2014.11.8(土)加藤登紀子ほろ酔いコンサート2014(旭川市公会堂)
加藤登紀子がデビューして、今年で丁度50年になり、現在精力的に全国を巡っています。入場時に日本酒(旭川の地酒“大雪の蔵”)が振舞われ、勿論私も戴きました。彼女は1943年生れの現在70才ですが、(高音が少々かすれるが)声量は十分で聴きごたえがありました。まず冒頭に杯で喉を潤してから、10年毎のspanで5曲ずつ歌いましたが、懐かしい曲ばかりでした。彼女のtalkは、主に後に夫となった学生運動家との出会いから結婚生活の危機等の自分史でした。やはり場慣れしており、白けさせず、客に阿る様な事も言わず、堂々とした語り口は外連が無く良かったです。最後にもう一杯グイッとやって、阿久悠作詞の楽しい“富士山だ”を歌ってコンサートを閉じました。まだまだ、やれる!これからの彼女の健闘を祈りたい。
2014.11.2 最近読んだ本
1)“ドン・キホーテ 前編(二)”(セルバンテス著/牛島信明訳 岩波文庫)
ご承知の様に、騎士物語を読み、自分が勇敢なる騎士になったと錯覚したドン・キホーテの波乱万丈の物語。彼が事件、事故の原因となり、周囲がてんやわんやになるという筋です。漫画的な読み物ですが、よくぞここまでハプニングのアイデアが浮かぶと感服します。さすがにスペインの誇るstory tellerです。ただ随所にギリシャやローマ、聖書の人物名等が出てきて、著者の博識な事が伺われます。ただ後半には、ドン・キホーテとは関係ない挿話が出て来ます。これはシリアスなドラマでこれだけで一読の価値があります(親友が結婚し、その新妻の貞節をもう一人の独身の友が試す話です)。その中に以下のようなセルバンテスの女性観と思われる下りがあり、inpressiveなので付記します。「女というのは未完成な生き物なんだよ。だから女がつまづいたり転んだりしそうな所に障害物を置くなどもっての他で、むしろその進む道から邪魔のものを取り除いてやり、彼女が自分の欠けているところを補って、徳の高い人間となるべく、心おきなく邁進できるようにしてやることが必要なんだ。」うーん、そうですか・・・。
2)“街道をゆく 1.湖西の道、甲州街道、長州路ほか”(司馬遼太郎著 朝日文庫)
竹内街道、葛城みちの章では、そこは勿論大和の国ですが神武天皇の東遷以前に葛城という豪族が支配し、そこに又鴨豪族もおり、それが京都の賀茂神社、鴨川、加茂、賀茂川の由来である等の話です。長州路の章では、その県民性(山口県)としての品の良さ等を比較的詳しく論じているのが目立ちます。甲州街道では徳川慶喜の事が興味深く話されています。以前も記したけれども、日本の御意見番と考えていた司馬遼太郎が70才ちょっとで亡くなられたことがつくづく悔やまれてならない。(つい最近、新聞記者時代の同僚でもある奥さんが亡くなられましたね)。
2014.11.1
ノーベル賞を取った話題のips細胞による、実際の患者さんへの臨床実験が日本で始まりました。世界初です。黄斑変性という病気に対してで、黄斑とは眼の奥の中央で、物を見る時の中心となっている場所です。そこが加齢により傷んでしまう病気です。今回首尾よく行けば、新しい希望となります。眼疾として、他に網膜色素変性という難病があり、今の所進行を抑える内服薬しかありません。治すには網膜の細胞を新しくする、つまり再生するしかなく、ips細胞が唯一の希望です。
この様に、科学や医学の発達により、我々は多大な恩恵を受けています。しかし、その実際の運用に当っては、例えば核兵器や代理出産等、人倫に悖ったり難しい事態に発展することがあります。科学や医学の発達に対して、全面的に諸手を上げて賛成することに躊躇いを覚えるのは私だけではないでしょう。(地域タウン紙 せせらぎタウン 平成26年11月号掲載)
2014.9.26(金)
シンガーソングライターの草分けと言っていい来生たかおを聴いて来ました。彼は1950年生れで僕と同い年、今年64才になるとは思えない良く通る声で感動しました。それも楽に歌っており、まだまだやれる感じです。予想通り観客は殆どが年配者でした。しかし、あの様にピアノ等の楽器を自在に弾き語りが出来るなど、僕にとっては全く羨ましい限りです。
2014.9.7“日本画の巨匠たち展―水野美術館所蔵(長野市)”
平成14年に設立された水野美術館は、近現代日本画のコレクションで知られています。錚々たる巨匠たちの日本画58点をじっくり堪能しました。印象深かったものを2点挙げるとすれば、まず横山大観の有名な“無我”(明治30年)です。着物を無造作に着た幼子が、何を考える訳でなく茫洋と立っているあの絵です。実は、今回の作品は大観はこの子の表情に納得出来ず、改めて書き直したものだそうです。しかし、タイトルの”無我”ですが、“無我の境地”として使われる“無我”とこの幼子の絵とは、しっくりしないと思いませんか。大観は無我というより無邪気という意味も込めて付けたと、私には思われます。
次に平山郁夫の“静夜鹿苑寺金閣”(平成16年)。夜、暗闇の中、月明かりに照らされた金閣は数百年前のものとは思われません。その他、鏑木清方、上村松園、川合玉堂、橋本雅邦、菱田春草、等々。文化勲章を受けた方が多くいます。是非ご覧下さい。(北海道立旭川美術館にて。8/30~10/19まで)
2014.8.15~17 伊達市探訪
毎年恒例のお盆休みを利用しての道内一人ぶらり旅。今年は北海道の湘南と言われる温暖な気候の伊達に行きました。ご存じのように明治初期、廃藩置県、戊辰戦争等により、藩主は身分の無くなった家臣団の為に北海道へ移住し開拓することが行われました。ここ伊達もその名の通り仙台伊達藩の支藩、亘理伊達家が入植した地です。
16日、開拓記念館で歴史的資料を見(、迎賓館を経て、宮尾登美子が「平家物語」執筆で縁が出来た宮尾登美子文学記念館を見学しました。これらは全て国道37号沿いの道の駅“だて歴史の杜”の敷地内に纏まっています。
17日、縄文の丘、北黄金貝塚で昔の人骨が埋まったままの墓に感動。道の駅での野菜の豊富さに驚き、美味しいと言われる茄子をお土産に買った。食塩泉である伊達温泉でのんびり入浴し、帰途に着きました。(記念館等の詳細については、各下線部をクリックして頂ければ見ることが出来ます)。
2014.8.6 最近読んだ本
1)“「永遠の0」と日本人”(小川栄太郎著 幻冬舎新書)
大東亜戦争での日米開戦の勃発、原因に関する従来の一般的な見識を覆す衝撃的な本です! 一般的に日本軍部の暴走が大きく関係していると考えられています。しかし、開戦当時よりアメリカは資源大国であり、日本は石油等の重要資源をアメリカから輸入していました。そこに戦争を仕掛けるのは馬鹿な事、暴挙であることは日本側も解っていた。では、何故? ・・・映画“永遠の0”、“終戦のエンペラー”や小説“永遠の0”、戦闘機零戦と絡めて、独特の私見を述べています。私もまだよく理解できていないので、再読しようと思っています。
2014.7.6 最近読んだ本
1)“信州佐久平みち、潟のみち、ほか”(“街道をゆく”№9 司馬遼太郎著、朝日文庫)
まず、初めは新潟県の深泥田だった亀田郷の農地改良事業とそこの昔の小作争議の話しです。日本はご承知のように土地を商品として売買する世界でも稀な国で、司馬が以前より嘆いている所です。(巻末の牧祥三氏の解説は秀逸で、日本の農地、土地制度の歴史に関して分かり易く記述しています。)後半の高野山紀行では、空海の真言密教と各地を念仏で布教に回った聖(ひじり)達の事で、これは司馬の得意分野です。彼は若い時、京都の寺院担当の記者でしたから。
*司馬遼の“街道をゆく〟シリーズ(全43巻)。これで23巻読了。あと20巻もある・・・・。
2)“1417年、その1冊がすべてを変えた”(スティ-ヴン・グリーンブラット著 河野純治訳 柏書房)
“原子の歌―宇宙をつくるものアトム”(ルクレティウス著 国分一太郎訳 国土社 科学入門名著全集1)
現代では、“物質は全て原子で出来ている”というのは常識ですが、今から2000年前、“物の本質について”という本で、既にそれを書き表した人がいました!彼の名はルクレティウス。1417年、教皇秘書まで上り詰めたポッジョなるブックハンターがその埋もれていた本を見出したのです。いつも思うのですが、昔の人は現代の我々が想像する以上に賢いのではないでしょうか。古代の食器や花瓶などの器や装飾品など、全く現代人が作り出せない様な物を作っています。ルクレティウスの本を発見した人文学者ポッジョの活動や生き方等を詳細に記述しています。
2014.6.8 特別展“医は仁術”(国立科学博物館、東京上野)
たまたま上京した折り、見て来ました。日本における医学、医療の発展を実際の古書、図等の展示で示したものです。江戸時代、医師が蘭書などを参考に“腑分け”で人体の内部を観察しました。一人で40回以上も繰り返した医師もいました。そして、繰り返される度に内容が正確、詳細になって行く様子がわかります。入場者も多く盛況でしたが、生身のスケッチが生々しく気分が悪くなる人もいたのでは?それにしても、蘭書の翻訳等、生半可な勉強では駄目でしょう。昔の人の努力には頭が下がります。それに比べれば、現代の自分達は温室の様な処でぬくぬくとしていますね。
2014.4.20 うちの花ちゃん(ヨーキー)、死にました・・・
昨日の朝、僕が抱っこした中で、一度大きなけいれんを起こした後、呼吸が止まり亡くなりました。11歳(メス)でした。数か月前より「元気ないな?寝てばかりいるな。」と家内と話していました。3年前より、大きな鼠径ヘルニアがあり、年令的なこともあって元気が無いと思っていました。1週間前、動物クリニックで診てもらった所、末期の腎不全でした。血中に老廃物である尿素窒素が230(正常の10倍以上!)と異常に増加、生きているのが不思議な位でした。“犬はぎりぎりまで我慢する”とは聞いていましたが・・・。おしっこもいつもの決まった場所でしなければならないと思い、四肢はもう殆ど動かないのに、何とか行こうと頑張ります。以来、日に日に弱り、最後は、家内と見守る中、逝きました。ほぼ1週間の経過でしたが、もっと長期間苦しむ犬もいるそうです。この子とは沢山散歩もした。大人しくて優しい良い子だった。悲しい。向こうで沢山のわんこ達と楽しく遊んでほしい。
2014.4.13 最近読んだ本
1)“「イギリス社会入門」―日本人に伝えたい本当の英国”(コリン・ジョイス著 NHK出版)
私、以前から英国に興味がありました。紳氏淑女の国とか大英帝国とか言われたきた国で、国風として何となく上品というか垢抜けている感じがしています。これを読んで、更にその意を強くしました。しかし、いくつかの短所も記されていて、それが面白かったです(特にPUBに関する記事)。また天候を挨拶代りにしたり、お茶の習慣があるなど日本に似ている所もあります。
2)“イギリスは愉快だ”(林望著 文春文庫)
私と同じ様に英国に凝っている文学者林望さんの本を読んでみました。留学中の宿であるルーシー・マリア・ボストン夫人の由緒ある古い家での事が大半で、興味深く綴られています。1120年建造の英国でも最も古い家の1つです。この女性は当時91才でしたが、お元気で、また有名な女流作家(「グリーン・ノウ物語」等)だったのです。ロンドンから車で2時間のケンブリッジ市より約20km離れた小さな村にあります。友人のとの交流、季節の変化、婦人の家での招待客らとのパーティなど、英国ならでは習慣等が良く描かれています。
3)“驚きの英国史”(コリン・ジョイス著、NHK出版新書380)
この著者の本、2冊目です。雑談風に色々な分野について記述され、寝転がって読めます。我々は本当に何でも表の表情しか知らない。何にでも裏があり、それを知ると本当の姿が見えて来ます。あまり裏事情を知ると嫌いになることがあるかもしれませんが・・・。レーニンとスターリンがよく一緒に呑んでいたというパブ。ご承知のように英国の王位継承にまつわる怖い話、マグナ・カルタのためイギリスには成文憲法がない、等々。
首都東京をパニックにした雪の季節もいよいよ終盤で、もう春が目前です。そして入学、進学の時期でもあり、気分も高揚してきます。
春になると嫌なのは花粉症でしょう。アレルギー性結膜炎や鼻炎を起こします。お陰様で私は花粉症ではありませんが、急になってしまう方も見られます。北海道はスギでなく、4月から6月にかけてシラカバ(白樺)に敏感な方が断然多いです。抗アレルギー点眼薬は数種類ありますが、即効性はないので続けることが肝要です。例年、花粉症になるとわかっている方は、発症する2週位前に点眼しておくのが効果的です。それに反しステロイドは即効性があり、痒みがひどい時は大変重宝ですが、長期に渡ると副作用が出やすいので注意しましょう。原因(抗原)が花粉でなくハウスダスト、カビなどは時期に関わらず発症します(通年性)。
耳慣れないかと思いますが、春季カタルというアレルギー性結膜炎の重症型があります。子供に多く春から夏にかけ悪化することが多いです。上瞼の裏に丸い“ぶつぶつ”が出来、ひどい時は角膜(黒目)を傷つけ潰瘍になります。治療は、以前はステロイド点眼薬に頼っていましたが、効果は今一つでした。現在は免疫抑制剤が点眼として使える様になり有効です。治るのに時間がかかりますが、成長につれ徐々に改善していくことが多い様です。(地域新聞、せせらぎタウン紙4月号に掲載)
2014.3.9 戦没画学生“生命の絵”展―「無言館」所蔵作品
あの長野県上田市にある窪島氏による戦没画学生慰霊美術館“無言館”の絵です。以前(この“辛夷”の2013.12.8欄参照)三浦綾子記念館で購入した本の実物を見てきました。鑑賞していると、何とも切なくというか残念としか言えない。皆、まず生きて戻れないと覚悟して出征した青年達だろう。その胸中察するに忍びない。見た後、出た処にノートが置いてあり、“合掌。皆、戻りたかったろう・・・。”と書いて来た。
伴奏は愛息ベンジャミンが勤めた。旭川では7回目の公演です。私はそれほどクラッシクには詳しくないけれど、会場はほぼ満員でした。こんなに旭川にチェロを聞きに来る人がいるとは! 近現代のヤナーチェク、コダーイ、バルトークという作曲家の曲は僕には馴染めず、やはりシュ―ベルトのアルペジオーネ・ソナタが良かった。そして全体を通じてチェロの低音が良かった。
2014.2.9 最近読んだ本
日本が二次大戦終了までの50年間植民地として統治していた台湾について、その歴史、民族等多方面より分析しており、統治時代に築いた正、負の遺産、遺物が今もあり興味深いです。多種多様な同行者や出会った方々が出てきて面白い。台湾の高齢者はほぼ皆日本語が話せ、日本名も持っています。また、ご承知のように中国との関係は今なお微妙です。蒋介石が国民党を率いて移ってきたけれど(外省人)、当然元々住んでいた本島人(山地人、内省人ともいう)との事件も見逃せない。勿論かつての総統、李登輝氏も登場し司馬氏とは親しい様です。
2)“穴”(小山田浩子著 新潮社)
最近の芥川賞(第150回)を受けた30歳の新進女流作家です。この本には3作載せられています。何れも現代の日常生活を描いていますが、mysteriousというか大げさに言えば怪奇的な題材が出て来ます。例えば、受賞作“穴”では河川敷の草原の気づきにくい穴、“いたちなく”ではイタチの断末魔の叫び、“ゆきの宿”ではアロワナです。文体は読みやすく、今後どういう作品を書いてくるのか楽しみではあります。
2014.2.3 最近見た映画
1)“小さいおうち”(山田洋次監督、2014年)
松たか子、黒木華主演。昭和10年代、日本国が戦争に突き進んでいる時代、女中、今でいうお手伝いさんのタキが経験したある家の物語。そこの奥さんの不倫を筋の基軸として戦争の悲しさ、侘しさを静かに描いています。タキは戸惑うが、勇気を出して奥さんに会うのを止める様進言する場面…、何とも言えない。全体のStoryとしては良いと思うけれど、学生の孫が祖母に盛んに自叙伝を書かせる動機が今一つ不明(なぜあそこまで勧めるのか)。自叙伝を絡めるのであれば別の方法があったのでは…。
2)“ゼロ・グラビティ-”(キュアロン監督、2014年)
主演サンドラ・ブロック。共演ジョ-ージ・クルーニー。この10年間で最も見ごたえがあったSF映画! 事故で宇宙空間に放り出され、スペースシャトルも大破してしまった宇宙飛行士と科学者の決死のサバイバル。極限状況下のサンドラの演技は迫真。リアルな宇宙空間や事故描写の殆どはVFXだろうが、それにしても、無重力状態での演技などどうやって撮影したのだろう。
2014.1.1 新年明けましておめでとうございます
あの東日本大震災以来、日本、政府は勿論国民も原発等のエネルギー問題を筆頭に、考え方の変化を余儀なくされています。それまで、温室の中にいるかの様な中途半端な気持ちで議論していたが、目が覚めたかの様に日本の将来を本気で思案し始めた気がします。少子高齢化による様々な問題も噴出しています。人間一人では生きて行けません。結局、お互い協力し思いやりを持って、かつ人として筋の通った生き方、つまり駄目なものは駄目、良いものは良いとする態度が肝心と思います。
2013.12.23 良い話です。“小さな鋸、海を渡る”
先日テレビで感動する良い話を伺いました。ある地方(新潟県)の一人でされている鋸製作所の小さな鋸が、あの有名なバイオリンの名器ストラディバリ―修繕職人(イタリア)の最高の道具で極めて有用との評価を受けているとのことです。
鋸は近年替え刃の良く切れて安価のものが出回り、従来型は売れなくなっていました。その鋸職人が各所に出かけ自ら販売しても駄目な徒労の日々が続いていました。ある日訪れた主婦が「小さな鋸はありませんか?」と尋ねた。彼女は人形を作る人でした。その鋸職人は鋸は大工さんが使うものと頭から決めていたので、目から鱗が落ちるように、それ以来、小さな鋸製作に力を注ぎました。それが当たりました。
確かに、小さな木を相手に細かい仕事をする人には便利ですね。世の中、知らないこと、盲点のような事、先入観に縛られていることがありますね。また、人の生活に必要、大切な物はどこに行っても、いつの時代でも変わらないということですね。(平成25年12月放送の“和風総本家”から。)
2013.12.8 最近読んだ本
1)“石川直宏 まっすぐに平常心”(馬場康平著 出版芸術社)
あるきっかけから、今まで読んだ事のないサッカーの本を読んで見ました。JIチームFC東京の石川直宏選手について、その生い立ちから交友、サッカーに対する向かい方、考え方そして当然日々の鍛練等を直に石川選手と接しながら克明に描いています。特に感ずるのは、やはりスポーツ選手の宿命とも言える“けが”とそれを克服すべく努力する姿勢、そしてそれを抱えながら痛みに耐えながらも動き回らねばならないという身体的、精神的葛藤です。
2)“傷ついた画布の物語 戦没画学生20の肖像”(窪島誠一郎著 新日本出版社)
著者は、言うまでも無く戦没画学生慰霊美術館“無言館”(長野県上田市)館主であり、作家水上勉の息子である窪島氏です。残された彼らの遺作と、妻や姉妹兄弟などの遺族の話しを纏めたものです。彼らの“まず生きて戻れない”という作画時の気持ちを考えると、様様胸に迫るものがあります。あの戦争で優秀な人々が沢山亡くなったという事がよくわかります。合掌。
2013.11.27 長谷川きよしコンサート
盲目の歌手、長谷川きよしを初めて生で聞きました。その声量の大きさやギターの上手さに圧倒される思いでした。丁度、僕と同年代で、ギャラリーも殆どが中高年者でした。「別れのサンバ」は彼の十八番ですが、聞いて良かったのは、「公園の手品師」と「コムダビチュート・いつも通り」です。前者はフランク永井の歌ですが、シャンソン風できよし独特の味が出ていました。後者は実はフランク・シナトラが歌って有名になった「マイウエイ」で、もともとフランス発の歌で、その内容も実は退廃的な結婚生活を歌ったものです。
2013.11.24 最近読んだ本
1)”肖像写真ー時代のまなざし”(多木浩二著 岩波新書)
書店でたまたま手に取って買った本です。肖像写真つまり人物写真にこだわった著名な写真家3人を取り上げ、論じています。19世紀後半のナダール(1820~1910)、20世紀前半のアウグスト・ザンダー(1876~1964)、20世紀後半のリチャード・アヴェドン(1923~2004)です。彼らが撮った数々の肖像写真、始めはブルジョワ階級者が多いが、市井の名もない人々も対象となっていきます。写っている人々の顔を見ていると、その時代の背景等が伺える。著者の言を僕なりに解釈すると、一人一人の顔には文章として表現しにくいが、見る者に感得せしめる、あるいは訴えるものがある。それは当然生きてきた体験等に裏打ちされたものではあろうが、実はその背景にはその時代時代の歴史が関連している、ということであろうか。
2013.10.16 最近読んだ本
1)”冬の旅”(辻原登著 集英社刊 伊藤整文学賞受賞)
初めてこの作家の本を読みましたが、引き込まれ一気に読み終わりました。文体が読みやすく、最近の(特に若い)小説家によく見られる変な 気張りがないのが良い。といってもこの著者は68才。storyとして確かに魅力のある筋立てだが、それ以上に人間とはどういう生き物であるか、考えさせられる。特に最終盤、主人公の内面に湧き上がる思いには哲学的なものがあり、道理には合わないが納得しないではない。もっとこの著者の作品を読んで見たいと思う。
2013.10.1 ”新しい機器”
器械の進歩は顕著なものがあります。今まで無かった全く新しい器械が登場することもあります。今回、そういう眼科機器を二つご紹介します。
まず光干渉断層計(OCT)というものです。細胞に光を当て、それに対する反射の違い(干渉現象)を利用したものです。眼底の網膜(フィルムに相当)は厚さ1mmしかありませんが、約10種類の細胞の層で構成されています。その各層が描き出される画期的なものです。
最近話題になる黄斑変性(眼底の中心の黄斑が傷む病気)では、どの細胞層に異常があるか一目で写ります。また、視神経線維がすり減る緑内障では、そのすり減り具合、程度が図示され、数値でも表わされます。今まで緑内障の進行は、主に視野の変化で見ていましたが、視野は患者さんの反応による大まかなものです。しかし、この機器により、緑内障が悪化しているのか、安定しているのか比較的容易に正確に判断できるようになりました。
自動車、携帯電話、電気炊飯器など、我々の生活は大変便利になっています。こういった一つの器械が実用化されるまでには、多くの先達の汗が流されています。まずアイデアが出、理論を完成させ、試作機を作り、医療用なら動物実験し、そして人間で試し問題ないとなれば世に出ます。最初のアイデアから20年近くかかるでしょう。
今後もますます生活は便利になり、難病にも良い治療法が出来ると思います。しかし、心の豊かさは別で、人に迷惑をかけず、周囲と協調し、他人を思いやり誠実に生きるという人としての原点は、未来永劫変わることはないでしょう。
2013.8.24 最近読んだ本
1)”牛乳屋テヴィエ”(ショレム・アレイヘム作 西成彦訳 岩波文庫)
あの今は無き名優森繁の”屋根の上のバイオリン弾き”の原作です。ユダヤの伝統と信仰を墨守してつつましく暮らす牛乳屋テヴィエとその娘達の結婚にまつわる物語です。イディッシュ文学(イディッシュとは”ユダヤの”の意)の金字塔とされていますが、そういう意味でなくとも面白いです。年頃の娘が4,5人いて、それぞれに結婚話が持ち上がり、各人各様の成り行きを辿るのだが、それをテヴィエが時にユーモアを交えて対応していく。ハッピーエンドもあれば、そうでない悲しい結末も・・・・。
2013.8.14~15.白老町&虎杖浜温泉訪問
お盆休みを利用し、こういう時でないとめったに行かないと思われる土地を訪問して来ました。今回は白老町ですが、以下ご紹介します。
①まず、ポロトコタン(アイヌ民族博物館):白老はご存じ方も多いですが、アイヌ集落のあった所で、その文化を今も大切に保存しています。アイヌ人の家であるチセ(茅葺きの家)が5軒復元してあります。丁度チセで古式舞踊が行われて いました。ポロト湖畔にあります。 |
②仙台藩元陣屋跡&資料館:ここが良かったです。幕末、蝦夷地を外国から守るため数か所に役所が置かれたが、ここは蝦夷地東側、つまり太平洋岸一帯の警備を命じられた仙台藩の陣屋跡です。資料館は一見すべきです! 歴史に埋もれた、あるいは運悪く犠牲となった人達(特に仙台藩家臣)のことがよく展示、描写されています。是非足を運んで下さい。
③虎杖浜温泉:弱アルカリ性で、無味無臭、飲用可(実際に飲んでみました)、皮膚病に良いらしいです。また、ここの”たらこ”は最高ですね。お土産にしました。
④クッタラ湖:魚介料理・居酒屋”池田”のご主人お勧めの湖です。残念ながら霧がかかっており対岸が見えずじまいでした。
2013.8.10 富良野グループ公演”ノクターン(夜想曲)”(富良野演劇工場)
富良野グループ観劇、ほぼ常連の私。今回は倉本聰書下ろし作品で、一昨年の三陸沖大震災&福島原発爆発の被災者を題材にしたものです。津波で二人の娘を亡くし、その後離婚する至った男と恋人を津波で失なった原因が自分にあるとして心を病む若い女性とその姉。男の離婚は、娘達の死について妻とお互いを非難し合い、結局仲たがいしたもの。死は原因、誘因が何であれ取り返しのつかない事態。それを責め合うこと・・・・・・。無意味なことだろう。責め合うのでなく、省みることが大切だろう。
2013.7.28 最近読んだ本
”外来でのコミュニケーション技法”(飯島克己著 日本医事新報社)
以前から机上に”積ん読”状態だった診療に関する本です。良い傾向ではないのですが、僕はあまり診療等に関係するものは読まない方です。ですが今回ようやく読んで見ました。外来で患者さんに接する時の問診時の心構えに関する本です。内容は読むと当然のことが書かれていますが、仲々、毎日毎日忙しい中それらを実践することは難しいことです。テクニックはあるでしょうが、尽きる所、その患者さん(の病気、病状を)を”良くしてあげよう”、”治してあげよう”という気持が大事なのだと僕は思います。
2013.7.15 旭川市内、街歩き
趣味の一つであるWalkingしながら、見つけたものです。
日本醤油工業株式会社:創業が昭和19年ですから、70余年になる旭川の老舗です。昔ながらの建物で伝統の味を守りながら脈々と作り続けて来ました。中の売店には多くの醤油関連の製品が所狭しと販売されています。ドレッシングを買って来ましたが、期待通りでした。
2013.7.3 劇団四季のミュージカル”異国の丘”(東京浜松町、四季劇場)
昭和10年代、中国等の占領、支配を目論んだ日本政府や軍部。悪化の一途を辿る日中関係の改善を図った一日本人(実は時の総理大臣の息子)と中国蒋介石の姪との恋愛を描いた悲劇。彼はシベリア抑留者となり、そこで病死。現実にこのモデルとなった人物がいるらしい。また、劇中には歌謡曲「異国の丘」の作曲家である(故)吉田正も出て来ます。最近、涙脆くなった自分。ポロポロしている顔を一緒に行った娘に見られてしまいました。まあ、いいか。
2013.6.25 最近読んだ本
”貝と羊の中国人”(加藤徹著 新潮新書)
今や世界の経済に大きな影響力を持つようになった中国、その中国人の性向とか気質などについて書いた本です。貝とは財、貨、買、賭などの漢字に含まれる貝、羊は義、美、善、養などの羊。著者は、前者は有形の財貨を好んだ殷人の文化、後者は無形の主義を重んじた周人の文化と結びつけています。あの「巧言令色、少なし仁」など論語の孔子は紀元前500年頃の人物です。我が国がようやく歴史の舞台に出てくる卑弥呼は紀元後の230年頃。全く歴史の古さ、深さでは中国には敵いません。現在、中国は先進国には含まれていませんが、それは、途方もない広い国土や人口、民族の多さが関係していると思います。この本読んで中国、そして中国人を見る目が変ります。
2013.6.2 ”「無言館」所蔵品による〈戦没画学生・戦場からの絵葉書〉展”(旭川市 三浦綾子記念文学館)
長野県上田市にある無言館の展示品です。表題の通り、戦没画学生が戦地から家族などへ宛てた絵はがき類です。いずれも、「自分は元気だ、皆、(特に子供や妻、母に)、元気でやってくれ」という内容が殆どです。美大や芸術学部を卒業(繰り上げを含む)してすぐ召集された20代、30代前半の人達です。政治の体制により翻弄されたというか、死ぬ必要のなかった人たちで、何とも無念というか言葉がありません。(6月9日まで開催。
2013.5.31 最近読んだ本
”司馬遼太郎の世界”(文藝春秋編)
司馬遼鎮魂のため、彼の思い出から彼の文学の魅力等、多岐に渡り記述されています。彼は子供の頃から大人になってもですが、(確か大江健三郎と同様)図書館に入り浸りで、もう読む本がなくなったそうです。そのように長い長い知識の集積が、あの博識につながったのですね。学者ではないけれども、歴史時代小説というか大衆文学的な作家ですが、文化勲章を授けられた事に私は納得しています。また、私が一番感銘を受けた小説は長岡藩家老河井継之助の”峠”です。是非、お読み下さい。
2013.5.10 ウイーン少年合唱団公演(旭川市大雪クリスタルホール)
(開館20周年記念公演)日本で人気が高いことを証明するようにチケット完売、満席でした。やはり、合唱の歌声は素晴らしいものでした。声変わり前の少年の声は、透き通るようですね。団員には日本人あるいは韓国人と思われる少年や黒人の子もいて、世界各国から集まっている様です。曲目は定番の”美しく青きドナウ”、”トリッチ・トラッチ・ポルカ”、”ローレライ”などの他に、日本の”ふるさと”や”花は咲く”で、良い”命の洗濯”になりました。
2013.5.4 佐藤忠良展(札幌芸術の森美術館)
生誕100年を記念して、彫刻家佐藤忠良展が開かれており見て来ました。彼の彫刻の多くは人、特に女性や子供をモデルにしたもので、中でも若い裸婦が抜きん出て多いです。その裸婦像も嫌らしい感じはなく、健康的で、その体の線もきれいに出ています。苦労した母の顔像は、欧州で展示した時、絶賛を浴びたとのことで、確かに彫刻とは思えない程、瞼や頬などに人として、苦労した生活感が滲み出ています。(5月26日まで開催) それにしても、まず最初に粘土で作製した像が、ブロンズ像に完成するまで、これ程数多の職人の手を経て成るとは・・・・。
2013.5.3 いわさきちひろ展(北海道立近代美術館)
連休を利用して見て来ました。いわさきちひろは、言うまでもなく、あの独特のタッチの水彩画、主に子供たちを描いて来た画家です。当院の待合室には、彼女の水彩画を絵皿にしたものを(毎年新たに発売されるので、)自動ピアノの上に飾っています。毎年、ちひろの絵皿が替っているのに気づいている人は何人いるだろうか。しかし、ちひろが若くして共産党に入り、あの国会議員の松本善明氏と結婚していた事は初めて知りました。
2013.4.12 最近見た映画
”ポンペイ最後の日”
2013.4.8
先日、テレビの番組で“視力が良くなる目薬”ということが話題になり、各地の眼科に問い合わせがありました。それは、ドライアイの点眼薬のことでした。ドライアイは、白目や黒目の表面に微細な傷が出来、(つまり眼表面が荒れた状態になり)、目に膜が張った様な違和感を感じるものです。それがその目薬で改善して見易くなり、視力が良くなったように思えるのです。このように、マスコミ等のメディアの誇張表現によって、医療機関が迷惑を被ることがあります。
ここで、目に関して、一般に流布している根拠のない言説(言い伝えというか風評)を取り上げてみましょう(以下は主に成人についてで、視力の成長過程にある子供は、状態により一概には言えません)。
「メガネを掛けたり掛けなかったりすると、目が悪くなる」:これは証明されてなく、近視や乱視、白内障や緑内障などの眼病が、メガネを掛けたり掛けなかったりで悪化するというデータはありません。メガネを掛ければ見え、掛けなければ見えないだけの話です。ただ、ご承知のように人間の情報の80%は視覚から入りますので、人の表情や文字、景色等が見えると、QOL(生活の質)の向上につながります。
「テレビばかり見ていると、目が悪くなる」:テレビを見ることによって、眼病が悪化するという報告もありません。むしろ、目への影響よりも、毎日朝から晩まで全て受け身のテレビ漬けでは、頭にあまり良くないというか、認知機能に何らかの影響があるかもしれないという事は危惧されます。
白内障の手術をして、せっかく見える様になったのに、あまり使わない(大事にしている?)という患者さんがたまにいらっしゃいます。目は見るために使うものですので、どんどん使って下さい。「目の酷使で目が疲れて、眼病になる」という事も証明されていません。例えば、白内障の主な原因は加齢と糖尿病で、眼の酷使でなると書いてある本は見たことがありません。極端に言えば、一生目を使わなくとも、なる人はなります。(地元タウン紙 せせらぎタウン 平成25年4月号)
2013.3.16 最近読んだ本
1)”日本の宿命”(佐伯啓思著 新潮新書)
マスコミ等での橋下現象(大阪市長の橋下徹)をまず取り上げ、そして日本という国についてcommentしたものです。佐伯氏の言わんとしている事は2つに集約出来そうです。”明治維新時、攘夷という精神から開国し、近代化、西洋化の道に走った日本。それが結局は、矛盾する様だが、列強との戦争を起こす契機になった。よく言われる軍部の独走とか統帥権の独立だけが二次大戦の原因ではない。戦後、日本は平和になり経済的な繁栄を示し、更に皆、常にアメリカに近づこう、アメリカをモデルに模倣、つまり何かにつけamericanizeです。しかし、今の状況が、徴兵された多くの若者の犬死、総計300万とも言われる死者の犠牲の上に成り立っている事を、戦後本当に正当に弔ったのか、疾しさみたいなものはどうなったのか?と問うています。
2)”金正日と金正恩の正体”(李相哲著 文春新書)
初代の金日成、次の金正日、金正恩について詳細に記しています。読んで印象に残った事は以下の通りです。まず、北朝鮮の経済規模(GDP)は、日本のトヨタ自動車の10分の1に過ぎない小国であること。しかし約120万人もの軍隊を抱え、軍事費にそのほぼ半分以上を使っています。そして、金日成の後を継いで先年亡くなった金正日は恐ろしい人で、粛清に次ぐ粛清を重ね、現在の金氏の独裁体制を作り上げた。中国がどの程度、支えているのかはっきりは分からない。北朝鮮は辛うじて体制を維持しているが、国は疲弊し人民は飢えている。
そして著者は次のように指摘しています。”忠臣達は、父の金正日に対しては長らく運命を共にして来たので、恩義を感じているだろうが、子の金正恩には恩を着せようと考えるだろう。この点が決定的に違う”と。これが今後、金正恩にどういう影響を与えるであろうか。
2013.2.26 最近見た映画
1)”半落ち”(2005年)
寺尾聰主演。2003年ベストセラーとなった横山秀夫の話題作。2005年日本アカデミー賞最優秀作品賞。ようやく見れました。予想したよりhumanisticでした。半落ちというから、容疑者を自白させるため、もっとどろどろとした内容を予想していました。息子が白血病になり、骨髄移植のdonorが結局見つからず死ぬ。そのせいか、妻は認知症となる。妻からの嘱託殺人の様だが、はっきりしない。(息子への罪滅ぼしのため、自分は骨髄移植をして息子とほぼ同年の少年の命をを助ける。) 裁く裁判官も、実は家庭に老いた認知症の父を抱えて四苦八苦している。結局、執行猶予の付かない有罪判決が出る。容疑者も時機を見ての自殺を企図していたが、自分の移植で助かった少年と出会う。骨髄移植、認知症、嘱託殺人の量刑等、現代社会の抱える問題を考えさせてくれる。容疑者役の寺尾は適役だ(最優秀主演男優賞受賞)。
2)”旅愁”
3)”赤い風車”
子供の頃の事故で身長150cm位しかなかった(現在では遺伝疾患と考えられていますが)画家ロートレックの話しです。毎日酒場に出入りする酒浸りの中、二人の女性との恋愛を中心に描いています。伯爵家の息子でありながら、勘当され30代で世を去ります。(上半身は普通、下半身がほとんど成長していない。)身体的なdisadavatageから劣等感を抱くが、しかし、画家として特異な作風で、稀なことだが生前にルーブル美術館に認められる。身体的に外見上どうしようも無い欠点を持つ人間が、普通の当たり前の人生を送れない・・・・・。当然のことですが、我々一般人、周囲の取り巻く人達は、少なくともその肉体的欠陥を問題にせず(見て見ぬふりをして)、普通に接する事が重要でしょう。
2013.2.1 最近見た映画
1)”間諜”(1937年)
ヴィヴィアン・リー主演、コンラート・ファイト共演。若き日のヴィヴィアン・リーは容姿も演技も問題なく、好感が持てる。
2)”茶碗の中の嵐”(1937年)
ヴィヴィアン・リー主演、レックス・ハリソン助演。
3)”革命児サパタ”(1952年、監督エリア・カザン)
マーロン・ブランド主演。メキシコ革命時に活躍したサパタという人物の物語。殺されても、未だ死んでいないと民に言われて伝説となった。一見すべき映画。
4)”霧の波止場”(1938年)
ジャン・ギャバン、ミシェル・モルガン主演。共演のミッシェルは大人びた美人、18歳には見えない!
5)”ジュリアス・シーザー”(1953年)
マーロン・ブランド主演。ジェームス・メイスン共演。
6)”河”(1952年、監督ジャン・ルノワール)
インド、ガンジス河傍に住む、仲の良い、大人になりかけの女の子3人の初恋を描いているが、実は主題はここに住む人たちとその生活や自然。隣家に突然やってきた一人の若き青年をめぐる、女の子3人それぞれの付き合い方を描いている。ジャン・ルノワール監督の映画は色美しいと淀川長治氏は言っているが、確かにそうです。この映画の主題は、3人の女の子の三者三様の初恋の態様ではなく、最後のナレーションで言っている次のことでしょう。”河は絶えず流れ、世界も動く。天を太陽と月と星が回り、一日が終わる。そして終わりが始まる”
7)”アンナ・カレニナ”(1948年 ジュリアン・デュヴィヴィエ監督)
ヴィヴィアン・リー主演。
8)”嵐が丘”(1939年 ウイリアム・ワイラー監督)
ローレンス・オリビエとマール・オベロン主演。E.ブロンテの有名な小説だが、内容は濃く、ここまで男女お互いの一途な想いが深いと厄介ですね。恋の恐ろしささえ感じる。裏話として、共演したこの二人、反りが合わず、その愚痴をオリビエは当時愛人だったヴィヴィアン・リーに打ち明けた。ビビアンは急遽英国からアメリカに駆けつけた時、たまたま”風と共に去りぬ”の火災シーン撮りを見ていて、その主役に抜擢されたとのこと。
2013.1.14 富良野塾公演”明日、悲別で”観劇
2013.1.13 フェルメール展鑑賞
2013.1.2 最近読んだ本
1)現代評論集(現代日本文学大系 97 筑摩書房)から
①田中耕太郎 ”ベートーベン的人間像”
僕は、クラシック音楽については決して詳しくなく、人に言える程のものを持っていません。以下はあくまでも僕の純粋な感じた事のみを述べています。ベートーベンの音楽は以前から、モーツアルトやバッハなどの彼の前後に輩出した何れの作曲家とも異にしていると思っていましたが、この田中氏も同じ見方をしており、少し安堵しました。田中氏は次のようにベートーベンを評価しています。”運命の力や世間的暴力から人類を守り、悩み苦しむ者の涙を拭い去り、永遠の幸福の世界への道案内の役割を勤めている。そこに尽きない魂がある。一個の人間でこれ程偉大な寄与を成した者が彼以外存在するであろうか。”と。僕は、彼の音楽にはモーツアルトのような明るさはないけれども、生きようとする者へ勇気づける力があり、チャイコフスキー様な迫力もあるけれど、派手な孤高の響きは無く、共に手を握り合うようなfriendlyさがあると、感じています。
②吉田秀和 ”ソロモンの歌”
③石田英一郎 ”日本的人間関係の構造”
2)”本郷界隈”(司馬遼太郎著 街道をゆくシリーズ №37 朝日文庫)
この街道をゆくシリーズには、当然その土地縁の人達が登場してくる。この本郷界隈には、樋口一葉、漱石、最上徳内、緒方洪庵などが出て来ます。しかし、いつも読んでいて興味津々になるのは、世間の表舞台には出ていない隠れた一角の人物のことです。例えば、この本では高島秋帆(西洋砲術家)、司馬凌海(通訳)などです。
2013.1.1 新年明けましておめでとうございます。
新しき年、単に時間が過ぎただけですが、やはり一つの区切りで気分も新たになりますね。どういう年になるか、自然災害、経済等のことは自分では如何ともできませんが、個人的なことはやはり自分で良い年にしようという気概が必要でしょう。”棚からぼた餅”でなく、何事も自分から引き寄せなければなりません。
2012.12.31 今年も暮れようとしています。
東北の方々は復興、復旧を目指して大変のことと思います。まだ、避難生活の方もいらっしゃるでしょう。日本には原発やらデフレ脱却、社会保障、竹島や尖閣諸島など、多岐に渡る多くの問題を抱えています。世界的に見ても中東情勢や経済不況など色んな問題があります。来年はどういう年になるでしょう。まずは皆さん、良い年をお迎え下さい。
2012.12.1 iPS細胞と眼
京都大の山中教授がiPS細胞の開発で、ノーベル賞と文化勲章を受けました。画期的でかつ人類に幸福をもたらす有用な開発や発見は一朝一夕では得られず、幾多の試行錯誤を経た努力の賜物です。幸運とは単なる“棚からぼた餅”ではなく、日々そのことに集中し精進していた人にだけ降りて来るぼた餅と、僕は思っています。
新聞でも報じられましたが、いよいよiPS細胞の人眼への臨床実験が近々開始されます。網膜の中心である黄斑が傷んでしまう黄斑変性という病気が対象です。これは、以前から類似の基礎実験が学会で報告されていました。この加齢黄斑変性は欧米では失明原因の第1位で、日本でも食生活等の欧米化のせいでしょうか増加しています。どういう結果がでるか本当に楽しみです。
もう一つの目の難病、網膜色素変性も近い将来、対象となります。これは眼底の網膜全体が徐々に駄目になるもので、視野狭窄と夜盲が特徴で、夕方や夜道は非常に見づらくなります。今は服用しないよりは少し良いかもしれない程度の内服薬しかなく、悪化する人が多いです。将来改善することが出来れば患者さんにとっては大きな福音となります。
2012.10.31 最近読んだ本
1)”白衣の神様”(結城五郎著、角川春樹事務所刊)
著者は千葉に住む内科開業医です。これは短編集(5話)ですが、何れも読み応えがあるドラマで飽きさせません。勿論いずれも医療絡みの話しで、例えば若い女性癌患者への告知の問題、あくまでも治療を拒む癌の父親を持つ医者の話などです。病気関係のことなら日本中に書き尽くせないろんなドラマがあることでしょう。著者の経験の基づくものもあることでしょう。
2)”未完の贈り物「娘には目も鼻もありません」”(倉本美香著 産經新聞出版)
本の帯にもあるように、まさに親、特に母親にとって、あるいはこの子本人にとっての壮絶な記録です。両眼の無眼球症と顔面の先天性多発奇形で生まれた子ですが、顔面形成手術の繰り返し。ここまでする必要があるのか?考えさせられます。ましてや医療費の高いアメリカです。妊娠からお産まで担当した産科の医師との対決も書かれています。この医師はここまでanomalyがあるとは想像してしていなかったのが本当でしょう。万が一の予期せぬことは、医師として携わっている限り遭遇する可能性は誰にもあります。それにしても、この母親である著者は、並行して現在二男二女の親にもなっており、患児との闘病も考えると、その頑張りには賛辞を惜しまざるを得ない。
2012.10.5 最近読んだ本
1)”舟を編む”(三浦しをん著 光文社)
今年の本屋大賞第一位ということで期待してましたが、外れでした。ストーリーとして普通である上に、盛り上がりもなかった。辞書を作るというのは、説明されるまでもなく地道に、本当にこつこつと用例等を集めなければならず大変努力のいる仕事です。それにしてはその激しさが伝わって来ません。まあ、娯楽的に読むのには丁度いいかも。
2)”ポケットの中の啄木”(白竜社編)
最近、自分に俳句の才が無いことがほぼ判明し(自己判断で)、短歌に興味が移りました。そこで、歌人啄木の歌を150首集めた手軽な本を読んでみました。啄木の歌は、字余りや字足らずがまず無くリズムが良い。それにも関わらず、琴線に触れる歌が多く、天才と言われる所以でしょう。しかし、内容は暗く家庭を含む生活苦のことが多くやはり薄幸の人ですね。
3)”アポロ13号奇跡の生還”(ヘンリー・クーパー著、立花隆訳 新潮社)
日本では月に初めて着陸したアポロ11号の方が有名で、このアポロ13号の件はあまり知られていません。実際、私もこの13号のことは、恥ずかしながら覚えていません。映画化され、私には非常に印象的でしたので、詳細を知るため読んでみようと思っていました。立花隆の訳が上手なのか一気に読み終えました。出発2日後、地球から33万kmのところで2つの酸素タンクの全てが爆発、3つあった燃料電池のうち2つが駄目になったのです!!ここからNASA総力上げて、帰還のための闘いが始まりました。支援船、月着陸船、司令船のメカ、電気、物理、天文等各分野のspecialistが知恵を出し絞りました。当然、対策方法が正しいかどうか、居残りの宇宙飛行士が模擬実験を実施します。何人も名人も100%順調には行かない。何かトラブル、アクシデントが起こった時に、何事も無かったかのように成功裏に終われる者が真の名人(手術でいえば名医)と言えるでしょう。
2012.9.22 最近読んだ本
”危機の指導者 チャーチル”(富田浩司著 新潮選書)
以前から興味があったのですが、大戦時のイギリスの宰相チャーチルについて詳しく記しています。伝記というより、主に彼の成人後の政治家としてどうであったかについて詳述しています。著者は以下の点を強調しています。①大戦時下、ヒットラーというファシズムの独裁者に対抗するには彼しかいなかった。平時ならハリファックスとかチェンバレンなど首相適任者はいた。②軍人から若くして政治家になった。他の職業についたことはなく、政治家歴は極めて長い。③周囲の助力を最大限使って、膨大な情報収集力があった。④若い時から読書家で、ご存じのように大戦の回想記はノーベル文学賞をもらっている。⑤また、彼の弁舌は聞く人の心動かし、それもノーベル文学賞の受賞理由になっている。⑥二次大戦時、国民の意気を鼓舞し、その萎れそうになる気持ちを振い立たせたのは彼の演説であった。著者はこう書いています。”いかなるコストを払ってでも、この戦争に勝利する、という目的を明確化したチャーチルの演説は国民の迷いを払拭し、その総力を結集する上で計り知れないものであった。”これらよりチャ-チルの人となりが窺われる。確かに、リーダーたる者、自分について来いというものを持ってないと駄目であろうし、本人に自信のない決定についていく人はいません。
2012.9.17 特別展 ”絶滅哺乳類の世界”(旭川市科学館サイパル)
恐竜絶滅後の哺乳類の化石等の展示です。ところで、ランチョ・ラ・ブレア発掘地というのをご存じでしょうか?私も初めて知りました。アメリカ、ロサンゼルス郊外に地下から湧き出たタールが沼沢地となっているところがあります。そこは一種の底なし沼状態で、古代より動物は一旦入ると抜け出せず、古代より閉じ込められた哺乳類(それを餌に食おうとした動物もいる)の全身骨格が数多く発掘されています。人間も一体のみ見つかっています。
2012.8.23 N響、旭川公演
圧巻でした!!何といっても、プログラムの一つに私の大好きなチャイコフスキーの交響曲第5番がありましたから。特に弦楽器グループの一体感はメリハリ共に素晴らしく、音が一つになって会場の壁をこれでもかと壊さんばかりにズシリと響いていました。もう一曲は有名なチャイコフスキーのピアノ協奏曲で、ピアノは小山実稚恵さんで、言うまでもなくばっちり。得した1日でした。(旭川市文化会館にて)
2012.8.15 旭川市の風景
旭川市は北海道のほぼ中央で、雄大な風景が広がり、本州の方々には、必ず気に入って頂けると確信しています。以下、気ままに撮ったものです。
何処までも広い青空と広がる水田。旭川市のある上川地方は稲作百万石と言われています。
水田地帯の中の旭川空港。最近は韓国便など少々国際便も出ています。
”プラタナス通り”。旭川医大から街中心部へ向かう道の一つにプラタナス並木通りがあり、名所になっていて、毎年この名を冠した文学賞が募集されています。次の写真には天文台が見えていますね。これは旭川市科学館”サイパル”です。ここのプラネタリウムを是非楽しんで下さい。
212.8.11 最近読んだ本
1)室生犀星著”幼年時代”、"或る少女の死まで".”性に眼覚める頃”
来月、眼科学会で金沢に行くので、金沢縁の詩人、作家の室生犀星の著作を読んでみようと思った訳です。本が氾濫している今日、何を読むか、何を読んでいいのか迷うのは私一人ではないでしょう。”ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの”という詩から連想されるこの寂しさは、彼の恵まれない生い立ちによるものの様です。つまり、生後すぐ養子に出され、その養母との関係も悪く、実母とはその消息も不明で生涯一度も会うことは無かったのです。この二つの著作は彼の殆ど自叙伝とも言えるようで、文体は流石に流麗であり、漱石や芥川のような難解な言葉も出てきません。
2)”本所深川散歩、神田界隈”(司馬遼太郎著 街道を行くシリーズ №36)
言うまでもなく、東京(江戸)の深川と神田について書いたものです。特に神田の紹介は圧巻です。維新後、神田に多くの専門学校や法律学校が創られ、現在に至っていることを細かに、本当に詳細に記しています。人物紹介、一般の人に知られていない”知る人ぞ知る”一角の人物を多く紹介しています。
2012.8.6 北日本フィルハーモニー管弦楽団コンサート
2012.8.5 富良野のかなやま湖へ
富良野の奥のかなやま湖へ行って来ました。森閑として熊がひょっこり出てきそうでした。
金山ダムによって堰き止められた人造湖ですが、冬のワカサギ釣り、夏のキャンプ、カヌーなど楽しめる所です。
2012.7.14 富良野のラベンダー
今盛りのラベンダーを見に、あの富田ファームへ行ってきました。私はラベンダーの香りが好きで、当院の外来トイレ等に置いてあります。
2012.5.8 最近読んだ本
1)”明日の記憶”(荻原浩著 光文社文庫)
以前映画にもなった若年性アルツハイマー病患者の物語です。確か渡辺謙主演と思います。若年性といっても単に発症年齢が65才未満ということであって、病態が異なるわけではありません。病名を告げられた後、本人の葛藤や心配する妻との一時的な確執は当然として、場面として多いのが会社での出来事(会議を忘れてしまう、集合場所へ迷って行けない等)です。誰でもが避けたい病気ですが、現在、この発症原因も不明です。当院の患者さんにも認知症の方は少なくありませんが、本当にわかっていないのでしょうか。潜在する意識下にはある程度、状況を把握している可能性は否定し切れないのでは?
2012.5.4(金)~6(日) GWに函館へ。土方・啄木浪漫館がお勧め!
今回、旭川から函館往復するに当たり、GW特別割引チケット3日間使い放題8000円というのが発行され、非常にお得でした!!しかし、登別室蘭ー伊達間で雨のため通行止めに遭い、函館到着に時間かかりました。しかし、五稜郭公園は桜満開で壮観。美味しい活イカなども堪能しました。函館では、あの啄木が親しみ、”東海の小島の~”と詠んだ大森浜にある土方・啄木浪漫館を見てきました。ぜひ訪れて下さい。土方歳三、戊辰戦争、啄木の生涯など詳しく知ることが出来ます。復路は、いつも静かな佇まいの洞爺湖に立ち寄ってきました。
”東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる”
2012.5.3 最近見た映画
”幕末太陽傳”(昭和32年川島雄三監督)
フランキー堺主演。他にも錚々たる顔ぶれが出演しています(南田洋子、左幸子、二谷英明、石原裕次郎など。) ぜひ見るべき邦画の一つとされている様で、あの幕末の何か気忙しい暗い雰囲気や時代考証はよくは出来ていると思います。でも私個人的には、ファンには申し訳ないですが、それ程の感激は受けませんでした。
2012.5.3 気に入った春の俳句10句
人の世にサイレン頻り鳥雲に(横山康夫)
雀の子そこのけそこのけ御馬が通る(小林一茶)
女ゐて鰊番屋の戸によれる(清崎敏郎)
女医に目を覗かれてをり木の芽晴(千田一路)
入学のおはじきに記すフルネーム(山崎篤)
花嫁は七つ年上柳絮飛ぶ(藤平寂信)
チューリップ抱いて行く青い垣根の鱒二の家(橋田サカエ)
風光る路上の喧嘩見て過ぎぬ(原子公平)
花冷えや箪笥の底の男帯(鈴木真砂女)
ほたるいか目玉の芯の噛み残る(飯沼衣代)
2012.5.1 眼の加齢変化(眼の不思議発見 №42)
消費税アップの議論が喧しく、いよいよ法案が上程される模様です。実際、逆ピラミッド型の超高齢化社会を迎え、年金、医療費等の社会福祉関連の財政難の中、止むを得ないでしょう。高齢になり幾つもの疾患を抱えて通院している方は少なくありません。
白内障に代表される加齢による眼疾は、他科に比べ多いかと思います。白内障の他には、硝子体剥離による飛蚊症、一部の緑内障、視野中央が見えなくなる黄斑変性、瞼が下がってくる眼瞼下垂、鼻涙管閉塞による流涙症(涙目)などが挙げられます。白内障(水晶体の濁り)についてはもう詳しくお話するまでもないでしょう。時々、片目ずつ見て、霞んでいないかどうか(霧視)確認して下さい。硝子体剥離による飛蚊症は大体60歳前後から始まることが多く、突然、目の前にゴミや蚊の様なもの(円形のことが多い)が現われます。まれに網膜裂孔や網膜剥離を起こすことがあり要注意です。緑内障は初期は全く自覚症状はなく、徐々に徐々に視野、視力が障害されるものです。
高血圧や糖尿病などの生活習慣病と違い、残念ながらこれらは専門医である自分でも予防は困難です。40才を過ぎたら目の検診をお勧めします。(地元タウン紙”せせらぎタウン”平成24年5月号に掲載)
2012.4.1 最近読んだ本
1)”サダト自伝ーエジプトの夜明けをー”(アンワル・エル・サダト 朝日新聞東京本社外報部訳 朝日イブニングニュース社刊)
あのキャンプデービッド会談の成果でノーベル平和賞をもらった元エジプト大統領の自伝です。自分の生い立ちから青年将校時代、そして、政治の世界に入ってからの葛藤、同僚や取巻きとの確執などを克明に記しています。私からすればよくこれだけ日付なども含め昔のことを覚えているなと感嘆します。特に圧巻は後半のイスラエルとのパレスチナ・中東戦争の記載です。冷戦時代のアメリカやロシア、その他多くの周辺諸国との関係、それら各首長との駆け引きなど引き込まれてしまいます。ただ、400ページに及ぶ大冊です。
2)”肥前の諸街道”(司馬遼太郎著、街道を行くシリーズ №11)
佐賀県から長崎にかけて、江戸時代一手に、特にポルトガルやオランダとの通商を行った平戸、そして後年長崎へと変遷するその歴史的実情を、当時の大名らのキリシタン改宗と不離の関係であったことと絡めて詳細に記しています。司馬遼にはいつも感心させられるが、彼は地名について造詣が深く、今回も佐世保、長崎などその由来を詳しく述べています。
2012.4.1 最近見た映画
1)”はやぶさ 遙かなる帰還”
2)”おかえり はやぶさ”
あの国民に感動を与えた小惑星探査機はやぶさ帰還の映画化です。両者当然脚本が違い、前者は一女性新聞記者が、後者は実際に携わったJAXA技術者が主人公です。いずれもやはり子供にも分かり易いような内容になっています。しかし、”はやぶさ”現象があってそれほど時間も経たないうちに映画を作ってしまうその商魂逞しさは必ずしも賞賛に値するものではなく、じっくり腰を据え時間をかけてこれぞという映画を作って頂ければ、もっと違う、感動的なものが出来たのではないかと思う。
2012.2.29 最近読んだ本
1)”遠野物語”(柳田国男著)
よく知られている柳田国男の本です。以前から読もうと思っていて、ようやく出来ました。彼は官僚で、始めはその傍ら民俗学的な興味から段々専門家になったとのことです。やはり何事も”好きこそ物の上手”ですね。遠野物語自体は、予想したような内容でオシラサマ、、座敷わらし、川童(かっぱ)等々でそれ以外に不思議な話しが盛り沢山。しかし、これらの言い伝えと言える話しは遠野地方に限らず、日本国内至る所にあると思います。たまたま、佐々木鏡石なる稀有な伝承人が、著者と運命的な邂逅したためでしょう。
2)”宇宙人としての生き方ーアストロバイオロジーへの招待”(松井孝典著 岩波新書)
天文学と宇宙的な意味での地学に知識がないと十分に理解できない難しい内容でした。特にビッグバンからの地球という惑星の成り立ちなど。それとは別に、この本は地球上の人類を宇宙から俯瞰して、生物の一部として捉えた場合(生物圏の人類)、知的生命体として捉えた場合(人間圏の人類)の生き方を独特の理論で論じています。著者は言う、「我々が、宇宙の中で人類として人間圏を作って生きるということは正しい選択だが、生き延びるという選択としては非常に危険なことをしている。文明が発展してあるレベルに達すると宇宙や地球、生命の歴史が解読出来るようになる。しかし、その一方で同時に地球環境問題など我々自身の存在がその存在基盤である地球を揺るがす問題を生じるー文明のパラドックスー」と。
2012.1.28(土) 奏でる彫刻たちー音楽と彫刻のコラボレーション
(旭川市大雪クリスタルホール )
出演:ピアノ菅野雅紀、ソプラノ吉川具仁子、市内2小学校の合唱団、彫刻家中垣克久
ホール入り口や舞台に木彫やブロンズの彫刻が並べられ、それを見つつ、ピアノやソプラノ独唱、小学生合唱団の歌声を楽しませて頂きました。演奏された曲は、武満徹、中田喜直などの日本の作曲家の他、後半はフォーレ、ドビッシー、ラフマニノフなどでした。吉川具仁子の声はホールによく響き、帰り際、ご本人にその旨お伝えしました。また、小学生合唱団の澄んだ声は期待以上のものでした。また、中垣のブロンズの彫刻は、素朴だが思想が感じられ一見の価値があります。
2011.12.24 最近読んだ本
”7つの習慣ー成功には原則があったー”(スティーブン・R・コヴィー著 J/スキナーおよび川西茂訳)
ようやく自分の座右の書と言えるものに出合った気がします。人生は人間関係がほぼ全てと言えます。周囲には、医者の場合は患者であり、商売をしている方では顧客。そして妻や夫、親、子等の家族、そして友人、仕事の同僚達、仕事関係の業者ら等々です。生活信条として、人それぞれ重きを置くものが異なります。例えばとにかくお金が中心の人、家族が中心、仕事人間と言われる仕事中心の人、他に宗教を生活の中心にしている人など。しかし、著者は言います。①“原則”こそ中心にすべきであると。そして②誠実であること、③人間関係としてwin-winに持っていくこと。その他、生きる良い指針が得られます。函館のTさん、是非読んで下さい。
2011.11.29 上杉春雄のピアノ・リサイタル、”バッハの平均律”鑑賞(旭川市、木楽館)
ご存知の方も多いかと思いますが、立派に医師とピアニストを両立させている上杉氏です。バッハが得意ということですが、私のようにクラシックを余り知らない者にとってはなんとも批評できかねます。
2011.11.26 観劇”炎の人ゴッホ”(富良野演劇工場)
市村正親主演、富田靖子、益岡徹出演。三好十郎原作の戯曲の再演とのことです。あのゴッホの生き様を熱く劇化しています。ゴッホが元宣教師であったとは知りませんでした。住む田舎町での労働争議には、宣教師として、自分の生活を犠牲にして率先して協力したそうで、この特異な芸術家の別の一面を見ました。絵画制作の夢を諦め切れず、しかし(どこまで事実に基づくかわかりませんが)底辺の女達や酒との日々、同居するゴーギャンとの確執などが描かれています。彼は一事に真摯、つまり一途な性格なのでしょうが、それも昂じればば病的な執着気質です。出演者皆、芸達者で好感を持てましたが、辛口批評をするなら、主演市村の言葉が聞き取りづらかったことと、(これは脚本の問題でしょうが)会話が途切れず矢継ぎ早で、聞いていて疲れました。もっと落ち着いた感じにならないものか。満席で約3時間、終了は午後10時半でした。また、以前からファンの富田靖子を生で見れて感激。
2011.11.20 最近読んだ本
1)”国家の命運”(藪中三十二著 新潮新書)
前外務事務次官による、主に自分が携わった外交交渉等を軸に日本のあり方を記したものです。まず読後感ずるのは英語、英会話が達者でないと勤まらないということ。そして彼が第一に言うのは、会議のテーブルに付く相手国の人達との信頼関係が重要ということ。その上で、始めは言うべきことを言い、要求すべきことを要求して、お互いある程度の妥協点を見つけていく。今、国を二分する程の論議をされているTPPなどの問題は参加していくのが世界の流れの様ですね。
2)”ガリレオーはじめて宇宙を見た男”(ジャン・ピエール・モリ著 遠藤ゆかり訳 創元社ー知の発見双書140)
言うまでも無く、望遠鏡等の観察により、当時異端とされた地動説を決定的にした人物。通説を覆すことはかなり難しいことだが、それには確固たるEvidenceが無いと説得できない。更に当時は教会という途轍もなく大きい権力との闘いがあった。異端審問所から終身刑を言い渡されたが、1年後に釈放され最悪の結果にならなかったのは喜ばしい。カトリック教会が地動説を公式に認めたのは、実にガリレオが亡くなってから180年後の1822年であった。
2011.11.5 楽しきかな クラシック映画
著作権が切れ安価になった昔の映画(DVD)を、会合やprivateな用事のない、ふっと時間の空いた夜など洋、邦画問わず見ています。と云っても、一週間などあっという間に経ちますので二週間に一本位でしょうか。一時、仕事や患者の事を忘れさせてくれます
邦画では、昨年末亡くなった女優高峰秀子のものをよく見ます。何れの作品もが印象深いですが、中でも名作と云われる“二十四の瞳”(1954年)、灯台守の家族を描いた“喜びも悲しみも幾歳月”(1957年)、作家林芙美子の“放浪記”(1962年)、そして邦画の十本指には必ず入る“浮雲”(1955年)などは揚げておきたい。ただ高峰本人は「女優は好きでなかった」と云っているのは面白いことです。彼女の顔立ちは柔らかいというか優しい感じで、“二十四の瞳”の小学校の先生役がぴったりと思います。“カルメン故郷に帰る”(1951年)のようなコミカルな役もあり、その役柄の多岐に渡ることは感服させられます。他では、邦画のベスト3には必ず入る“東京物語”(1953年)の名監督小津安二郎作品や黒澤明作品は言うまでもありません。黒澤明作品はどれもいつもぞくぞくさせられます。昔の邦画(特に昭和時代の)を見る度に思うのは、その日常会話の綺麗さ(特に女性)というか語弊があるかもしれませんが上品さです。それは市井の庶民にも当てはまります。現代は言葉使いが汚いというか乱れていて、嫌悪を感じているのは私だけでしょうか。
最近見た洋画では、ナチの収容所で生き別れた母子の再会を描いた“山河遙かなり”(1948年)、アンデス山脈の郵便飛行士達を描いた”コンドル“(1939年)、あの淀川長冶が綺麗な映画と絶賛した “邂逅” (1939年)などが良かったです。好きな俳優は男優では“十戒”(1956年)のチャールトン・ヘストン、女優では“レベッカ”(1940年)のジョーン・フォンティンです。“いやー、映画って本当にいいですね”。
以上、駄文を労しました。開業して15年。診療以外の事、つまりレセプト関連は勿論、スタッフの労務関係、税関係、色んな業者との折衝、その他雑用は当然初めての経験で暗中模索でしたが、あっという間でした。診療については、守備範囲を守り後眼部のOpeには手を出さず、患者さんも情報を得ているので精査の必要な症例は紹介するようにしています。昨年、還暦を迎えました。今後とも宜しくお願いします。(旭川医大眼科同門会誌 2011年 第21号に掲載)
2011.11.5 最近読んだ本
1)”パレスチナ”(広河隆一著 岩波新書)
毎日報道される時事ニュース、わかっているようで実はよく知らない事が多いものです。その一つに、長年紛争を繰り返している中東情勢問題、すなわちイスラエルとパレスチナ。本当にこの二者間の問題は厄介です。それを実地に見聞した著者が詳細に記しています。宗教、民族、地理等の問題が複雑に絡み合っています。従来イスラエルに贔屓目に見ていましたが、見方が変わりました。”目には目を、歯には歯を”という心理が働いている様に思われてなりません。
2)”ドン・キホーテ 前編(1)”(セルバンテス著 岩波文庫)
以前から読みたいと思っていたのですが、予想した内容と異なり、いささか拍子抜けしています。というのは、マンガチックで一編の壮大なコミックを読んでいる感じです。読んで何らかの教訓とか生きる示唆を得ようとするのでなく、ただ楽しむために読むのが正解です。面白いです!
2011.11.3 ドウダンツツジの紅葉
当院の入り口にあるドウダンツツジが今や、紅葉真っ盛りです。
しかし、もう少しすると冬将軍がやって来て寂しい季節に入ります。半年近い長い冬を短く感じられるような良い過ごし方を模索中です。
2011.10.30 最近見た映画
1)”秋刀魚の味”(小津安二郎監督、1962年)
しばらくぶりに小津作品を見ました。始めは少々まどろこしいテンポ(昔の邦画は大体そういう傾向にあるけれども)でしたが、段々引き込まれますね。 佐田啓二、岡田茉莉子、岸田今日子ら若き頃の俳優が多数出てきますが、長女役の岩下志麻は改めてじっくり見るとかなりの美人ですね。笠智衆はかねてから思っていましたが、人間的には愛すべき人柄でしょうが、演技は決して上手とは言えませんがそれがこの人の個性なのでしょう。さて内容は書きませんが、どこに秋刀魚が登場するでしょう?
2011.10.16 最近読んだ本
1)”ある小さなスズメの記録”(クレア・キップス著 梨木香歩訳 文芸春秋)
1953年初版。少々信じられないというか驚きの記録です。普段見かけるあの人に懐かないスズメと自分の子の様に暮らした英国婦人のノンフィクションです。生来足が悪く十分飛べなかったこともありますが、その一生を家庭内で飼われ、時にダンスの様なこともして来客や街の人々を楽しませたり、また、一緒に枕元で寝て心を通わせていたエピソードも記されています。
2)”モンゴル紀行(街道を行くシリーズ№5)”(司馬遼太郎著 朝日文庫)
モンゴルは本当に果てしない草原が続いているらしい。写真等からそのイメージは浮かびますが、やはり何でもそうですが実体験すると、規模が違う様です。また、馬が日常足代わりに活躍し、また、遊牧の民なので包(パオ)で暮らす人々が、その中でパソコンを使いインターネットを楽しんでいるそうです。
2011.10.3 不定愁訴
不定愁訴(ふていしゅうそ)という言葉を聞いたことがあると思います。これは “色々な自覚症状は訴えるけれども、検査で何の身体的異常が見つからない状態”を云い、医者を悩ませるものの一つです。例えば内科等で自律神経失調症と言われた方もおありでしょう。眼科でも、目が「しょぼしょぼする」、「ちくちくする」、「ごろごろする」、「ズキンとする」、「ちかちかする」、「重い」等々あります。検査をして、「どこも何とも無いきれいな眼です」とご本人に言いますと、安心する方もいますが、再三受診される患者さんもいらっしゃいます。生きているのですから、多数の様々な臓器の組み合わさった身体に何かを感じるのはあって当然と云えます。
ただ、問題は逆のことが潜んでいる場合です。身体の病気なのに(特に初期の場合)検査ではっきり異常所見の出ないことがあります。眼では、老眼の始まりやドライアイは「しょぼしょぼする」など不定愁訴症状を呈する代表疾患です。40~45歳を過ぎて老眼が始まり、新聞など近くが見づらくなっているのに今までと同じ眼鏡を使っていたり裸眼で見続けている。ドライアイで、目に潤いがなく黒目と白目が傷っぽくなっている。前者は読書用眼鏡、後者は潤すヒアルロン酸点眼で大方改善されます。
結局、何か症状があればまず受診して検査を受けてみる。それで異常が無ければあまり気にしないで様子をみるのが良いということになります。医者が「様子を見ましょう」とか「経過観察しましょう」というと、放っておかれたとか何でもないと誤解、勘違いしてしまう患者さんがいます。しかし、それは、ひょっとして病気が潜んでいるかもしれないので定期的に診察することや、変ならいつでも受診するよう言っているのです。(地元タウン紙”せせらぎタウン”平成23年10月号に掲載)
2011.8.13 北竜町”ひまわりの里”、秩父別町”ローズガーデン”で遊ぶ
快晴で猛暑の中、ここぞと咲くひまわり畑の中を歩いてきました。世界中のひまわりが植えられていましたが、中でも日本産の”小夏”という品種は丈が10cm位と小さく可愛いかったです。また、次に訪れたローズガーデンでも、本当に色々なバラを見せてもらい、命の洗濯になりました。
2011.8.6 チャリティーコンサート・平和への祈り
「あさひかわ第九の会」企画演奏会(旭川大雪クリスタルホールにて)
主に旭川出身のクラシック歌手によるコンサート。歌手は4人で及川洋治、中原聡章、佐々木智美、菅原有希の各氏。中原氏と佐々木さんは中学校の教諭ですが、立派なもので、特に中原氏の声量は大です。混声合唱のためのカンタータ「土の歌」(大木惇夫作詞、佐藤貢作曲)は一度聴いておくとよいです。
2011.7.14 最近読んだ本
1)”三陸海岸大津波”(吉村昭著 文春文庫)
今、話題の書です。1970年(昭和45年)に既に吉村氏は三陸を訪ね、過去の大津波について取材しています。三陸海岸は明治29年と昭和8年に大きな津波の被害に合っています。しかし、千年に一度と言われる今回のような甚大な災害を誰が予想し得たでしょう。マスコミや専門家などが起こった事件や事故を後付けで、さも自分達は以前から分かっていたかのように批判、発言します。しかし、起こった事を後付けで批判することは簡単なことです。今回の原発事故でも、東京電力や原子力関係者に一方的な批判、非難がありますが、少し可哀相そうです。やはり想定外は想定外なので、国民特に当事者の怒りは尤もですが、こういうこともあると腹を括って理解すべきでしょう。
2)”何とかなるわよーお姫さま そして女将へー立花文子自伝”(立花文子 海鳥社)
九州福岡県の柳川市は旧柳川藩の城下町です。そこの代々の藩主立花家の一人娘である立花文子氏の自伝です。面白くというより楽しく読ませて頂きました。明治43年生まれで、子供時代、お姫様として育てられた状況がよく書かれています。しかし、驚くほど進取の精神に富み、全くひ弱な教育はされていません。是非、一般の方に読んでほしいです。*立花文子さんは昨年10月100歳の長寿を全うしました。
2012.6.26 佐地君と美瑛巡り
同期会の翌日、佐地君を美瑛を駆け足で案内しました。
2011.6.25 旭川で大学の同期会
母校医学部の同期会が自分も含め4人と少数ですが、旭川であり、講演とその後の親睦会で盛り上がりました。講演は母校で小児科教授をしている佐地君の”小児の心臓移植”に関する話でした。彼は心臓病など小児の循環器疾患では国内はもとより世界でも名を馳せている権威の一人です。他にはやはり母校で内科教授をしている住野君と静岡で内科をしている鳥居君です。その後、お寿司屋さんに場所を移し会食。やはり若かりし頃の仲間との会話は尽きず、本当に楽しい時間を過ごしました。
2011.5.12 最近読んだ本
1)”長男の出家”(三浦清宏著)
親の習慣や行動、しつけ等が子に大きな影響を与えるということです。著者である父親が座禅に長男を連れて通っていたら、その子が”大きくなったらお坊さんになる”と言い出したのです。父は軽い気持ちで連れて行ってたのでしょうが。その子は結局初志貫徹してお坊さんになり、現在立派にやっているとのことです。親は十分気をつけましょう。
2)”白河・会津のみち、赤坂散歩(街道をゆくシリーズ№33)”(司馬遼太郎著)
私が全巻読破を目指している司馬遼の”街道をゆく”シリーズです。やはり彼の著作はまず期待を裏切らないです。中には中途で投げ出した作品もありますが。今回の圧巻は会津の章で、幕末に貧乏くじを引いた松平容保に関する話です。司馬氏は若い時分、寺社関係の新聞記者をしていたので、そういう事項には飛び切り詳しいのです。惜しい人を日本は亡くしました。もっと生きて欲しかったです。あれ程、日本史に関し語れる人はいません。
2011.4.17 最近見た映画
1)”コンドル”(1939年 アメリカ・。 ハワード・ホークス監督)
ケーリーグラント主演。
2)”終着駅”(1953年 アメリカ)
ジェニファー・ジョーンズ、モンゴメリー・クリフト主演。
2011.4.1 点眼薬の合剤
最近、日本でようやく点眼薬の合剤が認可され、処方できるようになりました。何れも抗緑内障薬で、緑内障の方に朗報です。合剤は点眼薬1本に2種類の薬が入っているもので、目薬の本数が減るだけでなく、1日の点眼回数もかなり減少します。欧米では以前よりありましたが、お堅い慎重姿勢の厚労省によりようやく認可されました。
緑内障は、放置すると殆ど自覚症状がないまま視野狭窄などが進行するものです。その症状を悪化させないよう現状を維持するため、生涯、点眼を続ける必要があります。患者さんによっては数種類の点眼薬を1日何回も点けなければなりません。緑内障は痛くも痒くもないので、往々にして、特に若い人では仕事など多忙のためもあり、忘れたり面倒になったりして、結局、点眼を中断してしまうことが少なくありません。患者さんになぜそれが必要か、治療(点眼)の意味を理解させ、治療(点眼)に対するモチベーション(やる気)を高めることも医師としての役割です。
緑内障の恐い所は視神経が侵されるため、悪化してからでは改善方法はありません。悪化を止めるための点眼です。それが合剤により本数も点眼回数も減り、コンプライアンス(服薬遵守)が向上し結果的に効果も上がると考えられます。
(地元タウン紙”せせらぎタウン”平成23年4月号掲載)
2011.3.27 東日本大震災の被災者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
この度の未曾有の震災、地震に次ぐ大津波、更に追い討ちを駆ける原発事故には本当にやりきれぬ思いで一杯です。地震や津波が自然の猛威とすれば致し方ないのでしょうが、それにして酷い状況です。日本国民全体が一丸となって復興の手助けをしましょう。家屋や町は時間かければ何とかなるでしょうが、とにかく原発の放射能は封じ込めないと!
2011.2.6 最近読んだ本
1)”挑戦する勇気”(羽生善治著、朝日新聞出版)
2)”水死”(大江健三郎著 講談社)
始めは主人公の父の水死がmainの物語かと読み進んでいましたが、終盤、副主人公ともいえる若い女性の個人的体験に話の中心が変わって行きます。結局それが主題だったようです。
2011.1.4 最近読んだ本
1)”小説帝銀事件”(松本清張著 角川文庫)
以前から、新聞等でよく見かけた平沢貞通なる人名には興味を引かれていました。しかし、帝銀事件の詳細には全く不案内なため、今回ようやく松本の本を読んでみました。やはり、予期したとおり冤罪を疑わせるものでした。その理由にはついては、ここではこれ以上触れません。最近、厚労省関連事件の検察によるでっちあげが明らかになりました。人間とは、何と先入観に囚われる生き物なのでしょう。全く何事も先入観等に惑わされることのないようにしたいものです。
2)”さみしい男”(諸富祥彦著、ちくま新書)
現代の特に若年、中年代の日本人男性について述べていますが、同感する所が多々あります。例えば、家庭で居場所がない、仕事で疲れ帰宅しても何かストレスを感じて自分の部屋に篭ってしまう、母親のように子供たちとしっくり会話が出来ない、職場では上司と部下の板挟み状態になっている、仕事は仕事で我がまま言いたい放題の顧客の対応に嫌気が差しretiireしてのんびり暮らしたくなる等々です。女性の方が元気があります。どうしてこういう日本になったのでしょう。やはり、今までの資本主義、自由主義による”儲け”ようという競争が遠因である気がしてなりません。
3)”ニューヨーク散歩 (街道を行く 39) ”(司馬遼太郎著 朝日文庫)
主にニューヨークに関係する人が出てきます。何と言ってもドナルド・キーン教授。彼の日本古典文学に関する造詣には脱帽でしょう。また、角田柳作というコロンビア大学の先生については、私も全く存知あげず、日本では殆ど知られていませんが、いるんですね。こういう人が!
2010.12.9 最近読んだ本
1)”小惑星探査機はやぶさ物語”(的川泰宣著 NHK出版)
小惑星探査機については日本は世界のトップを行っている様です。つい先日、金星探査機には失敗しましたが。この”はやぶさ”はご承知の通り御難続きでしたが、一応の目的は達しました。特に読んで心を動かされたのは、準備段階でColleagueが誰彼と無く、トップの川口プロジェクトマネージャーの知らない所でaccidentに対するhardの面での用意をはやぶさに備えていたことです。これこそ、まさに仲間でしょう。どんな職場でも言われたことだけを準備していたのでは駄目です。自主性をもつことが重要です。本文中の里中満知子さんの励ましのイラスト。満身創痍の”はやぶさ”。頑張ったね。
2)”歩きながら考えよう”(安藤忠雄著 PHP研究所)
あの独学で建築を学び東大教授にして文化功労者の安藤忠雄氏の本です。彼が建築だけでなく自然や環境汚染にも関心があり精力的に活動しているとは知りませんでした。
2010.11.6 最近読んだ本
1)”弧舟”(渡辺淳一著)
今話題の書ですが、期待はずれでした。定年後、男が家庭に入り、妻らに今まで以上にお世話を掛けることになる。当然、同居する人たち、特に妻とぶつかり合う事はわかり切っています。それを男が自分で葛藤しつつ如何にやっていくのか、上手くやっていけないのか、それをどういう風に著者が描くのかが、読む前、読者が期待していることです。しかし、渡辺は浮気というか不倫を大きな中心的題材としており、頂けない。結局、渡辺はこういう女性関係を核としてしか小説を書けないのだろうか。
2)”ちょっとした勉強のコツ”(外山滋比古著)
本年三月の欄でも書いた外山氏です。こういうちょっとした教養本をよく書いている人です。読書に当り、私などは40歳を過ぎた頃から、読んでいる時はわかっていても読んだ後から忘れ様になっています。少しでも何かが頭に残ってくれれば良いと思います。以下に述べるのは一番印象に残った箇所ですが、”物を覚えるのに二通りある。コンピューター式と鳥式。前者は通常の試験の様にとにかく頭で物を覚えようとすること。鳥式とは親鳥が自分の子に餌の取り方や飛び方等を繰り返し繰り返し体で覚えさせるようとする、つまり体得させる。これは一生忘れない。”
3)”国民の遺書 「泣かずにほめて下さい」靖國の言乃葉100選”(小林よしのり責任編集)
これは今夏話題になった二次大戦等で戦死した軍人達の遺書です。遺書と言っても多くは戦闘間際に書かれたもので短いのですが。まず、読んで思うのは死に臨んでの潔さです。人間、これだけ確実な死を目の前にして達観出来るものなのか、御国の為に死すということで喜びを表している人も少なくありません。特攻隊員もいれば法務死といって戦後軍事裁判で戦犯として処刑を待つ人もいます。しかし、遺書の末尾にかかれた「さようなら」の言葉は永久の別れを表すわけで胸に刺さります。殆どが20代前後から30才位までの男子で、やるせない・・・・
2010.11.1 最近見た映画
1)”邂逅(めぐりあい)”(1939年アメリカ作品)
主演シャルル・ボワイエ、アイリーン・ダン。感動的な良質のStory。メロドラマではあるがこの筋書きはいいです。特に最後、彼の絵を購入したのは足の悪い貧しい女性だったと途中まで言い掛けて、再開した彼女の部屋の隅を見るとその絵があるでは!全てを悟った彼。あの映画評論家淀川長治氏はこの映画を最高に綺麗な綺麗な映画と絶賛しています。納得。
2)”凱旋門”(1948年 アメリカ作品)
主演イングリッド・バーグマン、シャルル・ボワイエ。やはりイングリッド・バーグマンは良いです。私の大好きな美人女優の1人で、この映画でも好演しています。この映画では、始めから終わりまで愛に生きる女性を演じていますが、映画評論家の水野氏も言っているように、彼女は実生活でもそれに近かったようです。残念ながらlove storyとして、よくある粗筋でそれほど感動的な映画とは言えませんね。
2010.10.22 藤原真理チェロ・リサイタルを聴いて
(旭川市大雪クリスタルホールにて)有名な彼女は小柄な方でした。前半はいずれも馴染みのある9曲の小品でしたが、中でもメンデルスゾーンの「歌の翼に」は良かったです。ホールの影響もあるかもしれませんが、彼女のチェロの音というか響き(特に低音部)は体に浸み渡る様で、音楽は良いものだと改めて感じさせられました。他にはフォーレの「夢のあとに」やルビンシュタインの「メロディ」も良かったです。
2010.10月 当家の2代目わんこ、ヨーキーの花ちゃん(7歳)です。
2010.10.11 最近読んだ本
1)”巡礼コメディ旅日記”(ハーペイ・カーケリング著、みすず書房)
著者はドイツの人気のコメディアンとのことです。病気などをきっかけにスペインのサンチャゴ巡礼道800kmを歩き通そうと思いたったのです。この巡礼道は日本では知っている方は少ないと思いますが欧米ではよく知られているらしいです。道中のあれやこれやを1日単位でよく描いています。結局出会った人との40日間の交流が見所ですが、道路事情や宿、巡礼道の環境なども見逃せません。2007年度の国際旅行見本市最優秀紀行文学賞を受賞した話題作です。
2)”時のかけらたち”(須賀敦子著。青土社)
以前も書きましたが、イタリアに長く居られ晩年日本に戻って来た方です。晩年というと語弊がありますが、1998年、69歳で亡くなられています。彼女の文章は大変綺麗な日本語でお手本になります。ただ、馴染みのない文人名や地名がが出てくるのには閉口します。本書の内容はイタリア等での交友や体験を詳しく書いています。特に「ガールの水道橋」では一青年との交友を描き、そして彼の重病による急逝にはショックを受けます。
2010.10.9 最近見た映画
1)”アンナ・カレーニナ”(1948年)
文豪トルストイの同名小説の映画化。ヴィヴィアン・リー主演。不倫の相手役はキーロン・ムーア。
2)”巴里の屋根の下”(1930年)
主演アルベール・プレジャン。
3)”パラダイン夫人の恋”(1947年)
主演グレゴリー・ペック。
4)”グランドホテル”( )
グレタ・ガルボ、ジョン・バリモア。
2010.10.1“中年以降に急に発生する飛蚊症(ひぶんしょう)に注意”
目の前にごみや煤のようなものがちらちらすることを総称して飛蚊症と言います。若い時から見えるプランクトン状のはほぼ心配ありません(生理的飛蚊症)。眼球内には透明なゼリー状あるいは卵の白身状の硝子体(しょうしたい)が充満しています。硝子体は生来眼底の網膜(カメラのフィルムに相当)に密着していますが、加齢によりある日突然網膜から離れます(後部硝子体剥離)。硝子体の粘り気が無くなる為と考えられます。離れた硝子体の裏面にある線維が小さな輪状に正面よりやや外側に見えることが多いです。この飛蚊症自体を治すことは出来ませんが徐々に薄れ、常時見える訳ではないので殆どの方は遅かれ早かれ気にならなくなります。ただ、注意しなければならないのは、運が悪いと硝子体と接着の強かった部位の網膜に裂孔が出来、網膜剥離の原因になることです。裂孔が出来た時はそれを塞ぐことは出来ませんが、その周囲を剥れないように光凝固で固めます。(保険も適用されます。)裂孔周囲が剥れて網膜剥離が起きてしまうと光凝固は無効で、入院、手術となります。
(地元せせらぎタウン紙掲載 平成22年10月号)
2010.9.19 最近読んだ本
1)”老いのかたち”(黒井千次著 中公新書)
著者黒井氏は、それほど彼の著作を読んでいるわけではありませんが、私が以前から短編あるいは随筆で注目している作家です。この本は77歳の一男性高齢者である著者が日々感じていることを正直に書いているものです。50代後半の私も是認というか納得できる、加齢からくる身体的および精神的な面をよく綴っています。特に印象に残ったことは、美しく老いるというか品位のある老人、理想の老人像についてしばしば言及していることです。当然、呆けたり、口うるさかったり周囲から嫌がれれるする老人はだめでしょう。
2010.8.8 最近読んだ本
1)”俺の考え”(本田宗一郎著。新潮文庫)
言わずもがなですがHONDAの創業者です。口語調の歯に衣着せぬ彼の文体は彼の性格を表しているのでしょう(実際の彼の性格はよく知りませんが)。人生哲学より、世間の経営や企業に関する彼の考え方を記しています。言わんとすることはわかりますが、中には賛成出来ないというより”そうは現実にはうまく行かないだろう”という点もあります。勿論、どんな人の考え方でも、それで全て世の中の事がうまく行く考え方なんてありませんから。でも、世界の名だたる一つの企業、エンジン・メーカーを作り上げた尋常でない心意気は伝わってきます。
2)”街道をゆく 甲賀と伊賀のみち、砂鉄のみち ほか”(司馬遼太郎著。朝日文庫)
この本で感動というか深く考えさせられたのは最後の章、”砂鉄のみち”です。日本における砂鉄から鉄を作る、つまり製鉄がこんなに歴史のあるもので、深い意味のあるものとは知らなかったことです。出雲から美作、吉備へ残るタタラ遺跡群の話。また、鋼1トン作るのに砂鉄12トン、木炭14トン必要とし、木炭14トンのためには薪50トンを得る必要があり、森林の消費が凄まじいことなど。朝鮮との関連で話が進められていきます。
2010.7.25 最近見た映画
1)”ロビンソン・クルーソー”(2003年仏・独合作)
勿論原作通りではありませんが上手に作っています。途中この後どうなるのか心配でしたが、とにかくハッピーエンドで良かったです。
2)”子鹿物語 ”(1947年作品)
グレゴりー・ペック主演。アメリガ開拓時代のある家族の人間性溢れる映画。最近、日本ではこのような映画は少なくなったのではないでしょうか。迷って森で臥せっていた子鹿を少年が引き取り家で飼うが、畑を踏み荒らす、作物を食べてしまう。結局、子鹿は撃たれてしまう。この子供と作物や畑に生活が掛かっている親。一時行方不明になる子供。この映画、見てよかった!
2010.7.10 富良野グループ公演”帰国”
以前から楽しみにしていた倉本聰の”帰国”を見て来ました。第二次大戦で犠牲になり南の海に漂う未だ成仏できない英霊達が現代の日本に来ます。感動するというより考えさせられます。戦後、アメリカ等の影響による資本主義の台頭と相俟って、便利を追求することが優先され、それにより失ってしまったものがあるとはよく言われています。倉本聰は嘆いています。叫んでいます。彼の心底からの声を聞こう。
2010.5.8 最近読んだ本
1)”生き方” (稲盛和夫著 サンマーク出版)
稲盛氏はご承知のように、この度、日航再建を託された京セラの創業者です。彼の生きる指針あるいは生業に対する姿勢には共感を覚えます。まず儲け第一というのではなく、誠実に一生懸命働くこと、それが結局は良い実を結ぶということです。若干27歳で京セラを創設した方。しかし、彼の”一生懸命”というのは、並みのものではない。
2)”河童・戯作三昧”(芥川龍之介著 角川文庫)
これには他に”玄鶴山房”、”開化の殺人”、細川ガラシアを題材とした”糸女覚え書”などの短編も載っています。私は芥川を短編の俊才と考えています。漢文学を始めとして古今東西の文学は勿論、今回改めて彼の作品を読んで一般庶民的な事柄にも通じていることが察せられました。例えば”本黄楊”(櫛屋の看板のこと)とか、生姜は痩せた土地にも出来やすいこと等、書き出せば切りが無いほど雑学に通じています。彼の文章は段落が比較的短く読みやすく、引き込まれていきます。ただ、彼が精神を病んだことはなるべくしてなったのか、残念なことです。それと関連して、後書きで五味渕典嗣氏は芥川の人間観について厳しく断じています。
20105.2 最近のアレルギー症の増加
北海道も長い冬が終わり、ようやく良い季節が到来しました。しかし、これから花粉症に悩む人が増えます。昔はアレルギーやアトピーの人は少数でした。私が子供の頃は川に入ってドジョウやゲンゴロウを取り、時には腕や足にゴミかと思いきやヒルがくっ付いたりしました。また田んぼでオタマジャクシや田螺を取って遊んだものでした。科学的な根拠はありませんが、そういう事で自然に体に抵抗が出来たのではないか。今の子供や若い人たちはそのような経験が少なくなり、更に清潔な環境と相俟って免疫ができないのではと思われてなりません。勿論、清潔志向を否定している訳ではありません。ある日本人学者は寄生虫が減少したのが現在のアレルギー症増加の原因と考え、自分の体内に回虫を飼っていました。しかしこれは科学的に根拠の無いことが判明しています。
痒みを主とする目の花粉症、アレルギー性結膜炎では球結膜(白目)の充血や瞼結膜(瞼の裏側)に乳頭(小さな水泡状のぶつぶつ)が出ます。しかし、外見上殆ど正常のこともあります。掻くという刺激で痒みの元となる化学物質が増加し一層痒くなりますので、出来るだけ掻かないようにして下さい。抗アレルギー剤の目薬は即効性は余りありませんので、すぐ無効と判断せず続けて下さい。改善しない時はステロイド剤ですが、これは即効性はありますが、ご承知と思いますが白内障や眼圧上昇、感染の助長などの副作用がありますので漫然と使用しないで下さい。現代はエイズや鳥や豚のインフルエンザ、狂牛病などかつて見られなかった病気が出現しています。今後、衣食住等の環境の変化により、病気の種類毎の多寡も変わっていくのでしょう。(地元タウン紙:せせらぎタウン5月号掲載)
2010.4.25 最近読んだ本
1)”半島へふたたび”(蓮池薫著。新潮社)
拉致被害者の蓮池さんの本。彼が韓国へ妻らと行った時の紀行文。生き生きとして書いています。キムチ作りの苦労など随所に出てくる北朝鮮での生活を述べる所が面白い。彼の文章は分かり易く、かつ、まどろっこしく無く、翻訳家あるいは作家の道を選んだのは正解です。大成を祈ります。
2)”銀河鉄道の夜”(宮沢賢治著。集英社文庫)
恥ずかしながら、じっくりと宮沢賢治の本をまとめて読んだのは初めてです。”よだかの星”、”風の又三郎”、”いちょうの実”など全部で6作品が収められています。彼の物語に共通しているのは、やはり一種の悲しみでしょうか。読後は、感動を受けるというのではなく、人誰もが持っている悲しみや孤独感を飾らずに素直に表現しており、心情的に納得できるのです。
2010.4.25 最近見た映画
1)”別離”(1939年作品。イングリッド・バーグマン主演)
不倫の映画です。題名は忘れましたが、以前にも同じようなのがありました。それは奥さんが不倫し、短い夢を見ていたとして夫が迎えるものでした。これは名バイオリニストの夫がE・バーグマンを不倫相手として結局家庭に戻るものです。ですからこの映画の原題は”間奏曲”です。私はE・バーグマンが最高の美人と考えています(勿論、人それぞれですが)。
2)”カサブランカ”(1942年作品)
名作中の名作と謂われている、ご承知の映画。ハンフリー・ボガードとイングリッド・バーグマン主演。とにかくボガードの声や喋り方、そしてついでに言えば身振りが(比喩が的確ではないかもしれませんが)無駄がないというか冷酷非情を思わせる人間に見える。しかし、結局は自己犠牲の精神の持ち主。最後場面、警部の温情も良い。
2010.3.7 最近読んだ本
1)”思考の整理学”(外山滋比古著。ちくま文庫)
東大や京大生のベストセラーというが、ちゃんと理解するのが難しい本です。言わんとする事がわかる処もありますが、よく把握できない箇所も少なくありません。日々きちんと頭を整理しながら仕事をしていくに大切な心構えというか方法、具体的方法を論じています。最後の”あとがきにかえて”の”考える”と”思う”についての説明はよくわかりました。もう一度繰り返して読む必要がありそうです。
2)”疚しき沈黙”(倉本聰著)
先日富良野塾の演劇を見た時、倉本聰の本を購入しました。現代の世相を批評していますが同感、賛成できる所がかなりありました。(一部ちょっと違うのではという箇所はありますが、それは人それぞれというところでしょう。) マスコミ、現代の親、政府、資源としての石油、健康志向等々について語っています。改めて自分の周囲を見回し、自分というものが実はマスコミ等に操られていないか、本当に真っ当な生き方とはどういうものか、基本に立ち帰って見回したいものです。
2010.2.6 富良野塾”谷は眠っていた”観劇。感激!
あの倉本聰率いる富良野塾が今期で終わるということで、遅まきながら見に行きました。その存在は知っていましたが見るのは初めてです。ある感激は受けましたが、芝居というよりパフォーマンスの多い劇です。体力と若さがないと勤まらないでしょう。単なる芝居劇団では全国中にあり、何らかの独自性を持たせるためでしょう。今回の”谷は眠っていた”は富良野塾草創期、原野を開拓しつつ半ば自給自足で、全国から芝居で一旗上げようとした若者を募り始めた時の状況を劇にしたリバイバル作品です。これから全国公演をするそうです。私が思うに、体力、年齢等諸事情の許す限り、塾としてではなく一つの劇団”富良野グループ”として全国公演を主に活動してはどうだろう。内容は独自性の溢れたものでした。一度は見て頂きたい。特に主役級のシロ役森上千絵は良い。
2010.2.4 最近読んだ本
1)”柿の種”(寺田寅彦著。岩波文庫)
随筆家、物理学者として著明な著者ですが、恥ずかしながらきちんと彼の本を読んだのは初めてです。この本は全く日常の何気ない事を取り上げて、彼の人生観と言うか日頃感じていることを書き記したものです。大正末から昭和十年頃に書かれたものですが、現代人にも通じる感性が感じられます。
2010.1.27 最近見た映画
1)”OCEANS”
テレビ等の宣伝で既にご承知の方もいらっしゃるでしょう。海の動物の生態を描いたものです。印象に残った映像が幾つかあります。人間のように抱っこして子供を育てるセイウチの母親。山のような集団になって脱皮をする蟹。外敵から身を守るためらしいですが、はっきりとした理由は不明とのことです。悲惨な場面として、中華料理の美味フカひれを取るため、生きたまま尾びれと背びれを切り取り、そのまま海へ放り投げる。泳げなくなった鱶(=鮫)はもがきながら海底に沈み死んでいきます。網に絡まり、そのまま力尽きたイルカや海鳥、鯨など。”決して人間だけが生きものの主人公ではない。海に生きる動物、彼らそれぞれが主人公なのだ。”と言っているようです。
2)”片目のジャック”(1960年作品。マーロン・ブランド監督、主演。)
銀行強盗に入った二人組。1人(カール・マルデン)が金貨を持ったまま姿を消した。その残された者(マーロン・ブランド)は割に合わず刑務所に。その復讐劇だが、愛する人がカールの連れ子だ。西部開拓の頃はまだメキシコとの往還は自由だったようです。Storyとしてよくある話しの感じです。以前から”地獄の黙示録”や”ゴッド・ファーザー”を見てマーロン・ブランドは一味違う役者というか、凄みのある俳優だと思っています。ですが、この映画では熟年になってからの凄みはまだ出て無いようです。
2010.1.10 最近読んだ本
1)”いのちの代償”(川嶋康男著)
47年前、北海道学芸大学(現在の教育大学)函館分校山岳部11名が大雪山で遭難しました。10名が死亡しましたが、リーダーのN氏唯1人生還しました。彼も凍傷で後日両足切断しています。しかし彼には当然と言っては何ですが、遺族より非難が浴びせられました。そのN氏に焦点を当てて書かれています。N氏は言う”俺は死ぬまで黒い十字架を背負って生きなければならないと覚悟している。棺桶に体を入れられるまで。元気かい?と言って岳友がしょっちゅう夢に出てくるよ。あいつらは当時の顔のままでな。いつまでも若いんだ。”と。
人間、何事もその時はベストを尽くしたと思っても、後日顧みると悔やむ、ああいうことも出来た、こういうことも出来たということはあります。それは人間の限界というものではないか?
2)”日本近代文学の名作”(吉本隆明著)
あの吉本が明治から昭和までの24作品を名作として選び論じています。一般的に名作とされているものもありますし、そうでないものも取り上げられています。例えば、馴染みのない作品とすれば、岡本太郎の母である岡本かの子著”花はつよし”とか中野重治著”歌のわかれ”などです。これら24作品を出来るだけ読んで見たいとは思っています。しかし、本など、読み始めて自分の波長に合わないというか自分に合わない事があります。そういう場合、無理に読むことはないのではないか?と最近思い始めています。
2010.1.5 新春随想
今年、私は遂に還暦を迎えます。俳句が趣味の一つで,還暦にまつわる句をご紹介し、少々感慨を述べたいと思います。
“幼な顔残りて耳順更衣”(本田豊子)
新しいかどうかは不明ですが、気に入った服に着替えた時、その嬉しさに一瞬、子供のような顔がかい間見えたのでしょう。友人や先輩であれ誰であれ、ふっと子供のような顔、特に笑顔が見えたりすると何かホットします。
“還暦やすでに亡き人虫の声”(小林勇一)
同級生や同年輩の友人がもう幾人も亡くなっています。秋、静かな夜、虫の声を聞くと何故か茫漠たる気持ちになります。「自分はまだ生きている。彼は残念だったろうな。死にたくなかったろうな。」そう考えると自分にはまだ運があるのかなと思ってしまいます。
“新暦還暦の日を緋で印す”“(山之内白美)
新しい年を迎え、まっさらなカレンダーを見る時、「今年はどんな年になるのだろう。良い事があればいいけれど、厭な事が起こるかもしれない。」と不安と少々期待の入り混じった気持ちが交錯します。現在の私にとって、一番気がかりなのは二人の子供(一男一女)のことです。自分ら夫婦は、もうaggressiveに何かするという精気はあまり無く、大病さえしなければ日々の生活は何とかなります。彼らは大分前に親元を離れ手綱が解かれた状態で、二人ともまだ年頃の独身・・・・・。
“還暦の見上げて秋の雲ばかり”(木村敏男)
天候で言うと、若い時は真っ青に晴れた秋晴れですが、六十歳はどんよりと曇り、所々晴れ間が覗いているというところでしょう。これから雨や嵐が来るかもしれません。しかし、秋晴れにはならなくとも、曇り空だけなら過ごすに何ら支障はありません。
“還暦やまだまだ続く蟻の道”(馬場白州)
作者はどこかで働蟻が一列になって、何かに向かって行進するのを見かけたのでしょう。誰でも親なら子供が落ち着くまでは日々安心出来ません。私もまだまだ脇道に逸れずに、地道にコツコツと仕事をして行かねばならない様です。外見は別として、気持ち的に老け込まないよう気をつけていきたいと存じます。(北眼医報、平成22年新春号に掲載)
2010.1.1 新年明けましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い申し上げます。
2009.12月 目の俳句
私は俳句が好きですが作るのは苦手で、専ら読む方です。目に関する句を見てみましょう。
●眼を病めば片目淋しく手紙書き居る(尾崎放哉)。この方は片目が悪かったのでしょう。片目しか見えないのは確かに淋しい気がします。実は傍目にはわかりませんが、片目が見えない方は予想以上に多くいらっしゃいます。事故などの外傷が少なくありません。
●鰰(はたはた)のみひらきし目にまた雪来(山上樹実雄)。魚にはご承知のように瞼がありませんので、くりっと丸く大きな目は目立ちます。漁港や市場で取れたばかりの鰰の目に雪が当たっているのでしょう。瞼は目の乾燥を防ぐ役割がありますが、魚は水中にいるので必要ありませんね。涙を分泌する涙腺が上瞼の耳側にあることは意外と知られていません。顔面神経まひを起こすと瞼の眼輪筋が障害され瞼を閉じることが出来なくなり(兎眼といいます)、黒目(角膜)のびらんを生じます。
●巨き友の踏み跡を踏む雪眼して(山崎聰)。冬登山でしょうか。雪眼になり、痛み、まぶしさ、流涙などを感じながら歩いている情景が浮かびます。雪眼は日光(あるいは反射した日光)中の紫外線により表層角膜炎を起こしたものです。黒目の表面の荒れというか沢山の小さな傷です。夏の海水浴、長時間の運転、紫外線殺菌灯などで生じ易いです。溶接の光によってもなりますが、直接しなくとも傍で短時間見ていただけでなることあります。多くは数日で自然治癒します。(地元タウン紙”せせらぎタウン”12月号掲載)
2009.12.2最近読んだ本
1)”カインの末裔”・”親子”・”秋”(有島武郎著)
”カインの末裔”は有島の代表作でよく知られています。有島の父が北海道の羊締山麓のニセコに購入した有島農場をベースにしています。過酷な自然や貧しさと闘うオウトロー的な一農民の物語です。小作人制のあった明治、大正期が舞台ですから、現代の日本と隔世の感はありますが、一読されることをお勧めします。有島の文章表現、”秋”で特に顕著ですが、自然の描写が的確で素晴らしい。
あの蝦夷富士と言われる羊蹄山の麓(ニセコ山麓)に”有島武郎記念館”があり、多くの彼にまつわる物品が展示してあり一見の価値があります。ぜひ、足を運んで下さい。時のスナップです。
2)”遠い朝の本たち”(須賀敦子著)
この作家というか随筆家をご存じでしょうか。私は迂闊にも最近テレビで知りました。聖心女子大を出て単身欧州へ留学、フランスからイタリアに移り、そこで結婚しています。夫に死別し日本に戻り、それから文筆活動をしていますので作家としての期間は50代後半からの10数年に過ぎません。とにかく彼女の文章は清冽で読みやすい。真の随筆家とは彼女のような人をいうのかもしれません。
2009.11.8 最近読んだ本
1)”方丈記”(鴨長明著 角川ソフィア文庫)
言うまでも無く「行く河の流れは絶えずして・・・・」で有名な古典です(現代語訳付き)。作者の名は「ながあきら」というのが正しいそうです。鴨家は京都下鴨神社の神職のトップ、宮司の家柄で、長明は子供時代に叙爵を受けている位、かなりの名家です。しかし、宮司相続の問題(彼は後継者と目されていましたが従兄弟との後任争いに敗れた)やら、その時代に続いた天変地異を実体験したせいか隠遁者になったのです。この本の主題はご存知と思いますが、無常観です。こういう本を読みたくなったのは、私も還暦(来年)近くになったせいでしょうか。
2009.10.14 最近見た映画
1)”モダン・タイムズ”(C.チャップリン監督)
2)”独裁者”(C.チャップリン監督)
チャップリンはやはり天才と思います。コミカルな仕草、演技は言うまでもありませんが、締めに人生、特に愛について述べます。実はそれが彼の本当の姿なのかもしれません。コミカルな仕草は日本の喜劇人がよく行うドタバタ(これはわざとらしく好感が持てません)ではありません。
3)”隠し砦の三悪人”(黒澤明監督)
4)”南部の人”(ジャン・ルノワール監督)
最近はこのページをご覧になってお分かりのように、著作権の切れた昔の映画が安価で市販されていますので、専らそれを見ています。これもその一つです。主演はザカリー・スコットという人。アメリカ南部の新規開拓農家の苦労というか悲惨さを描いたものです。気難しい隣人との確執、豪雨による畑の被害、子供の偏食や老人を抱える家族の問題などが描かれています。今や世界を席巻し繁栄している様に見える大国アメリカも、日本や他の発展途上国等が抱えている種々の問題を経験しているということですね。
2009.10.13 最近読んだ本
1)”現代俳句歳時記”(飯田龍太著 新潮選書)
下手の横好きで俳句が好きです。読むのはいいのですが、作句は苦手で小学生が作る様なものばかりで、人にお見せるするほどのものは出来ません。この本の著者は有名な俳人飯田蛇笏の息子さんです。季節ごとに専門俳人や素人も含めてその俳句を掲げ、それぞれに寸評を書いています。俳句は五-七-五の17文字で表わす短詩ですので、ますます俳句の難しさを痛感しました。
2)”ぶらり江戸学”(杉浦日向子著 マダラ出版)
たまたま古書店で買った本です。しかし、江戸の研究者だけあって雑学を教えられました。例えば、「小股が切れ上がった」とは足首から膝、腿へかけて弦を張った弓のような足、(こういう人が着物を着ると実に色っぽいらしい)とか、「下町」とは城下町の意で城の下の町ということらしいです。他にも上方と江戸の相違点など。しかし、先年亡くなりましたね。合掌。
3)”5000年前の日常ーシュメル人たちの物語”(小林登志子著 新潮選書)
エジプト文明などでよく知られている世界四大文明の一つ、チグリス・ユーフラテス河流域のメソポタミア文明の話です。実に紀元前25世紀から20世紀。この時代に現代と変わらぬ交易、夫婦関係、家族生活、王家の政略結婚など粘土版に書かれたシュメル文字を解読して、細かに伝えてくれています。人間は根本においては変わらぬものなのです。いつの世も不道徳は不道徳であり、良いことは良いのですね。
2009.8.16 最近読んだ本
1)司馬遼太郎著”壱岐・対馬の道”(街道をゆくシリーズ№13)
私が全43巻読破を目指している街道を行くシリーズです。壱岐も対馬もまだ行ったことのない土地ですが、韓国に近く魏志倭人伝に出てくる所です。いつも司馬遼の博識さや資料調べには驚かさせられますが、今回も同様です。壱岐は田園風景たっぷりの良い田舎という感じですが、対馬は土地が粗く岩がごつごつしたような所らしいです。遣新羅使の雪連宅満(ゆきのむらじやかまろ)、俳聖芭蕉の供をした曾良、対馬藩の儒者で朝鮮使の通訳として活躍した雨森芳州などが出てきて、本当に興味深く読みました。
2)姜尚中(カンサンジュン)著”悩む力”
ちなみに政治学者で東大教授である著者は1950年生まれで私と同年です。
夏目漱石とマックス・ウェーバーの二人を軸に人生というか生き方にヒントを与えようとした本です。主に若い人を対象にしています。漱石の小説の、特に夫婦や男女のあり方をよく取り上げています。残念ながら、私はあまり漱石の本を読んでなく、これから少し読んでみようかと思っています。内容としては、彼が言わんとしている事は一言で言えば、”悩むならとことん真面目に悩め。そうすれば何かが見えてくる。”ということなのでは。しかし、繰り返し読まないとよくちゃんと把握できない様です。
3)”イギリスの歴史”(指昭博著。河出書房新社)
ようやくこの本を読み終わりました。読むのが遅い自分で、これは半年近くかかりました。本来、読書というのは、面白さにつられて、いつの間にかあっさりと読んでしまうのが良いのでしょうが・・・。以前から英国に興味がありますが、未だ訪れたことはありません。かつて大英帝国といわれた紳士の国。この本はその歴史をわかりやすく説明しており、図も豊富です。それにしても欧州というのは、言語が異なるにも関らず地続きのせいか(英国は島国ですが接近しており)、王室の結婚など昔から大いなる交流があり、日本では考えられない事態です。
2009.8.15 支笏湖周遊
お盆休みを利用して、透明度や深さで日本屈指の湖、支笏湖に一泊してきました。天気に恵まれ良い休息になりました。
1)オコタンペ湖
支笏湖北西側にある神秘的な湖で、鬱蒼とした森に囲まれ全容は見れません。北海道の三大秘湖の一つです。支笏湖と同様ヒメマスなどがいてボートを出して釣り人がいました。丁度、この湖に魅せられたアマチュア・カメラマンがおられて霧に覆われつつある湖の写真を戴き、現在待合室に飾ってあります。。
2)山線鉄橋
支笏湖の観光船乗り場のすぐ近くにあり、散策する人々が大勢いました。道内最古の鉄橋と言われ、やや色あせていますが、出来た当時の真紅の色鮮やかさが想起されます。支笏湖地域に電力を供給している製紙会社が発電所を建設するために使っていたとのことです。
3)白扇の滝・ラルマナイの滝(恵庭渓谷)
支笏湖から恵庭に抜ける道道117号線沿いにあります。やはり滝を見ると涼しさを感じ、一時暑さを忘れさせてくれました。
2009.7.3 生まれつき全盲の辻井伸行君(20歳)が国際的なピアノコンクールで優勝。
ニュースで垣間見ただけですが、全盲にも関わらず、鍵盤を正確なタッチで流れるように演奏していました。ピアノと自分が一体となっているのでしょう。アンビリーバボーですが事実です。
彼は両眼の小眼球症ということで、これは胎児の時に眼球が正常に発達せず未熟のまま生まれたということです。受精卵は一個の胚細胞となり、それが分裂を繰り返し、部分部分が身体の色々な器官、臓器に分化して人間の形となって生まれてくる訳です。これがスムースに進行する事はうがった見方をすれば奇跡的なことと思います。
このように先天的に眼に障害があることがあります。例えば、妊娠初期に風疹にかかると赤ちゃんは先天白内障などになることがあります(風疹症候群と言われます)。大体多くの方は小さい時に予防接種を受けていますが、もし風疹に抗体がない女性は予防接種を受けておくのがベターです。他に、染色体異常でマルファン症候群と言って水晶体が脱臼し視力障害を来たすことがあります。水晶体脱臼とは水晶体の位置がずれてしまっている状態ですが、症状の多くは子供時代はわからず青年期に現われます。また、生まれつき眼内圧が高い先天緑内障もあります。これは極めて治療困難なものです。眼内圧が高いせいで黒目(角膜)が拡張して大きくなり牛眼と言われます。(たしかに牛の眼、黒目は大きいですね。)また、原因は不明ですが、視神経低形成といって生まれつき視神経がちゃんと発達していないこともあります。
辻井君は全盲というハンディキャップがあるにも関らず、並外れたことを成し遂げました。“好きこそものの上手なれ”という言葉もありますが、人間、強い意欲や意志があれば、誰でもかなりのことが出来るのでしょう。(タウン紙”せせらぎタウン”7月号に掲載。)
2009.6.27 ヨーロッパ絵画ーロココ、ロマン派、バルビゾン派ーを見て
道立旭川美術館で開催されている”ヨーロッパ絵画の輝き~ロココの華・バルビゾンの田園~”(後藤美術館所蔵)を堪能してきました。後藤美術館は芭蕉の名句”閑さや 岩にしみ入る 蝉の声”で知られる山形の山寺立石寺にあります。特に良かったのはバルビゾン派と言われるルソー、ミレー、クールベ、コローなどの作品です。バルビゾン村はパリ郊外フォンテーヌブローの森の近くの自然豊かな村で、都会的な雰囲気が勃興してきたパリに嫌気がして画家達が移り住んだ所です。どの作品もそれぞれ感銘させるものがありますが、良かったのは以下のようなものです。”小川で働く人々”(トロワイヨン作)。”橋のたもとにて”(ヴェイラサ作)。”庭にて”(ミレー作)。”月夜の羊飼い”(エミール・ジャック作)。他にバルビゾン派ではありませんが、良かったのは”荒地のマグダラのマリア”(ジャック・エンネル)、”クラリッサ”(エバレット・ミレイ)。”少女と鳩(グルーズの模写)”(J・コンスタブル)など。名画をじっくり鑑賞するのはいいものです。何か気持ちが太った感じになります。
2009.6.26 最近読んだ本
1)ガルシア・マルケス著”百年の孤独”(1967年 新潮社刊)
驚きました。こんな小説初めてです。storyはマコンドという村の開拓者一族ブエンディア家の百年に及ぶ物語です。一代目から数代に亘る各人の、また、その妻や夫(正式に結婚していない者も含めて)の各様の生き様、主にその内面の葛藤や感情、そして生活の状況などを細かに描出しています。著者であるコロンビアの作家ガルシア・マルケスがノーベル文学賞(1982年)を受賞したのも、おそらくこの代表作を筆頭に、人間の内面の表出の仕方の深さによるものと私は考えています。この小説以降、世界の小説が変わったと言われているそうです。500頁に近い大作ですが、引き込まれてしまいます。こういう物語を読むと日本の現代作家は、人間の内面の奥深い所の表出が不十分で、温室的平和さに慣れ、人間の醜さや嫉妬、性悪説等の人間の悪い面がよく見えなくなっているのではないかと思ってしまいます。
2)東野圭吾著”怪しい人びと”
今や日本の若手推理小説家を代表する1人と言っていいでしょう。これは短編集ですぐ読み終わりますが、何れの短編も読む者を納得させてくれます。期待に外れません。
2009.6.25 最近見た映画
1)”追いつめらて”(1959年)
主演ホルスト・ブッフホルツ。名子役と知られているヘイリー・ミルズも準主役として好演しています。最後の場面がいい。
2)”真夜中の記憶(1991年)
原作シドニー・シェルダン。典型的なサスペンス。
2009.4.23 北海道学校保健功労者表彰を戴いて
この度、全く思いがけなく、格別学校医として顕著な功績もありませんがこのような表彰を戴きました。昭和52年に医師になり、以来、眼科医として32年、自分なりに一生懸命勤めて参りました。今後も自分のペースで進んで行きたいと思っております。
ところで、眼科に関する学校保健上、現在幾つかの問題点が御座いますのでこの機会に思いつくままに少々したためたいと存じます。列挙いたしますと次のようになります。①プール後の洗眼の是非について(塩素の問題)。②強アルカリである消石灰の使用について。③結膜炎(はやり目)と登校停止。④色覚検査の廃止。⑤コンタクトレンズ装用者の低年齢化、等です。
以上、眼科学校保健上、気にかかる事を記しました。少しでもご参考になれば幸甚に存じます。(旭川市医師会発行 旭医便りに掲載)
2009.3.15 最近読んだ本
1)”プリズン・ストーリーズ”(ジェフリー・アーチャー著)
英国の作家ジェフリー・アーチャーをご存知の方も多いと思います。彼が偽証罪で実刑判決を受け収監された際、刑務所内部で見聞したことを基に書いた12編の短編集です。ある夫婦の話”この水飲めません”はある策略を弄した夫も逆に妻と共に犠牲になってしまうぎょっとする話です。脱税を上手くしたつもりが執拗な捜査で見抜かれた”マエストロ”も面白いです。
2)”父さんの銃”(ヒネル・サレーム著)
フセイン政権下のクルド人少年(著者)は将来に希望を持ちつつ、イラク政府のクルド人へのいじめ、弾圧から日々、家族共々逃避行をしたりして何とか生き延びていきます。今は映画監督としてパリで暮らしているようです。日本で安穏として生活している我々からは、実感できない遠い世界のことのようです。今の日本人もこういう本をたまに読んではどうでしょう。
2009.3.5 最近見た映画
1)”マンマ・ミーア”
あのアカデミー賞最多ノミネート女優のメリル・ストリーブ主演のミュージカル映画です。彼女含め共演する女優陣の元気さが伝わってきます。Storyとしては現実にありそうな無いような筋で、3人の父親候補が現われます。以前から英国などで上演されていたそうです。ただ、007俳優のピアース・ブロスナンの歌唱力は頂けません。
2)”チェンジリング”
突然行方不明になったわが子。警察から見つかったという連絡が入り、会うが、わが子ではないと母親は主張する。実話に基づくものです。現在ならDNA鑑定で解決でしょうが。いろいろ考えさせられた映画でした。精神科に強制入院させる警察。母親の警察や医師らとの闘い。凶悪な殺人犯。是非ご覧になって下さい。
3)”おくりびと”
今話題の映画です。久々に邦画でアカデミー賞を獲得しました。コミカルな場面もありますが、主演の本木雅弘を取巻く脇役の好演も注目したい。妻の広末涼子や山崎努ら。この映画によって、納棺師という仕事に光が当てられましたが、こういう事があって世の中が少しずつ変わっていくのでしょう。
4)”旭山動物園物語”
私の住んでいる街の動物園です。今や全国に知られました。こんなに話題になり、入場者日本一になるなど大変驚いています。動物園に限らずどんな事でも工夫や趣向を凝らすなどして当事者達の人の力で何とかなるということでしょうか。
5)”地上より永遠に”(フレッド・ジンネマン監督。1953年作品)
モンゴメリー・クリフト、バート・ランカスター、ドボラ・カー出演。フランク・シナトラも脇役で出ています(アカデミー賞の助演男優賞受賞)。日本の真珠湾奇襲攻撃直前の米軍ハワイ駐留部隊の日常を描いたものです。不倫や街の酒場での事件や部隊内部でのいじめなどを描いています。50年以上前の映画とは思えず現代にも十分通用する内容です。
6)”折れた矢”(1950年作品)
ジェームス・ステュワート主演。西部開拓時代のインディアン・アパッチと軍の絶え間ない流血をテーマにしています。アパッチの若き女性を娶った1人の男がその間を取り持つというか仲介役を果たすのですが、その新妻が戦いの中犠牲となります。白人と原住民インディアンとは数知れず諍いがあり、その影にはこの映画以上の悲劇が繰り返されたことでしょう。
2009.1.25 最近読んだ本
1)”神戸・横浜散歩・芸備の道”(司馬遼太郎著。”街道をゆく。21”)
私の愛読書司馬遼の”街道をゆく”の1冊です。全43巻読了を目指していますが、未だ13巻。彼の歴史特に日本史に関する博識さや資料の渉猟にはいつも驚嘆するが、それも歴史や史跡に対する尋常でない興味や愛着というか心意気が基本にないと書けないだろう。
2)”夢をかなえるゾウ”(水野敬也著)
たまたま店頭で手にしたのですが、これがかなり売れている本でした。帯にあるように確かに(抱腹絶倒とまでは言いませんが)、笑わせてくれる面白い本です。しかし漫画的に書いてありますが、内容は真面目で、処世訓というか人生訓というか、道徳的内容でこの本自体は良い本です。ぜひ読んでみて下さい。寝ながら気楽に読めます。
2009.1.22 最近見た映画
1)”チェ 28歳の革命”
あのキューバで闘ったチェ・ゲバラの話です。彼が医者であるとは知りませんでした。彼が負傷者を手厚く扱ったり、非道な事には仲間であっても厳罰に処する姿勢には好感を持ちます。また、それまでのキューバの軍事独裁政権をカストロと共に倒した事に対し評価はします。しかし、彼の話し合い等でなく、あくまで戦闘にこだわるところには頷けないものがあります。
2)”群衆”(キング・ヴィダー監督。1928年製作)
無声映画です。内容は出世を口癖のように言う青年とその妻。その出会いから紆余曲折の結婚生活のお話。結局は愛があれば何とかなるさという展開で終了。内容とタイトルが合っていない気がしますが・・・。群衆というタイトルを付けた監督の意図は、いろんな事が各人にあるが、それは結局は群衆の中の一コマに過ぎない、誰でも1人1人storyを持っているということなのか。
3)”嵐の三色旗(二都物語)”(1934年製作)
C.ディケンズによるイギリス文学の名作二都物語の映画化です。又しても恥ずかしながら、こういう筋の物語とは知りませんでした。時はフランス革命の直前。愛する人のため、その夫の身代わりとなってギロチンに架けられる青年弁護士。約70年前の映画のため、どの俳優もまったく存じ上げません。これを見てフランス革命についてもっと知りたくなりました。フランス革命の詳細はよく知りませんが、大まかな構図で言えば、庶民が貧困や重税に喘ぐ中、貴族達は贅沢三昧の生活を送り、ついに国民の怒りを買ったということなのでしょうか。
2009.1.1 年頭に当たって
以前から不況の日本にそれに、追い討ちを掛けるアメリカ発の不況。今や日々、日本のメディアにそれに関連しないNewsはありません。今年はどうなるのでしょう。短期間に回復するとは思われません。麻生首相も3年は見ているようです。個人事では、自分のやるべき事、守備範囲を日々こつこつと地道に、地に足を付けて行くことが最も大切と感じております。それでも診療にまつわる事、医院の経営、スタッフや家族の事、健康等心しなければならない事ごとが多々あります(それは誰でも同じでしょうが)。大過なく、また1年後の正月を迎えたいものです。皆様にとっても本年が良い年であるよう願っています。
2008.12.14 山形由美フルート・リサイタル
旭川市大雪クリスタルホールにて、満員の中行われました。以前より私は楽器の中でもフルートの音色が好きでCD等で聞いていました。この度は早々とチケットを購入し待ちに待ったコンサートです。期待に違わず聴かせてくれました。中でもジュナン作曲の”ヴェニスの謝肉祭”は良かったです。フルートの素朴で人に媚を振らない音色が良いですね。
2008.12.10 最近読んだ本
1)”チエーホフ・ユモレスカ傑作短編集”(チエーホフ著)
いうまでもなくロシアの著名な作家チエーホフの短編集です。本邦初訳のものもあります。チエーホフは医者ですが、医学部在学中より破産した家計を助けるためにせっせと短編を作り続けました。それをある作家が文才を浪費するものだという指摘をし、それからチエーホフは腰を据えて作家活動をするようになったとのことです。勿論いい短編もありますが、私から見てこれはどうかと首を傾げたくなるようなものあります。
2)”北の季寄せ”(近藤潤一著)
北海道をテーマに俳句の季語別に纏めたものです。北海道が季語的には本州と時期がずれていることを実感させてくれます。俳句はその背景が不明だと理解がなかなか進みませんね。私としては俳句は読むのは好きなのですが、才能がないのでしょうか作るのがすごく難しいです。
3)”ただマイヨ・ジョーヌのためでなく”(ランス・アームストロング著)
将来を嘱望された自転車競技選手が癌(睾丸癌)に侵され、脳や肝臓にも転移が見つかった。医学的にはほぼ治癒見込みの無い状態だったが、本人の病気に対する尋常でない闘志も相まって奇跡的に回復した。その後、あの有名なツール・ド・フランスの7連覇という偉業を果たした。子供も出来た。これはその本人の病気との闘いの記録です。彼のこういう言葉がいい。”僕はツール・ド・フランスの優勝者と言われるより癌生還者の肩書きを選ぶ。癌が人間として、男として、夫として、息子として、父親としての僕に欠けがいのないものを与えてくれた。”実際、脳や肝臓に転移した癌が治癒する見込みは極めて少ないだろう。奇跡的だが、こういう例も世の中あるのだ。言い古されているが”Never
give up”という言葉を今一度思い起こそう。*マイヨ・ジョーヌとは、ツール・ド・フランスの優勝者だけが着る栄光の黄色いジャージです。
2008.11.15 最近見た映画
1)”まぼろしの邪馬台国”
古代好きのワンマン社長宮崎康平は盲目である。彼に求婚されたアナウンサーの和子は、その手となり足となって邪馬台国探しに二人三脚の人生を歩む。宮崎役の竹中直人、彼はいつもそうだが演技過剰。どうも好きになれません。それに比べ和子役の吉永小百合は言うことなし。
2)”わが青春に悔いなし”(黒澤明監督)
1946年作品。原節子主演。当然黒澤組の藤田進や志村喬が出ています。タイトルと内容のgapには驚きました。意外に原節子はこういう泥にまみれる役も合っていますね。
3)”三銃士”(1948年作品)
この粗筋は言うまでも無いでしょう。アレキサンドル・デュマの名作です。主演はあの”雨に唄えば”のジーン・ケリーで、脇役の女優としてラナ・ターナーが出ています。心躍る活劇で気楽に見るのに持ってこいです。あっという間の2時間で、沈んでる時の気分転換に見て下さい。
2008.10.5 最近読んだ本
1)”天章院篤姫と皇女和宮”(清水将大著)
ご承知のように、今や最も視聴率の高いNHKの大河ドラマの関連本です。私も欠かさず見ています。篤姫や和宮に関する事はそれほど目新しい事は書かれていません。圧巻は大奥に関することです。まさに微に入り細に入りという感じで詳しく述べられています。大奥のしきたり、日々の生活、歴代将軍の正室や側室、身分の高い御年寄などの大奥女中の消息などが細かに書かれています。
2)”国境の南、太陽の西”(村上春樹著)
内容はタイトルからは想像つきません。幼なじみの女性との再会がメインの話ですが、不倫ですので家庭人としての生き方も絡んで、”僕”の葛藤がよく表出されています。最後に女性との邂逅が夢幻の如くに思わせられます。文章が複雑でなく読みやすく、一気に読ませる所はさすがです。しかし”ノルウェイの森”などもそうですが性描写が露骨で、もっと言えば大江健三郎のような深く真直ぐな哲学的思索があまりなく、ノーベル賞という賞にはには適さない作家かと思いますがいかがでしょう。
3)”海と毒薬”(遠藤周作著)
戦時中の日本軍による捕虜の生体解剖事件を題材にした有名な作品。以前から読んでみたかった本。少々尻切れトンボみたいな感もあるが、生体解剖の目的がクリアにされている。どこまでがfictionなのかわからないが、実際はこの小説以上に残酷な面もあったのではないか。
2008.9.5 N響を聴く
旭川市(文化会館)で久々に行われたN響演奏会に出かけました。演目はドボルザークの交響曲が2曲とモーツアルトのバイオリン協奏曲でした。私は決してクラッシックに造詣が深くなく、たまに聴く位です。会場の8割が埋まり旭川市民の文化度も決して低くはないなと感じました。内容ですが、ドボルザークの交響曲8番は”新世界より”と並び称されるものですが、やはり私は後者が好みです。確かに批評家が言うように管と弦の調和には聴かせるものがありました。それに匹敵する位、小野明子のバイオリンは良かったです。
2008.8.2 最近読んだ本
1)”走ることについて語るときに僕の語ること”(村上春樹著)
ノーベル賞なども取りざたされている作家村上春樹の最大の趣味はマラソンです。彼はあくまで健康保持のためにしていると本著でも述べており、本末転倒していません。よく趣味だったはずのものをその人の人生第一のものであるかのように錯覚してしまう人も少なくありません。本著はかれの国内外のマラソン大会参加を題材に、なぜ走るのか余す所なく語っています。
2)”街道を行く夜話”(司馬遼太郎著)
これは司馬が”街道を行く”シリーズ以外に時折り地方地方にまつわる話を記したものを夜話として纏めたものです。やはり期待に反せず唸らせるものがありました。中でも”ある会津人のこと”、”雑賀男の哄笑”、”千葉の灸”などは面白い。
3)”病床六尺”(正岡子規著)
あの結核で脊椎を侵され(脊椎カリエス)夭折した天才俳人正岡子規の手記です。夏目漱石と親交があったのは有名です。これは新聞に載せた文で毎日これを見るのが楽しみというか生きがいであったのです。色々な内容が書かれており、彼の旺盛な好奇心や興味の広さ、深さが窺い知れます。次のような句があります。”いまならば子規は死なずよいわし雲”(金久美智子)
4)”死を考える”(中村真一郎編)
死は避けられない事なのに、人は正面向き合って死について考えることは少ないです。それは日々忙しいとか色んな理由ですが、実は逃避している面もあると思う。敢えて考えたくない、考えても仕方が無いということでしょうか。この本は死について考察した古典的名著を抜粋したものです。例えばリルケの”マルテの手記”や漱石が胃潰瘍による吐血で死に面したことを綴った”思い出す事など”が載っています。最も心を動かされたのは岸本英夫の”わが生死観”です。岸本英夫は東大教授の宗教学者です。癌にかかり死に面し(彼はそれを生命飢餓状態と言っています)次のように述べています。辛くても苦しくても、与えられた生命を最後までよく生きてゆくよりほか、人間にとって生きるべき生き方はない。専らどうすれば「よく生きる」ことができるかということを考えている。死は生命に対する別れの時。立派に最後の別れが出来るように、平生から、心の準備を怠らないように努めるのである、と。
2008.5.11 最近見た映画
1)”虎の尾を踏む男達”(黒澤明監督。1945年作品)
言うまでも無く、義経逃避行時の勧進帳の話しです。エノケンの演技は特筆もので是非ご覧下さい。
2)”喜びも悲しみも幾年月”(木下恵介監督。1957年作品)
高峰秀子と佐田啓二の灯台守り夫婦の人生を描いたものです。一度見てみたいと思っていました。こういう人生もあるのですね。人生、人、様々ですね。
3)”君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956”(クリスティナ・ゴダ監督 2006年作品)
ハンガリー動乱時の闘争に参加していた女性と水球選手の恋愛を描いています。女性は逮捕され不幸な結末を迎えますが、水球チームはその年のメルボルンオリンピックで因縁のロシアを破り優勝します。ロシアは当時ハンガリーに侵攻、駐留していました。この二人の悲恋はあくまでフィクションです。女性闘士を演じた女優カタ・ドボーは闘士にしては若干弱弱しい。
4)”SICKO(シッコ)”(マイケル・ムーア監督 2007年)
国等が行う公的な医療保険のない国アメリカは恐ろしい。国民は民間会社の医療保険に入ります。4人に1人が医療保険に入っておらず自費となっています。アメリカでは病気になれません。国民皆保険の良さを日本国民はどれほどわかっているのでしょう。欧米諸国の医療保険事情も詳しく教えてくれます。殆どの欧米諸国は医療費はかからず只です。それは高い消費税など税金からの財源があるからです。26%の消費税とか。日本の5%はいかにも低い。これでは国に財源が無いわけです。
5)”築地魚河岸三代目”(2008年)大沢たかお、
2008.5.11 最近読んだ本
1)”奥の細道”(松尾芭蕉著。現代語訳)
説明するまでも無く、芭蕉の紀行文です。これは月刊誌「サライ」の付録としてついてきました。随所に有名な芭蕉の俳句が出てきます。ぜひ一読を。
2)”斎王の葬列”(内田康夫著)
斎王(さいおう)とは初めて聞かれた方もいらっしゃると思います。昔、奈良時代以前からですが、天皇即位の度に伊勢神宮で神に仕えるために遣わされた未婚の女性皇族をいいます。60数名います。斎王の仕えていた所一帯を斎宮(さいくう)といいます。自由に外出も出来ません。生活の殆どを斎宮で過ごしたそうです。つまり監禁状態にあり選ばれると悲劇です。内田康夫の本は気楽に読め気分転換には最適です。斎王についてはこちらを。
3)”乳と卵”(川上未映子著)
昨年の芥川賞作品です。元歌手なる作者川上の文体は独特で現代っ子の面目約如です。内容は叔母の豊乳手術を題材にしていますが、その子つまり姪の独白が秀逸です。”乳と卵”についてはこちらを。
4)”新しい人の方へ”(大江健三郎著)
大江氏のいつも丁寧な文体には敬服します。読書はゆっくりとすることが大切と力説しています。つまり熟読玩味です。それは子供時代、「学校の図書室にはもう読む本がなくなった」と母親に言った際、母親が図書室に彼を連れていき本棚から本を抜き出し「この本に何が書いてあったか言ってみなさい」と言われたが適切に説明出来なかった事に由来しています。私は、実際にお目にかかったことはありませんが、大江氏は日本が誇りうる小説家として尊敬しています。”新しい人の方へ”についてはこちら。
2008.4.30 ドライアイについて
ドライアイという言葉は今や一般に浸透し、テレビのコマーシャルでも流れています。このドライアイについて少しお話しします。
ドライアイとは厳密には病名ではありません。症候群で、目の乾燥感や異物感、充血の他に、涙液の減少による角結膜障害があるものをいいます。角結膜障害とは黒目(角膜)や白目(結膜)の表面が荒れている状態です。この“表面の荒れ”がなくて単に目が乾くだけではドライアイとは言えず、ドライアイの疑いということになります。この表面の荒れは色素(フルオレスセインという黄色い色素)で染めることによりわかります。ドライアイの診断は意外と難しいものです。症状として目の乾きを感じない方もいらっしゃいます。長年、目の充血が取れずそれがドライアイだったという事もありました。矛盾している様ですが、ドライアイによって却って流涙(涙目)を生じることがあります。つまり黒目や白目の荒れによって刺激に敏感になりちょっとしたことで涙がでてしまう状態です。
涙液の減少は、実際に涙腺からの涙液分泌が減少している場合の他に、涙液の蒸発亢進も含まれます。これは、例えばコンタクトレンズ装用時やパソコンなどの画面を集中して見つめる時瞬目(まばたき)の回数が減少して生じるものです。ドライアイと一緒に唾液腺からの唾液の減少による口の乾き(ドライマウス)がある時はシェーグレン症候群という病気の可能性があり、難病に指定されています。
ドライアイの治療ですが、涙腺からの涙液分泌を促す薬は今のところありません。従って、頻回点眼つまり目薬で涙を補うことが最初の治療となります。しかし、涙と同じ成分の理想的な人工涙液はまだ開発されていません。点眼で不十分な時、涙点プラグで“涙点に栓をする”のが効果的です。
2008.1.26 最近読んだ本
1)”指揮官の決断ー八甲田山死の雪中行軍に学ぶリーダーシップ”(山下康博著)
明治35年1月八甲田山で青森五連隊約200名が遭難死したことはよく知られていますが、同時期別の弘前隊37名が一人の落伍者も出さず首尾よく踏破を遂げたことはあまり知られていません。この時の隊長福島泰蔵大尉に注目した本です。しかし私は著者とは違って以下の点を強調したい。何事も例え短期事業であっても、あるいは些細なことと思われることでも決して甘く見ないことが肝心であること。私は”福島大尉だからこそ首尾よくいった”とは思いません。言葉を変えれば遭難した青森隊の指揮官であっても甘くみなければ遭難はしなかった可能性はあると思います。
2008.1.1 年頭に当たって
新年明けましておめでとうございます。今年は、昭和天皇が崩御され元号が平成に改まって早20年目。昨年は”偽”の文字で代表されましたが、今年はどういうこと、どういう文字になるでしょうか。
色々な事件や事故が発生し、直接には勿論間接的にも自分が関与していないのにも関らず、それに影響されるというか、言葉を変えれば幻惑される感が無きしもあらずです。自分というものを見据え、そして自分の現在の環境を落ち着いて見廻し、自分のペースで過ごして行きたいものです。
具体的には幾つか思い描いている事があります。東洋、西洋を問わず大作といわれる本に挑戦したい。手術等の診療に係わる仕事については、今までのペースを堅持したい。
しかし、言い古されていますが、何事も健康があってのことです。健康で充実した良い年にしたいものです。
2007.12.24最近見た映画
1)”モロッコ”(1930年作品)
ゲーりー・クーパー、マレーネ・ディートリッヒ主演。これも戦前の古い映画です。最後にディートリッヒが軍について行くのは、フランスの観客から失笑を買ったというが確かにそうでしょう。少々現実的でありません。粗筋もよくあるstoryで別に見なくてもよかった映画。私としては星はあげられません。一つ言える点はゲーりー・クーパーのダンディー振りで言うことありません。
2)”レベッカ”(1940年作品)
あの清潔感あふれる私の好きな美人女優ジョーン・フォンティン主演です。いうまでもなくヒッチコックの有名な作品ですね。恥ずかしながら初めて見ました。粗筋ですが、離婚もせずhappyエンドなのでその点は救われます。やはり一度は見ておくべき映画です。とにかく筋というか展開が面白く2時間はあっという間に経ちます。ジョーン・フォンティンが父親の仕事の関係で日本生まれということです。嬉しくなりますね。共演のローレンス・オリビエもいい味をだしています。
2007.12.11 最近読んだ本
1)”寡黙なる巨人”(多田富雄著)
著者は千葉大医学部を卒業し東大教授になった免疫学者で、医学関係の方なら知らない人はいないでしょう。かれは、カフカの”変身”を連想させる(ご本人もこの本の中で述べていますが)体験を心底から吐露しています。つまり突然出張先で脳梗塞に見舞われ、翌日から体が麻痺してしまい、それからの苦痛、あがき、リハビリ等の戦いの日々を切々に書いています。その不自由さに対し、我々健常人は改めて強い関心を払わなければならないと思わせられました。
2)”人を活かす経営”(松下幸之助著)
松下イズムとは、この経営の神様と言われた人の大なる常識性、言葉を変えて言うなら非凡なる凡庸さにあるのではないでしょうか。この本のどの章を読んでも、はったり的な考え方や目立って偉ぶる考え方は出てきません。あくまで、人としての当たり前の道を辿らんとする姿勢が窺えます。私の生き方に自信を与えてくれました。
3)”容疑者Xの献身”(東野圭吾著)
内容は詳しくは言いません。思わぬ展開にあっと言わずにおられません。題名のXの意味も読後にわかります。東野氏の作品は初めてですが、現在ガリレオ何とかいう作品がテレビ等で話題になっている様です。いつも思うのですが作家は粗筋を書く前に決めているのか、あるいは書きながら展開を決めているのでしょうか。私がよく読む内田康夫氏は後者の様です。しかし、この作品の主人公石神がああまでして隣家の女性に恋するというのは極端で現実的で無く無理があります。
2007.11.18 私の好きな11月の俳句
小春日や父がだんだん小さくなる (白石司子)
クレーンを吊っているのは冬晴です (尾田秀三郎)
木枯やわれを支ふるものはわれ (下村梅子)
一人なら毛布を奪ふこともない (櫂未知子)
鯛焼をふたつに頒けて尾がさみし (ながさく清江)
悪びれず鯛焼食ぶる舞妓かな (松村幸一)
雑炊に舌打ちしたるさびしさよ (能村登四郎)
新海苔にのせる海鼠腸妻も飲む (福田康司)
洩れ陽さす唐招提寺冬構 (鈴木六林男)
出稼ぎに父とられじと厚目貼 (木附沢麦青)
木の葉散る金色に刻染まりつつ (野澤節子)
少年ら枯葉のスープ作るらし (本田ひとみ)
2007.10.19 最近読んだ本
1)”死体は語る”(上野正彦著)
この著者は法医学の分野では知らない人はいないはずです。長く東京都監察医務院に勤めていました。仕事は簡略していえば変死体の検査から、死因や死亡時の状況などを推察することです。解剖等により変死体の死亡時の状況を類推にしても、一般常識だけでは不足で、一般大衆の下々の生活状況を知らないと十分にこの仕事はやっていけないでしょう。一読すべき本です。
2)”伊能忠敬測量隊”(渡辺一郎著)
あの隠居後の第二の人生を見事に有効利用、充実させた伊能忠敬の本です。現代にも通用する程の緻密な日本地図を手作りで、自分たちの足で測量したものです。忠敬は決してスーパーマンや天才でなく普通人であったと随所に記されています。私は井上ひさし著”四千万歩の男”を以前に読んだこともあり、この本を感動を持って読みました。「自分はもう○○歳」と言わず、「まだ○○歳なんだ」という意気を胸に抱いて今後の人生を前進して行きたい。
3)”嵯峨散歩、仙台・石巻(街道をゆく26)”(司馬遼太郎著)
司馬の本はまず読んで損と思う事はなく、これも例外でありません。彼が旅で遭遇した事についてのメモ魔的なところやそのまめさにはいつも驚嘆しています。例えば碑文の詳細や出会った人との詳細な会話や固有名詞など、よくこれほど書けるほど忘れずにいると。
2007.10.18 最近見た映画
1)”ナイアガラ”
1953年作品。主演マリリン・モンロー、ジョセフ・コットン。あのアメリカとカナダ間に跨る名瀑布ナイアガラの景観がたっぷり楽しめます。不倫を絡めたミステリーに仕上げた良品。肉体派とされているマリリンが好演しています。夫が自己犠牲の精神を見せる終局は、何ともやるせない思いを掻き立てられますが、それで良かったのだという気がします。
2)”ジェーン・エア”
1944年作品。主演ジョーン・フォンティン。恋する相手として若き日のオーソン・ウエルズが出ています。この主演のジョーン・フォンティンという女優は不勉強で知らなかったけれども、清楚で非常に魅力ある女優です。改めて言うまでも無くイギリスの名作小説の映画化です。リッチな青年が火災事故で失明することを除けばハッピーエンドではあります。この内容は作者(シャーロッテ・ブロンテ)の体験に根ざすものか、あるいfictionなのか興味のあるところです。孤児である主人公の少女時代の体験は見てられないほど可哀想です。
3)”武器よさらば”
1932年作品。主演は軍人役にゲーリー・クーパー、その恋人の看護師役にヘレン・ヘイズ。言うまでもないですがA.ヘミングウェイの名作の映画化です。75年前の作品ですが内容は全く現在でも通用するものです。恋人が死んでゆくラストは何とも悲しいですが、現実にこれと類似の事は少なくないでしょう。最後を迎えようとする場面の二人の会話は聞き逃せません。
2007.10.7 私の好きな10月の俳句
秋まひる道にしやもじが落ちてゐる (郡山やゑ子)
長々と尾のあるごとし秋の暮 (奥坂まや)
秋うららガイドの私語の土地訛り (篠田悦子)
陸橋に満つ朝寒の女学生 (草間時彦)
秋深き隣は何をする人ぞ (松尾芭蕉)
山の駅降りしは一人秋深む (内田園生)
行秋の耳かたむけて音はなし (高木晴子)
無言とは妻の仕打ちの秋の霜 (澤悦子)
おそれつつ老ゆる他なき冬支度 (北さとり)
直立の案山子O型かも知れぬ (野木桃花)
新藁をくわえて走る小犬かな (長谷川櫂)
体育の日もの書いて戸を出でず (園田夢蒼花)
大鹿に近すぎる銃向けたまま (八木博信)
涙拭き面を上げよ鳥渡る (下村梅子)
滝壺にりんごを洗ふ男かな (岩井久美恵)
心病みきのこの森に入りびたり (西口昌伸)
2007.9.15 最近見た映画
1)放浪記:
高峰秀子主演。言うまでも無く女流作家林芙美子の自伝的映画で、少々modifyされていますが、それなりに見せてくれます。見所はやはり結婚、離婚を繰り返した男性達との貧乏生活、葛藤を描いたところでしょう。それにしても、この映画の製作年頃の高峰秀子の活躍には目を見張ります。
2)”ジャンヌ・ダルク”:
1948年作品。イングリッド・バーグマン主演。言うまでも無く15世紀、祖国フランスを英国の侵略から救うため立ち上がった、信仰深い聖少女の話しです。異端として火刑にされた悲劇の少女です。イングリッド・バーグマンがどうしてもやりたかった役らしいですが、彼女のあの上品な顔、そし容姿は戦火にまみれる役はしっくりしません。彼女には男性との関係で葛藤するような恋愛物語の方が合っていると思います。
3)”雨の朝パリに死す”
1954年作品。エリザベス・テーラー主演。恋愛映画ではあるが、最後に泣かせる。はじめは、売れない作家たる夫と酒、パーティーなどで遊び呆ける妻を軸としたstory。しかし、最終場面。姪を引きとって育てている義姉が頑なに姪の引き取りを拒む。その真意は、義妹を死なせた事に対する罰ではなく、実は愛していた自分と結婚しなかったことに対する罰だと義姉の夫が説く。あの007のロジャー・ムーアが不倫相手の若き青年として出ています。
2007.9.14最近読んだ本
1)”遺骨”:
内田康夫著。最近、内田康夫に嵌っています。まずStoryの展開というか筋立てが面白い。Story上、意外な発展をさせて楽しませてくれます。
2)”化生の海”:
内田康夫著。これも期待を裏切らない良い作品でした。
3)”灯”:
森村誠一著。これは読んで時間の無駄でした。あまり森村誠一作品は読まないけれど、こういう手合いのものなら、今後読む気になりません。
2007.8.12~14 お盆休みに美瑛に
時々行くのですが、美瑛のペンションに1泊してきました。美瑛町は私の住む旭川市から車で30分でいけ、もう少し進むとスキーで有名な富良野に着きます。パッチワークの景色を持つ美瑛町は、日本で最も美しい町の一つに数えられています。残念ながらラベンダーの旬の時季は終わっていました。私はたまに美瑛のペンションに行ってのんびり疲れを落としてきます。西日の残照が良かったです。美瑛町についてはこちら。
2007.4.5 最近読んだ本
①”部長の大晩年”(城山三郎著)
永田耕衣という会社員と俳人の二足の草鞋を履いた粋な人物の評伝。俳句以外に書画等にも造詣深い多趣味の人だったらしい。俳句が異端というか難解で、俳句の世界では有名であったそうです。97歳で大往生したそうです。私も俳句には興味がありますが、作る俳句が幼稚でまだまだこれから勉強です。
②”北海道の食彩「マッカリーナ」物語”(笠井一子著)
札幌でフランス料理店を開いているシェフ中道博氏が羊蹄山の麓、農作物の産地真狩村に作ったオーベルジュが「マッカリーナ」です。オーベルジュとは宿泊施設をもつレストランのこと。彼の料理に対する姿勢というか料理観というものを表現するべく、村長さんら村の方々と協力して他の仲間と立ち上げるまでを描いた爽やかな本です。一気に読まされます。野菜をメインとするフランス料理で一度行ってみて下さい。
③”王妃マリー・アントワネット”(遠藤周作著)
あまり遠藤周作氏の本は読んでいませんが、これは一気に読みました。フランス革命当時の世情がよく描かれています。登場人物も架空の人物が加わり多士済々です。言うまでも無くマリー・アントワネットに関する記述が多く、特に後半の処刑されるまでの描写は一本の映画を見ているようです。彼女の母親としての一面もよく描かれており見逃せません。
④”日輪の遺産”(浅田次郎著)
浅田次郎作なので期待して読んだが期待はずれでした。storyは悪くないけれど今一つ読み手に響くものが無かったです。
2007.4.4 最近見た映画
①笛吹川:
木下恵介監督作品。武田信玄や上杉謙信達の割拠する時代。戦に自分の子供を取られていく家の両親、特に母親を描いています。見ていて言い様の無い虚しさ、もどかしさを感じました。その時代、戦に出るということが出世の手始めとして、若者には一種のステータスと錯覚されていたようです。戦は命を捨てる事だ、百姓をしろと言い聞かす親。現代の学歴社会にも一脈通じるものがありますね。
②二十四の瞳:
昭和29年の木下恵介監督作品。言うまでもなく小豆島を舞台とした高峰秀子主演の名作です。恥ずかしながら初めて見ました。泣く場面が多すぎる位あり、それにつられてなのか私自信も泣けて仕様がありませんでした。師範学校新卒の女教師が初めて担当した小学校1年生12名(男5名、女7名)。彼ら彼女らの家庭やらその後の人生、歩みを綴っています。それらに直面した大石先生の人生も上手く描いています。ところで高峰秀子さんはお元気なのでしょうか。
③カルメン故郷に帰る:
木下恵介監督作品。高峰秀子主演。
④風と共に去りぬ:
ビビアン・リー主演。
2007.2.12 父の目を手術して
ゴルフ好きな父が白内障で見ずらくなり、昨年12月に左目、今月に右目を手術しました。手術は手術する側も患者さんが誰であれ緊張します。父ということで普段以上に異常に緊張するかと思っていましたが、他の患者さんを手術するのと殆ど変わりありませんでした。それは緊張しなかったということではなく普通通り緊張し、それ以上でもそれ以下でもなかったということです。
現在、白内障手術は簡単だなどという風潮にあります。しかし白内障手術には、頻度は少ないですが色々と術中合併症が起こることがあり、実は気の抜けない、油断のできない手術なのです。その辺の所が一般には知られておらず、する側としては歯がゆい思いなのです。
2007.1.27 最近読んだ本
①”人は見た目が9割”(竹内一郎著)
この「見た目」というのは広義の意味で、人間関係のコミュニケーションにおける言葉以外のもの全てを指しています。単に目で見た外観ということではありません。誤解しないようにして下さい。そういうことではこのタイトルも肯けるものです。特に著者は舞台、戯曲関係の人ですからそういう面での考察が多いです。
②”対日折衝記”(P I リコルド著)
江戸時代末期、ロシアのゴロブニン艦長他が日本側に捕えられた際、その解放に尽力したあの高田屋嘉兵衛とリコルドの話。ゴロブニン艦長直下のリコルド艦長による手記です。副題として”1812年と1813年における日本沿岸航海と日本人との交渉”としてあり、当然その日本人とは主に高田屋嘉兵衛のことです。嘉兵衛は余程肝の据わった人物であった様です。ロシア側に捕えられた際、リコルドと寝食を共にしましたが、お互いに気持ちが通じるにつれ、リコルドは嘉兵衛の大器ぶりを随所に記しています。嘉兵衛を筆頭として当時交渉に当った日本の庶民側のロシア語会話習得の速さ、その努力には敬意を表せざるにはいきません。いかに短時間にロシアと交渉できる位の会話力を身に付けていったことか。私など英語を長年学んできたのに、英会話力の貧弱なことお恥ずかしい限りです。
③”勇将ジェラールの回想”(コナン・ドイル著)
私の好きなコナン・ドイルの珍しい冒険歴史小説です。殆どの方はドイルといえばシャーロック・ホームズを連想するでしょう。ナポレオン配下の騎兵旅団きっての名剣士ジェラール准将の痛快無比の武勇談です。高校生向きですが、大人にも楽しめます。やはりドイル流のどんでん返しも随所に見られ、一巻の冒険映画を見ている様です。ドイルは他に科学小説も書いているとのことで、今後読むつもりでわくわくしています。
④”世界の日本人ジョーク集”(早坂隆著)
今評判の一冊です。沢山の日本および日本人関連のジョークが載っています。素直に笑えるもの、微笑ましいものから(極端に言うと)読むに耐えないものまで出ています。例えば”日本人は入浴する前に体を洗う(欧米では体を洗うために入浴する)”とか。日本人の性格を揶揄するようなものが多いけれど、経済的なジョークもやはり多いようです。しかし、一昔前、日本あるいは日本人に関する本(例えば”ジャパン アズ ナンバーワン”など)が欧米を筆頭に外国人等により多々でていましたが、バブルが終わり不景気になってからは影をひそめましたね。
2007.1.26 最近見た映画
①”硫黄島からの手紙”(渡辺謙、二宮和也他)
これは評判の映画ですが、残念ながら今一つ感動がありません。硫黄島の日本軍が本土からの応援が見込めない中、苦労しながら壊滅していく様は筋として見えていますが、タイトルの「手紙」に関しての取り上げ方が中途半端です。家内も言っていますが、先日テレビで放映された硫黄島生き残り兵のドキュメンタリーの方がずっと感動し泣けました。
2007.1.6 2007年、平成19年を迎えて
驕る(驕るという言葉が適切かどうか議論のあるところですが)アメリカに世界がしてやられている中、日本は庶民が実感の伴わない好景気ということです。団塊世代の退職、高齢化、少子化、療養病棟の削減、自宅介護の増加、医療費の高騰など多くの問題を抱え、今後に不安をかかえている日本。阿部総理を含む政府に期待を持っていいのでしょうか。
当院としては従来通り、白内障手術と流涙症(涙目のことです)治療に重点を置いて今年もやっていくつもりです。昨年10月からの白内障日帰り手術も順調にいっております。涙目に対する涙管チューブも積極的に施行していきます。
個人的には、誰でもそうですが健康に気をつけマイペースでいきたい。50代も半ばを過ぎたので、仕事一途ではなく、色んな本を読んで気を耕し、良い映画を見て感動し、良い旅をしてリラックスしたいと思います。
2006.12.30 有馬温泉に1泊
神戸六甲の裏側にある古湯”有馬温泉”に1泊してきました。塩分を含む鉄泉で、黄土色というか濃い金色で非常に温まります。温泉街には数箇所、泉源が噴き出しており温泉を実感させてくれます
。
泉源の一つに炭酸泉があります。飲んでみましたがまんざら悪くない味でした。昔は砂糖を入れてサイダー代わりにしていたそうです。有名な有馬籠や人形筆も見てきました。有馬籠の様に竹細工で作った蟷螂や鈴虫なども一見に値し、今私の書斎に飾ってあります。味のお土産としては、実山椒(花山椒ではなく)をお勧めします。個性的な味わいです。
2006.11.14最近読んだ本
①”ダ・ヴィンチ・コード”(ダン・ブラウン著)
話題の本です。映画を先に見ておいたので、良かったかもしれません。というのは筋が複雑に絡み合っており混乱しやすいからです。著者の聖書やそれを取り巻く諸事情に関しての博識さや詳細な調査には驚かされます。フィクションを上手く使って面白くしています。上中下3巻ありますが、じっくり腰を据えて読まれることをお勧めします。粗筋は下記の”最近見た映画(2006.6.25)”の欄を見て下さい。
2006.9.17 最近読んだ本
①”84歳。英語、イギリス、ひとり旅”(清川妙著)
53歳から英語、特に英会話を学び直し、以来イギリスへ何度もひとり旅をしている一老婦人のエッセイ。イギリスで知り合った人々との心温まる友情、交遊を描いています。70、80になっても、こんな素敵な人生があるのかと思うと、私現在55歳、元気づけられます。というより、何でもそうですが、尽きる所、自分で積極的に作っていかないと駄目ですよね。
2006.9.9(土)~10(日) 増毛で一泊
かつて鰊漁で大いに賑わった、日本海に面した町、増毛へ行ってきました。友人がおり、美味しい海の幸を堪能してきました。下の写真は雄冬岬から見た日本海で,、眼下に雄冬(増毛町)の町が見えます。*増毛町は札幌の北方にある小さな町で留萌市の隣です。詳しくはここをクリックして下さい。
雄冬はかつて陸の孤島と言われていましたが、今は札幌まで続く、立派な舗装道路が完成しています。
2006.8.9 街で見かけました。
当院の近くにあるお寺の入り口の掲示板で見かけました。”過去を追わざれ、未来を願わざれ”とあります。過ぎてしまった過去は良きにつけ悪しきにつけどうしようもないものです。私はわりと過去を悔やむところがあります。あの時どうしてああしなかったのか!などと。これからはそういう性向を反省し、現在を楽しみたいと最近は考えています。未来を願うな、というのも意味深長な文言です。
2006.8.8 最近読んだ本
①”医師がすすめるウオーキング”(泉嗣彦著)
私の趣味の一つにウオーキングがあり、たまに出かけています。最近も猛暑の中ですが延々と市内を歩き、かなり日焼けしました。上の写真もその時のものです。この本の著者はウオーキングを糖尿病などの生活習慣病対策として推奨しています。彼は健診が専門のようです。ウオーキングを堅く考えず、日常の生活に少しでも取り入れる様にしましょう。
②”国家の品格”(藤原正彦著)
最近までベストセラーであった話題の本を読んでみました。彼の言わんとしていることに賛同出来ます。例えば「だめなことはだめ。この世には理屈で割り切れないものがある」ということ。なぜ人を殺してはいけないのか、とか、なぜ人の物を盗んではいけないのかなど。これらは理屈ではありません。それを有無を言わせず子供達に強制することも一つの教育であるということ。これは書いてあることのごく一部です。読んでみてください。というより、もう読んでしまっていますね。
③”辺境・近境”(村上春樹著)
評判の作家村上春樹の本を読んでみました。彼が今まで旅した所を回顧したものです。特にメキシコの辺境の、道なき道を車やバスで旅したところなどは読ませます。彼も度胸がいいと感心します。とても魅力ある土地だったと書いております。しかし、このような旅はお金はともあれ時間に余裕がないと出来ず、私にとっては今の所、実現は難しいことです。
④お濠端に暮らす(根岸道子著)
著者は小泉八雲が島根県松江に半年ばかり住んだ住居(小泉八雲旧居)の所有者の末裔です。この住居は八雲が大変気に入っていた家で、それに関する著作もあります。著者は今もそこに住んでいます。根岸家の歴史、特に小泉八雲が住むに至る点や、現在の様に保存され公開されるまでの経緯を細かに記しています。
2006.7.12 最近読んだ本
①草原からの使者”沙高楼綺譚”浅田次郎著
私の好きな作家の一人浅田次郎の本です。期待はずれにはなりません。お勧めですが、本当に娯楽のための小説で何かを得ようとしては駄目です。
②高田屋嘉兵衛遭厄自記
高田屋嘉兵衛の生地である淡路島の翁顕彰会が苦労して口語訳にしたものです。原典はかなり判読しづらいものの様です。彼がロシア船に捕えられた経緯から始まり、その船長達と徐々に交際を深めていく様子がよく描かれています。それにしてもロシア語を会話から文章まで短期間によく習得したものだと感心させられます。司馬遼太郎が彼に敬意を払うのがわかる気がします。嘉兵衛は包容力がありよくよく肝の据わった人物だったのでしょう。残念ですが、私にはとても真似が出来そうにありません。*高田屋嘉兵衛についてはここをクリックして下さい。
2006.6.25 映画”ダ・ビンチ・コード”を見て
聖なる血脈がテーマでしょうか。キリストには実は妻がいて、その血脈が現代までつながっており、そこにシオンなる教団がからんでいるという主旨の物語です。その妻とはダ・ビンチが描いた”最後の晩餐”のキリストの左隣りに座っている人物で、マグダラのマリアなる人物だそうです。確かに絵を見ると、どう見ても女性に見えます。シオンなる教団の長には、ダ・ビンチの他、あの科学者ニュートンもそうだったそうです。それなりに面白く興味をそそられました。
2006.5.18 糖尿病と糖尿病網膜症について
先日、急に右目が見えなくなった中年の女性が訪れました。見ると眼底に広くべたーと出血しております。進行した糖尿病網膜症です。この出血は自然吸収を待って、再出血を防止するためがっちりと光凝固をしなければなりません。お聞きすると、半年前に内科で糖尿病の検査をして大したことはないと言われたそうです。また眼科でも診察を受けましたがそこでも網膜症は軽度と言われたとのことです。それ以来安心して内科にも眼科にも行っていません。
これはどう考えたら良いでしょう。まず第一に“血糖コントロールさえ良好であれば網膜症などの合併症は起こらない”と多くの人が誤解しています。良好な血糖コントロールは網膜症を起こしづらくするのに必要な条件ですが、十分な条件ではありません。網膜症を起こす一番の要因は糖尿病の罹病期間です。長年コントロール良好の人に“これは網膜症です”というと“ずっとコントロールが良いのにどうして?”という返事が返ってきます。統計上、コントロールの良否に関わらず糖尿病と診断されて約10年すると網膜症が出ます。この10年とは糖尿病が見つかった時点からですから、実はもっと前から糖尿病があった可能性が大です。もちろんコントロール不良だと合併症が出やすいのは言うまでもありません。
さらに第2点はこの女性、半年前に眼科で診察を受けあまり問題ないと言われたことです。これも皆さん疑問に思うでしょう。実は一見軽く見える網膜症でも進行した網膜症のことがあります。網膜症が発症したら定期的に経過を見て、おかしな点が見つかれば網膜血管造影などの精密検査や適宜内服薬や光凝固をします。網膜症がある程度以上になったら“もうそれ以上進まない状態に”するため眼の底のフィルムである網膜を“光で焼く”つまり光凝固をします。
定期検査を軽んじてはいけません。何ともなくとも定期的に検査を受けて下さい。網膜症がない場合は半年毎。軽度網膜症なら3ヶ月毎です。人間とは勝手なもので”自分だけは癌にならない”とか”交通事故に遭わない”と考えがちです。しかし病気は平等です。いつ、誰がどんな病気になっても不思議はありません。
(せせらぎタウン紙 平成18年6月号掲載)
2006.5.3~7 淡路島に旅して
この連休に神戸を基点にして淡路島に行って来ました。神戸と淡路島を結ぶ明石海峡大橋から望む滔滔たる海やゆっくり進む船、遠くに霞む瀬戸内海は絶景でした。ただ渋滞がひどく疲れました。島中西部の五色町はあの高田屋嘉兵衛の故郷です。そこにある高田屋歴史文化資料館”菜の花ホール”を見学しました。辰悦丸の1/2模型や彼が北前船輸送の他に広く手がけた金融などのビジネスの台帳なども見ることが出来ました。ロシア抑留中の苦労などの文書も展示されていました。南部の福良港から出る観潮船”日本丸”で”鳴門のうず潮”を見に出ました。海流の段差は見ることはできましたが、残念ながらうず潮は見れませんでした。
高田屋歴史文化資料館”菜の花ホール”についてはここをクリックして下さい。
2006.4.3 最近読んだ本
①司馬遼太郎著”街道を行く27:因幡・伯きのみち、檮原街道”
今夏、眼科学会で山陰へ行く予定なのでこの本を選んでみました。予想に違わず司馬遼はいいですね。彼の博識なのにはいつも脱帽します。日本の古代から江戸時代までが網羅される感じがします。それにこの街道のみちシリーズは各地で出会う人達をきっかけとして話が展開されていき読ませてくれます。
②ドイル傑作集Ⅱ-海洋奇談編ー
6編収められていますがいずれも読ませてくれます。私も一気に読んでしまった感じです。ドイルの探偵物ではないものも、なかなかです。私が気に入ったのは”ポールスター号船長”や”ジェ・ハバカク・ジェフスンの遺書”です。
③松本清張著”日本の黒い霧(上)”
6編収められていますがいずれも私が物心つかない頃の事件でもあり、またあまり知識として存じないものが多く読んでいてもピンと来ません。しかし下山国鉄総裁謀殺論は読ませます。これは賛同者は少数派ですが清張は米軍説とっています。警察は自殺ということでうやむやにしたそうですが。他に”白鳥事件”とか”革命を売る男、伊藤律”などが書かれていますが、これらは日本の戦後を引きずる事件で読んでいて暗くなります。
④フレディ松川著 ”今日からできるボケないための7つの習慣”
最近というより以前からですが、すぐに処方する薬名が出てこなかったりします。若年の認知症が渡辺謙の映画もあり世間の耳目を集めてい現況もあり、この本を読んでみました。ボケないための7つの習慣とは次のようなものです。1散歩、2料理作り、3人と会う、社会と交わる、4電車やバスに乗る、5恋心を持つ、6日記や手紙の習慣、7新聞や本、辞書を読むです。私は今55歳ですが、備えあれ憂いなしというから料理作りなどこれからしてみよう!
2006.3.29 最近見た映画
①生きものの記録
黒澤明作品。三船敏郎主演。原水爆恐怖症に陥った老人に振り回される家族や従業員。
②激流
メリル・ストリープ主演。彼女の逞しさに感動。
2006.3.9 最近二人の友を亡くしました。残念でなりません。
一人は高校時代からの同級生で、知的障害者施設で園長として周囲の信頼厚く慕われていました。園長に昇進したばかりでした。私にとっては高校時代より今なお親交のある数少ない友人の一人で、他の同級生とたまに一緒に呑みに行っていました。もう一人は私が以前勤務していた旭川赤十字病院や名寄市立病院の同僚Drで一歳年上でした。人柄は温厚で優しく、癌の闘病中お見舞いに行ってきましたが、奥さんと冗談を言って明るく振舞っていました。二人共、私の思い出の中に生き続けています。
2006.2.28 最近見た映画
①禁じられた遊び:
今回で見たのは確か3回目ですが、恥ずかしながらこの題名の意味が今回初めてわかりました。子供にとっても死はやはり死なのです。愛犬やモグラや虫のお墓作りに懸命で世間の諸事は子供には関係ないのです
②老人と海:
スペンサー・トレーシー主演。有名なヘミングウエイの小説でつい先日読んだばかりでグッドタイミングでした。老人の鮫との格闘は凄まじいものでしたが、それよりもう人生の黄昏を迎えた老漁師の心境を伺い知る、あるいはそれを慮る内面小説と言っていいのではないでしょうか。
③たそがれ清兵衛:
真田広之主演。宮川りえ他出演。真田が今は家庭人として苦労しているがかつては剣の使い手であった侍を演じているが少々ミスキャストの感もなくはありません。この主人公にはもっと人生の辛酸をなめた苦労人のような風貌のの俳優が適切であったと思います。真田では少々きれい過ぎる気がします。
④お早う:
小津安二郎の作品。平凡な日常を描いていますが見て全く損のない映画です。子役達の演技は秀逸で特に次男坊の演技には脱帽します。笠智衆、三宅邦子、佐田啓二など懐かしい顔ぶれがずらり。
⑤天国と地獄:
黒澤明監督の現代映画。三船敏郎、仲代達也、香川京子、山崎努など芸達者な俳優達が揃って出ています。新幹線走行中の車内から犯人らをビデオ撮影したり麻薬中毒患者のスラム街の場面など黒澤らしい演出が見られます。
2006.2.19 朱鞠内湖(しゅまりない湖)にワカサギ釣りに行って来ました。
毎年この時期、気の置けない仲間達とワカサギ釣りに行っています。寒いですが湖上で、釣ったばかりのワカサギを天麩羅にしてジンギスカンや豚汁と一緒に皆で輪になって食べるのは気持ちのいいものです。今回は天候にも恵まれました。朱鞠内湖は北海道北部にある人造湖です。朱鞠内湖についてはここをクリックして下さい。
2006.2.13 最近見た映画
①欲望という名の電車
(1951年作品)監督はあのエリア・カザンです。出演はヴィヴィアン・リー、マーロン・ブラントなど。前々から見ようと思っていた映画で期待に違わぬものでした。特にヴィヴィアン・リーの演技には脱帽です。勿論若き日のマーロン・ブラントも見逃せません。storyも興深く、本来舞台劇であったのは肯けます。
②桑港(サンフランシスコ)
(1936年作品)クラーク・ゲーブル、ジャネット・マクドナルド、スペンサー・トレーシー出演。音楽映画と言っていいほど歌やジャズが流され、ジャネット・マクドナルドの綺麗な歌声に魅了されます。storyはよくある恋愛ものですが・・・。
2006.2.8 最近読んだ本
①コナン・ドイル著”四つの署名”
また好きなシャーロック・ホームズを読みました。期待に違わず面白かったです。その筋立てはインドの暴動を取り込みスケールの大きなものです。ワトソン博士の結婚話が出てくるのも一服の清涼剤となっています。事件そのものは少々複雑ですが後味は悪くありません。皆さんもご堪能下さい。皆さんの時間の損にならないこと請け合います。
②小林司、東山あかね著”図説シャーロック・ホームズ
本邦のシャーロッキアンの代表ともいうべき二人(夫婦ですが)によるシャーロック・ホームズに関する本。写真や絵が豊富でシャーロッキアンにとって十二分に堪能できます。ホームズの性格、性癖、嗜好、趣味などは一読に値します。
③アーネスト・ヘミングウェイ著”老人と海”
始めは少々冗長で退屈しますが、中盤以降は漁師たる老人と大魚マグロやそれに向かって次々と襲い来る鮫との格闘場面が展開され、はらはらさせられます。一緒に登場する少年も脇役として一人物となっており見逃せません。
2006.1.26 映画”妻として女として”を見て
女性映画の名匠といわれている成瀬巳喜男監督の作品(昭和36年製作。出演は淡島千景、高峰秀子ら)を始めて見ました。内容は不倫が主題でかなりseriousです。終盤子供に事実が判明する下りなどは直視できない程であった。現代にも通用する筋立てで怖いものを感じた。仲代達也や星由里子らが脇を固め好演している。
2006.1.8 年末年始休暇 大阪のUSJで遊んで
正月休みを利用して大阪のテーマパーク”USJ(ユニバーサル スタジオ ジャパン)”へ行ってきました。東京のディズニーランドと同じく乗り物に乗ったりして童心に帰り楽しんできました。特にお勧めはスパイダーマンとターミネーターです。立体視出来るサングラスを掛けて見るものですが、前者は実際に車に乗って移動するので現実感が格別です。
2006.1.1 年頭に当たり
平成18年新年明けましておめでとうございます。
当院も10年目を迎えました。この10年は夢中でやって来た気がします。大過なく過ぎこれもスタッフや周囲の皆様の御蔭でございます。昔は病院や診療所は待っていれば患者さんが訪れてくれる時代でした。今やクリニックも増え、これからは眼科に限らず患者さんがクリニックを選ぶ時代です。選ばれなければなりません。それにはハード、ソフト両面での充実が必要です。つまり診療技術は勿論ですが、診療機器や建物の使い勝手(バリヤーフリー等)からスタッフの患者様への対応など心していかなければなりません。
本年も当院はスタッフ一同一丸となってより良い医療を提供すべく精進致す所存であります。宜しくお願い申し上げます。また皆様にとって良い年となるようご祈念申し上げる次第です。
2005.12.25 夏目漱石著”我輩は猫である”を読んで
恥ずかしながらこの年で初めて読みました。しかし内容は決して小中学生にわかるようなものでありません。世評が多く現代と照らし合わせ的を得ている発言も多いようです。感心するのはやはり文体が淀みなく文豪と言うに相応しいかもしれません。
2005.12.13 紅山雪夫著”ヨーロッパものしり紀行(くらしとグルメ編)”を読んで
雑学的にヨーロッパについて肩肘張らず記した本です。チーズや泉に関する所などは読ませます。風景などの写真が入っているのも良いです。私もそれほど外国に行っているわけではないけれど、外国ではどこでも肝心なのは度胸の様です。恥ずかしいとか言っていては駄目の様ですね。
2005.11.11 映画”アンブレーカブル”を見て
ブルース・ウイリス主演。ある特殊な能力(透視というべきか)のある男の話。しかし、少々筋立てが幼稚な気がするが、それは見方が浅いのかも。”シックス・センス”の方がずっと深みがありぞくぞくさせられた。
2005.11.3 最近見た映画
① ”Day after Tomorrow":
南極で研究を続ける古代気象学者ジャック・ホール教授(デニス・クエイド)は調査データから地球規模の自然危機を予感する。そして、その4か月後、東京などで異常気象が発生し彼の嫌な予感は現実味を帯びてくる。お勧め。面白かった。
②”家族ゲーム”:
松田優作がおちこぼれ気味の中学生の家庭教師をする。その家族(伊丹十三や由紀さおりなど)とのやり取りが面白い。今思えば、貴重と言えそうな男優を早くになくしてしまった。
2005.10.26
長き夜を 無為に過ごさぬ 術ありや
高楼の 窓の月影 皓として
山風に 上枝の戦ぎ 秋思湧く (以上 青村萌生)
2005.10.5 司馬遼太郎著”南蛮のみちⅡ”(街道をゆく23)を読んで
前半ははっきり言って司馬遼太郎にしてはめりはりの無い、割と単調な紀行文。しかし後半はポルトガルでの話しでアクセントが出て活気あり。大航海時代の象徴といえるエンリケ(ヘンリー)王子が主役となっている。
2005.10.2 清水久典著”死にゆく妻との旅路”を読んで
著者の素人とは思えない文章というか語り口には敬意を表しますが、癌で重症の妻を連れての車での旅はいただけません。やはりちゃんと入院させるべきだったと思います。妻の死後警察に一旦逮捕されるのは止むを得ないでしょう。職を求めての旅ということですが、本気で働こうとしている様子はなく旅自体が目的であるかのようです。旅とは言えず、放浪でしょう。しかし文才はありますので今後、本を書いてはどうでしょう。
2005.9.25
愛犬を 抱きて爽やか 昼下がり
とんぼうが これ見よがしと 踊りたる
秋彼岸 淋しさいや増す 今宵かな
2005.9.13 衆院選が終わって
衆院選が行われ自民党が圧勝し、二大政党化の流れはひとまず止まりました。小泉首相は郵制民営化一本で終始しましたが、大勝の原因には彼のカリスマ性も大いに影響したでしょう。しかしその党が選挙で大勝したからといって、一つの事案に国民が納得、賛成したということでもない気がしますがいかがでしょう。
制度というのは必要なものですが怖い面もあります。色々な境遇や状況の人々がいるにも関わらず一律に適用されるものだからです。その制度に合わない境遇や状況の方もいらっしゃるでしょう。
眼についても“目の悪い”人たちのために身体障害者福祉法があります。しかし、これで考慮される基準は視力と視野の二点だけです。“目が悪い”といっても色々な状態があり、視力と視野だけで決まるものではありませんから、患者さんの症状の程度や具合悪さ、不便さと障害認定は必ずしも一致するとは限りません。例えば眼筋まひといって事故や病気で目が自由に動かなくなる病気があります。この場合常に複視(物が二つ見える)が生じますが、本人がいくら日常辛くてもそれぞれの眼の視力が良ければ障害の認定はされません。また片眼が失明してももう片方の視力が良ければこれも認定は降りません(認定される視力の基準は両眼の視力の和で決まるからです)。反面、両眼の視力がある一定値以下であれば最低ラインの障害認定はされますので、外見上健常者と変わらずに見える方もいらっしゃいます。
郵制民営化とはどうことになるのでしょう。郵便を運ぶに不便な離島や山間僻地へは、高額の郵便料金を取られるということになるのでしょうか。郵便制度こそ国営で残すべきと思うのですが・・・。(地域紙”せせらぎタウン”平成17年10月号に掲載)
2005.9.10 コナン・ドイル著”恐怖の谷”を読んで
終末の、主人公による見事などんでん返しには恐れ入った。ずっと読み進んでいても結末がどういう風になるのか見当がつかなかった。胸がすっきりした。ただしシャーロック・ホームズが活躍するのは始めだけである。内容は言わないほうでおきます。お勧めの一冊です!
2005.8.30 映画”Massage in a bottle”を見て
深く愛した妻を亡くした漁師がその悲しい胸中を吐露した手紙を瓶に入れて海に流した。それを拾った女性ジャーナリストとの恋愛を綴ったもの。残念な悲しい結末を迎えるが、fictionとはいえ、夫婦愛というもの、夫婦とは何かと考えさせられる。未だその余韻が残っている。他人であったものが夫婦となり、家族が出来、通常一生の連れ合いとなる。夫婦とは何だろう。
2005.8.25
仕事終え ほっと一息 夕焼かな
オペ終えて 小犬と歩く 夕涼み
朝風呂し 疲れいや増す 夏真昼
2005.7.23 富良野”ラベンダー園”に行って
見事なラベンダー畑を見てきました。家族連れなど多くの観光客が花を、買い物を、飲食を楽しんでいました。ここを作った富田忠雄氏は当初これほどまで、ラベンダーが観光に、あるいは香水、芳香剤などの商品として発展するとは思っていなかったそうです。人間というか世の中は先はわからないものがありますね。何事もすぐにはgive-upしない方がいいようです。
2005.7.20 管宗次著”俳遊の人 土方歳三(句と詩歌が語る新選組)”を読んで
土方歳三の事よりも、彼と近藤勇との関係や新撰組に関連することが主に書かれています。俳句に関してはあまり書かれていないので期待はずれでした。武闘派の棟梁みたいな近藤勇が漢詩等に関して造詣が深いとは意外でした。また土方は人格者で部下からの信頼が厚かったそうです。歴史の流れに巻き込まれた男達です。
2005.7.15 ドストエフスキー著”貧しき人びと”を読んで
これはドストエフスキーが23歳の時の彼の処女作です。中年の小役人と薄幸の若き女性との主に文通による交際を描いたものです。わかりやすい文体で一見親しめる作品ですが、表題の通り彼らを取り巻く人々との軋轢等を描いており明るい気持ちには最後までなれません。
2005.6.18 司馬遼太郎著”南蛮の道Ⅰ”を読んで
南蛮とは今のスペインとポルトガル。本の内容は、日本にキリスト教をもたらしたバスク人、フランシスコ・ザビエルの故郷ナバラ王国に関連したことが中心です。ナバラ王国とはピレネー山脈の麓にある小国で、今はスペインの自治州として認められているそうです。それにしても司馬遼の”街道を行く”を読むといつも、観光ではなくこれぞ旅であろうという感慨を持たされます。
2005.6.17~18 日本白内障学会および日本眼内レンズ屈折手術学会に出席して
京都での日本白内障学会&日本眼内レンズ屈折手術学会に行ってきました。現在の白内障手術の流れは極小切開に向かっています。一度切開した創を眼内レンズ挿入のため拡げないように何とかならないものだろうか。あと一つの話題は小児の場合である。小児に眼内レンズを入れるのに抵抗のある先生方もまだ多いようです。
2005.6.1 旭山動物園が有名に
旭山動物園が全国的に有名になりました。動物園といえば檻に閉じ込めらた動物達が
所在なげに憂鬱そうにしているイメージがありますが、今や旭山動物園の動物達は生き生きと
しています。私の子供時分、旭山は現在と同様、桜の名所で花見などはしましたが、ザリガニを取って遊んだり遠足に行ったりスキーをしたに過ぎず、これほど有名になるとは思いませんでした。
如何に動物達を生き生きとさせるかを日々模索していた小菅園長やスタッフ全員の発想、アイデアによるものでしょう。
良い発想、アイデアはそう簡単に生まれるものではありません。日々一つの事にこだわり続けてようやく出てくるものと思います。先年、ノーベル賞を受けた田中耕一さんの受賞対象となった研究は、”瓢箪から独楽のようなもので偶然の産物”と本人はおっしゃっていたようですが、毎日毎日の実験と考察の繰り返しの成果以外の何物でもないでしょう。エジソンも”天才とは1%のひらめきと99%の汗である”と言っています。
眼科では1900年代前半にゴールドマンという眼科医が現在の眼科医療に不可欠の器械である細隙灯を発明し、これにより診断が飛躍的に向上しました。その原理はほぼそのまま踏襲され、性能の改善が加えられつつ現在に至っています。彼は他にも視野計や三面鏡など考案し、それらはほぼ完成された形で部分的な修正はあるものの現在も繁用されています。
(地域紙”せせらぎタウン”平成17年6月号に掲載)
2005.5.18
当院の庭の夏椿も一旦四分程度に開花しましたが、この寒さのせいで萎んでしまいました。
2005.5.12 蒲島郁夫著”運命”を読んで
農協職員から東大法学部教授になった蒲田氏の自伝です。東大のしかも法学部の教授になるのに全く畑違いのところから紆余曲折を経て成功したやや稀な例です。本人の頑張りの賜物であり敬服します。他方、私は医者としての道一筋で来ました。医学部を出て大学病院そして総合病院に勤務後、開業しました。愚痴になりますが、どんな職業にも苦労はつき物で毎日毎日医療過誤を懸念しながら患者さんと顔を合わせ、その中に経過の思わしくない患者さんも出会います。そういう日々の繰り返しです。
2005.5.5 道東へ旅して”チミケップ湖”
この連休を利用して津別町のチミケップ湖へ行き湖畔の唯一のペンションに泊ってきました。全く都会の喧騒から隔絶された所です。テレビも殆ど受信できませんし(BSのみです)、携帯電話も届きません。聞こえるのは鳥の囀りだけでした。まさに命の洗濯にぴったりの場所です。ただし着くのに、蛇行した山道を車で数十分登っていかねばなりません。
でもほぼ満室でした。女満別空港が近いせいでしょうか本州のお客さんが多いようです。
2005.5.1 中名生正昭著”芭蕉の謎と蕪村の不思議”を読んで
俳聖と呼ばれる芭蕉と蕪村の生立ちやその俳句を鑑賞している本です。俳句は私の趣味の一つですが、今は殆ど鑑賞ばかりで作句はしていません。蕪村の漢詩などの教養には驚かされ、読んでも理解できない句も多々あります。芭蕉の句には大きさというか深さが感じられ、それをわびとかさびというのでしょうか。
2005.4.29 映画”プロフェシー”を見て
空想の生物Moss Man蛾男の話です。予知能力があり、翼のある人間の形をした生き物です。リチャード・ギア主演の新聞記者が、ある田舎町での奇怪な事件に巻き込まれる。実際にはほぼあり得ない話なのですが映画としては面白かったですよ。人間も夢を見る。正夢とか夢が知らせたとか、あるいは胸騒ぎとか嫌な予感などという言葉もあります。人間や生き物には自覚しないけれども予知の能力があるのかもしれません。火事発生の前に鼠が逃げしたとか、鯰が地震を予知するなどといわれています。
2005.4.22 映画”ザ・ウオッチャー”を見て
キアヌ・リープスの連続女性殺人鬼ははまり役でした。一見甘いマスクであるのが意表を突いています
2005.4.17 河合隼雄著”大人の友情”を読んで
題名の割には面白い本でした。特に、同性愛や茶のみ友達の章は興味深く読みました。特に夏目漱石の”こころ”を引用した下りなどです。確かに親友と呼べる友を作るのには難しい面があります。友人も単なる知り合いから、知人に始まり親友と呼べるところまでいくのに時間がかかることもあるでしょうし、短時間で良き友になる場合もあります。
2005.4.12 映画”Aviator”を見て
アメリカの富豪ハワード・ヒューズの波乱の人生の物語です。配役が違えばもっと良い映画になった気がします。ディカプリオが主演でしたが、もっと貫禄というかeccentricに見える男優の方がよかったのでは。しかし取り巻きの女優陣は適切な配役と見て取れました。3時間を長く感じさせず、スコセッシ監督の技量でしょう。
2005.4.10 桐野夏生著”柔らかな頬”を読んで
テーマとなる子供の失踪はいいけれど、筋書きとして女主人公が癌末期の男と共に行動するのは少々無理な設定と思います。それに話の展開が冗長で読む気がそがれてしましいます。もう一皮剥けると大きな作家になると感じられました。